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喪失と卒業
あざといてつや を見て、京介はなんで昔の話になったのかを思い起こしていた。
『てつやが髪の色をグレーアッシュにしてきたからだ』
てつやのこの髪色は、さっき京介が言ったように日々新市街でてつやが遊んでいた10代後半の頃の髪色だったのだ。
先日てつやがこの髪色にしてきた時、まっさんも銀次も
「なっつかしーわー」
と言ったほどだ。
その頃は、てつや自身も家庭の事情もあり少々自棄になっていた時期で、今の仲間たちともロード以外ではほんのたまに会うくらいの関係性だった。
京介自身も、その頃は新市街へ繰り出しては飲み歩き女性関係も派手で、時々てつやとすれちがって軽く挨拶するくらいだった。
てつやが連れているのは男友達、京介は半分が女の集団で接点はまるでなかったのである。
しかし京介が新市街へ足を踏み入れたのは、紛れもなくてつやを見守るためで、時々偶然でも顔を合わせては無事を確認していたのだ。
京介は高一の時にてつやが襲われかけた事件の時に、自分がてつやを意識していることに気づいていて、犯人の大崎に凄まじい怒りを持ち、もし目の前にいたら失神するまで殴り倒せる自信があったほどである。
てつやもてつやで、高校の時に京介への自分の気持ちを確信してしまい、それでも『仲間』として付き合っていきたかった感情をここで晴らしていたという一面もあったのだ。
この隠れ両思いの歴史は結構長い。
そんな甘酸っぱい気持ちを思い出した挙句、『あの頃てつやが連れてた男たちの中に、てつや と関係持ってた奴がいたんだろうな』と思い至ってしまい、乳首開発へと京介を走らせたということだ。
「で、どうすんだよ」
未だ京介の足の上に座っているてつやが、数秒黙り込んだ京介を覗き込んでくる。
そんなてつやに、再び嫉妬心を呼び覚まされてそのまま押し倒しそうになってしまったが今はそういう事態ではない。
京介はてつや を引き寄せて抱きしめ、
「わかった。好きなようにしろ」
もうこうなったらこの現状を楽しむしかなかった。
気持ちを切り替え、仲間にもよく言われるがてつやを甘やかしつつ要望を受け入れる。
「本当に?いいのか?」
自分で言っておいててつやが少し遠慮がちにいう。
「なんだよ自分で言い出しといて」
そう京介も笑い、てつやの頬にキスをした。
「ただ…一つ条件…いいかな」
楽しもうとは決めたが、京介には一つ譲れないことがある。
「え?なんだよ。俺にはそんな暇も隙もなかったけど?」
少し身体を離して小さく抗議。
「それは悪かったと思ってる。すまん。でも一個だけどうしてもきいてほしい」
数センチでキスができる距離で見つめ合いながらの話し合い。
「じゃあ、きくだけ聞く。それを飲むかどうかは内容次第だな」
「ありがとう」
てつやの両頬を両手で包んで、おでこ同士をつけて離す。
「あのな、入れる時後ろからやってほしいんだ…」
一瞬マニアックな希望かな?と思わないでもなかったがその後の言葉に納得が行く。
「お前みたいに骨格が細くて筋肉が盛り上がらないタイプがな、大股広げたって格好はつくんだが」
てつやはおでこを離し京介の顔をじっと見て、それから上半身を下腹部まで見下ろして行く。
黒い髪はいまは解けてるけどいつもはセンターで立ち上げ両脇へ流してて、喉仏も高く低い声。自分とて筋肉はあるが、京介の言うように張り出すタイプではなくしんなりとついている。京介は胸筋も張ってるし、割れてはいないが腹筋もガッツリと硬い。
「俺は骨格も太いし、筋肉が張り出すタイプだろ。俺が大股広げてお前受け入れるなんて、考えただけでもちんこ萎える。絶対お前も萎えるって」
割と真剣に言ってくる京介に、てつやも少し思考した。
「あ〜〜」
苦笑してさっき自分が目で確かめた部分を鑑み自分の後頭部を一回撫でる。
ガチムチの受け手が居るのも事実だが…と思わなくもないが、そうではなくてつやの思いは
「ん〜でも俺…その瞬間の京介の顔が見たいんだよなぁ…」
『絶対やだ』瞬時に京介は返事を返していた。心の中で。
「趣味悪いぞ〜」
そう言いながらもう一度抱き寄せ、ぎゅっとしながら
「なぁ〜てつやぁいいだろぉ〜?」
とてつやの真似をしてやる。
「きしょっきっしょ!」
てつやも京介を抱きしめ大爆笑。
「わかった、いいよそれで」
既に男前開始。その流れで京介に唇を合わせ、そのまま枕へ押し倒していった。
女性を抱いたことがないわけでもなく、人を抱くのは大丈夫だろうと思ってはいたが、なんだか今更ながらに照れてしまう。
もう一度キスをして髪を撫でながら
「京介、ありがとうな…」
と、一言。
意外な言葉に京介は驚くが、
「礼を言われるほどかな」
と髪を撫で返した。
乳首責めは京介の自己満足であったが、今からの事は本当に2人が初めてのことで、それを共有できるのがてつやは嬉しかった。
「初めての共同作業…」
ぼそっと呟いた言葉に京介が盛大にむせる。
「おいおい、それは〜ちょっとだぞ」
笑ってしまって色っぽい雰囲気にもなりやしない。
「ごめんて。なんかそうなんだなっておもっちって」
確かに式など挙げられない関係だから、と言うのもあるから…
「じゃあ、ファーストバイトはお互いの、んぷっ」
「それ以上言うと、なんもできないだろ…」
ふざけてノリノリになりそうなてつやの口を人差し指で押し留め、
「早く身体もお前のものにしろ」
と、てつや の首に両手を回した。
「え〜?身体…まだ俺のじゃなかったんだ…じゃあ貰わないとだな」
やっとてつやもモードに入り、京介に唇を合わせ深く舌を絡ませていく。
何度も角度を変え、舌が痺れるほど絡ませ鼻呼吸では間に合わなくなるまで貪りあった後、てつやは京介自身へ手を伸ばし少し起立したそれを撫でながら唇を京介の肌へと移行した。
風呂でわかってはいるが、京介の肌は意外にも滑らかだ。肌を合わせていると心地いい。
体毛も濃くはないけれど、ほんとうにうっすらと産毛のように胸に密集する体毛が実はちょっと好き。
乳首は小さくて、今まで見てきた男たちの中では1番小さいかもしれない。
てつやは唇を這わせながら、京介を確かめてゆく。
京介の手が、やり場がないのかずっとてつや の髪を緩く掴んでいて、それも今は心地がよかった。
一方京介は、肌を這うてつやの唇が柔らかくてそれだけで気持ちが良かった。
時折ふふと言った感じで笑うてつやが何を考えているのかまではわからないが、自分を堪能してくれているようで、それはそれで嬉しいことだと思う。
与えてあげられるものは与えてやりたい。もちろんダメなものはダメだけど、てつやが泣きながら過ごしてきた小さい頃の思い出が一つでも消えるように…自分は甘やかしていきたかった。
京介の身体がピクッと反応したのは、てつやが京介自身を口に含み、その指が足の後ろからバックに触れた瞬間のこと。
指はそこをじっくりとほぐすように撫でまわし、口の方は相変わらず上手い舌使いで翻弄してくる。
咥えながらほぐして行けば、少しは楽かなとてつやなりに考えたことだろう。
約束通り京介が足を広げることのないよう横から咥えて、横から手を差し入れているから、足はたててしまうが実際はやりやすくている。
京介もバックの違和感は感じつつも、巧みな舌の動きに集中して息が上がってきている。
「ローション使おうか?」
やはり少しの緊張感はあるのか、京介のソコは硬く閉じられるようになっていて、このまま強引に指を差し込んでも痛いだけだろう。
「だな、ちょっときつい気もするし」
京介が腕を伸ばして、ベッドサイドの引き出しからローションを取り出してつやに渡す。
「最初は仕方ないよな。女性だって最初は怖々だろ一緒一緒」
手のひらにローションを落とし、少し暖めるように手を合わせながらてつやは笑った。
「俺は処女喪失すんのか?」
「俺も童貞卒業だし」
ちょっと間があった…。
「取り敢えず京介、うつ伏せな」
なんとも言えない空気をてつやが破り、京介は処女喪失の佳境へとむかっていく。
うつ伏せになった京介の背中に唇を当て、左手を下半身の溝に当て中指を差し入れた。
さっきより滑らかな指がソコを捉え、するっと吸い込まれてゆく。
「ああ、やっぱりやりやすいな。さっきよりマシだろ」
枕に顔を預けている京介は入り込んだ瞬間再びピクリとしたが、変な声もださずに眉をしかめているだけだ。
指が出し入れを繰り返している。ヌルヌルの感触が欲を煽るが、いかんせん未知の感覚で戸惑うことの方がまだ大きい。指は次第に奥へと入り込み、体感で中指全部が入った事はわかった。
背中にキスを続けているてつやは
「指…全部入ったぜ…具合悪くね?大丈夫?」
と顔をあげて京介の様子を伺う。
「大丈夫…入るもんなんだなって自分を感心してたわ」
その言葉にてつやが
「ほんとだな」
と、歯を見せて笑った。
指一本分出し入れして様子を伺ったが、なんとか大丈夫そうなのでもう一本薬指を追加した。
「んっく…」
大体指2本が入れば、とてつやは考えていたが2本目挿入時に京介は声をあげた。気持ちがいいという声ではなかったのが気になったが、ほぐしてあげるほうがさきだ
「苦しかったら言ってな」
耳元で静かに言ってやると、大丈夫と返っては来るがさっきと違って少し苦しそうではある。
「んっ…んんっ」
2本がソコを掻き回すたび声が漏れて、てつやはそれを喘ぎ声として聞くことにしてほぐすことに専念した。
ローションのせいではあるだろうが、その部分が粘着質なクチュクチュという音を立てていて、静かな部屋に京介の息遣いとその音しかなくそれが2人を追い上げてゆく。
そろそろいいかな…
てつやは体を起こし、京介に腰を上げるように促した。
枕に頭を預けたままにするか四つに這うかは任されたが、取り敢えず四つに這ってみる。
ゴムを装着し、ローションを少し多めに手で温めたてつやは京介の溝の間に静かに塗ってあげた。
そして自分のにもローションを塗り、だいぶ起立しているが仕上げとばかりに数回擦って京介のソコにあてる。
「いくよ?今度こそマジでダメだったら言ってな。俺無理はしたくないから」
「わかった…お前も初めてだろ…キツかったら無理するなよ」
お互いが、初めてなお相手のことを知っている分言える言葉だった。
てつやがゆっくりと侵入してきた。
「くっ…」
あんだけほぐしたけど、京介にはメリメリと音を立てて異物が入り込んでいる感覚でしかない。
てつやには違う意味でキツい感覚があって、やはり初めての人間は狭い。
『こんなになんだな…』
気持ちいい感覚と締め付けがきつくて痛い感覚がないまぜになっていたが、快感に感じるまでに1分も要らなかった。
『てつやはカリが張ってるから…そこがまた問題か…」
ー問題ーとまで思考している京介は、本当に先だけでこんなだと…と考えていた。 てつやのカリはそこが弱点だけあって結構張っていて、ゴムをして多少抑えたところでそこが一部太いには変わりはないだろう。
「んっ…来る…」
声に出してしまってしまったとは思うが、もう仕方ない。てつやはかなり集中しているのか今の言葉に反応はなかった。
京介が声をあげた…来るってなんだろ…っまさかところてんなんてことないよな…初めてでさ
すでに本能で奥へ差し込みたがっている欲情を、なんとか制御しながらゆっくり侵入しているてつやだが、カリの膨らみで少し強引に差し込まざるを得なくなり逆にゆっくりだと辛そうだからグッと押し込んでみる。
「はっ…ぁ…」
京介の顎が下がり、耐えているような姿にごめんと思うがもう止める事はできなかった。
が、その時だった。
あまりの締め付けにちょっと動いて擦れたてつや自身が、快感を全て集約したように膨れ上がり、てつやも制御できないまま欲望を吐き出そうとしてきた。
「なに…くっ自制がきかな…あっ気持ちい…京介…俺、も…ぅあっあっ」
急な射精感に見舞われ、てつやはその態勢に入ってしまう。
「ああ…気持ちいい…京介きもちい…あっああ」
無意識に腰が揺れ始め、京介を傷つけないようにしなきゃの意識はあった。あったのだが…
「あぐっ!…いっ…ぅああぁ…」
本能に従い、てつやは一気に根本まで差し込んでしまい、京介は腕が耐えられなくなって上半身を枕へと落とした。
そして
「ああっだっだめあっああ…」
京介が半身を落とした衝動で角度が変わり、瞬間達してしまっていた。
「なんっだこれ…すっげえ…」
味わったことのない快感に、無意識に腰を揺らしててつやは呆然とする。
未だ収まっているものがジンジンと痺れ、締め付けられる感覚が残るままいたがそれがずるっと抜ける感覚でふと我に帰った。
京介の腰が下がって、力のなくなったてつやのものを引き出している。
「あっ京介大丈…ぶ…」
と言いかけて、目の前の京介に言葉を止めた。
体はうつ伏せに、両手は枕を握りしめ、両足は開いたままベッドへ投げ出されていて…まるで
「伸びたカエル…?」
「おい〜…」
力のない声が聞こえてきた…
「ごめん、俺乱暴にした。大丈夫か…?」
「声が笑ってる…ぞ…」
ごめんと言っててつやは傍に避けた。
「いやマジで、ほんとごめんな。大丈夫か?」
一気に挿入はかなり体の負担だっただろうなとは容易に想像がつく。
「大丈夫…とは言い難いが…体に支障はないな…」
ぐったりと横たわったまま、すぐ横で心配そうなてつやに顔を向けた。
「どうした?急にだったぞ…」
「ん、締め付けってすごいんだな…なんだか本能に負けちまってさ…」
「そうか…ならよかった」
良いわけではないが、何か身体に不具合でもあったのかと少し心配になったのだ。が、自分の身体はズキズキとする痛みが外傷を物語っていて、絶対に血くらい出てるだろうなと思うが取り敢えずこの場は黙っている。
「いやでも、ほんと締め付けすごくて入れるにも力いるくらいだった」
「女性と違って受け入れる器官じゃないからな…特に最初は…」
お互い色々思うところはあるだろうが…
「それで理性吹っ飛んだって?」
京介が笑ったことにてつやは安堵する。
「恥ずかしながら…」
てつやもへへっと笑って、京介の前髪をあげてやった。
「ほんとごめんな」
「いいって、お前が気持ちよかったなら何よりだ。しかしな…」
京介はてつやの股間を眺めーやっぱりな…ーとちょっとため息
「手当はしてくれると助かる…」
「へ?」
てつやも自分の股間に目を落とすと、ゴムに目に見える程度の血が付着していた。
「うわっマジでごめん!すぐやるわ」
ティッシュをとってゴムを外し、居間へと向かってゆく。
「あ、そうだ」
てつやが居間の入り口で振り返って
「処女喪失おめでとう」
とニカッと笑って居間へ入っていった。
「うるせーよ」
京介も笑いながらそう言って、京介はそのままの体制でてつやを待つ。
『もどってきたら童貞卒業おめでとう は言ってやらなきゃな。男対象のな』
それからはマキロンをぶっかけられ痛いと騒ぎ、なぜかてつやが万能薬と心酔しているオロ◯イン軟膏まで塗られて、ギャースギャースの騒ぎがあったが今は2人して居間でコーヒーを啜っている。
騒ぎの最中(さなか)に銀次からLIMEが入り
『会心の出来のクリームパンができたから食わせてえ。夕方行くわ。まっさんも誘ってな』
ということなので、準備をして今待っているところだった。
京介はできるだけやわらかいクッションを二つ重ねて、そこに座り、てつやは申し訳なさそうにその姿をチラチラと確認する。
「わかってると思うけど、言うなよ」
コーヒーを啜って京介が釘を刺した。
「言うわけないじゃん。俺の落ち度もあるし」
そういうことじゃねえんだよな…と眉を顰めるが、どんな理由にしろ言わないでいてくれたらそれでいい。
「もし訊かれたら、尻っぺたにでかいおできができたとでも言うから合わせろな」
京介の言葉にーわかったーと応えて、その後は静かに2人を待った。
全体的なこと考えて性生活の暴露をするわけがないのだが、2人とも近視眼的になりすぎている。
銀次とまっさんが来てからは、京介は『牢名主か!』と突っ込まれただけでそれ以上はなく、銀次が言ったように持ってきてくれたクリームパンはクリームの配合もパンの焼け具合も全てにおいてバランスが良く、今までも美味しかったが今日のは格別だった。
「これの配合は俺覚えてるから、明日からはニュークリームパン爆誕だぜ」
嬉しそうな銀次に、心から祝福したいのは山々なれど、あらぬところの痛みで京介はそれどころではない。
しかしそこは気取られないようにして、後数時間を耐える覚悟を密かに決めたのだった。
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