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空と君と_5

ずっと好きだった。好きだったのに、どうしてだろ……? いっつも想像するのは拒絶される未来で、この想いが受け入れられるなんて……ましてや同じ気持ちを返されるなんて夢にも見ていなかった。 色んな気持ちが渦を巻いてどれも言葉にならなくて……。瞬きを忘れた瞳から涙が変わりに溢れた。 「お、おい……」 「――っとって……」 「は?」 「〜〜っ、きっとって、何……?そんな、曖昧で、俺……どう受け取ったらいいんだよ、ばか……」 「仕方ないだろ、今さっき初めてキチンとした言葉にしたんだよ。それまでは……いやそれまでもお前は特別だったけど、そういう風に考えてなかったって言うか……自分の好意を向ける相手を考えたことがなかったって言うか」 歯切れの悪い祇園は俺と地面とを何度か視線で行き来させて、それでも堪えきれなくなったのか指先を俺の目尻へと伸ばしてくる。 「好きだ。……ずっと昔からその空色を独り占めしたいと思ってた」 「うっ、ふ……ぐっ……」 「泣くなよ」 「な、ぃでねぇー……」 「んな意味ねぇ嘘つくんじゃねーよ。なあ、それってどっちの涙?嬉し泣き?それとも嫌悪感?」 困った顔、似合わないなって思った。そしたら今度は何か笑えてきて、だけど涙も鼻水も止まんなくて、もうぐちゃぐちゃだ。 「汚ねーぞ。泣くか笑うかどっちかにしろよ」 「るっさい……、好きってんなら全部愛せってーの、ばぁか」 「なんだ、愛していいのか?」 その意地の悪いような笑みは、似合ってる。むかつくけど。 目尻に伸びていた手はいつの間にか頬に添えられて、眺めにいた顔が近付いていた。 「え、あ、ちょっ……何っ……」 「何って、愛せって言ったんだろうがお前が」 抵抗したことが不服だったらしく手を取られた。 近付いて来る漆黒に堪えられずぎゅっと目を瞑る。 「目閉じるな。理海、こっち見ろ」 「む、無理。無理無理無理っ!」 「見ないとこのままキスするぞ」 「うぅ……ずりーだろ、それ……」 薄く開いた視界に上がる口角を見た瞬間、それはすぐに見えなくなって唇に押し当てられる熱量に一気に目を見開いた。 「んーっ……!っぅ……んぅ……うぅ~っ」 何でキスされてんだ?目開けたらしないって言わなかった……?言わ……なかったっけ……?あれ……? てか、息出来な……。 「――おい、ちゃんと息しろよ。死ぬぞ?」 「ふっ、はぁっ……おま、何して……さっきしないって」 「しないとは言わなかっただろ」 あっけらかんとする祇園に更に噛み付くはずが、唇をもう一度重ねられて適わない。 「ぁ……う……ふぅ……っ」 「……は……ぁ……なあ、返事は?」 「ふ……ぇ……?」 「お前だけ言わないのは不公平だろ?あとさっき隠そうとしたことも言え」 「………俺は、ずっと――」 ずっと、ずっと昔からこの空色は漆黒に閉じ込められていて……それはこれから先もきっと。 ーENDー

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