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空と君と_4
「げっ……」
「人の顔見て何だその反応は」
「……お前、教室戻ったんじゃないのかよ」
見下げてくる顔はまた眉間にシワを寄せていて、コイツ本当将来跡消えなくなるな、なんて思う。
「戻った。で、また戻って来た」
「いや来んなよ。てか、優等生が授業サボっていいのかよ?」
起き上がるため取られた腕を解こうとして、祇園の手が離れないことに顔を顰めた。
「担任とすれ違ったから体調不良だと言ってきた。問題ない」
「あっそ……てか、手離してくんね?」
「質問に答えたらな」
質問?と首を傾げてみるも誤魔化されてはくれないらしい。
「さっき何を隠すって言ったんだ?」
「ああ……別に祇園には関係ないことだって」
「じゃあ言ったっていいだろ」
「言いたくないこともあんの。んな詮索すんなよなー、お前だってそう言うの嫌いだろ?」
顔は納得してないけど思い当たる節があったのか祇園は渋々と俺の腕を離す。
そのまま上半身を起こした俺の隣へ祇園は座り込んだ。
「…………確かに詮索されるのは好きじゃない」
「だろー?」
「けど、お前が何か知りたいと言うなら答えてもいい。俺はお前に隠し事なんてない」
まるで射るように真っ直ぐ向けられる漆黒が好きなはずなのに見返せない。
「は、はは……何だよそれ。俺ってそんな特別?」
「ふっ、何だ。知らなかったのか?」
あーあ……本当、好きだ。
ズルい奴。でも好きなんだ。
知らなかった?――知らないのはお前の方だ。
何も知らないで、俺なんかを特別だなんて言って。
「……本当に何でも答えてくれんの?」
「なにか知りたいならな」
「じゃあ…………好きなタイプか好きな奴」
「……はぁ?んだよ、それ」
想定外の質問だったのか祇園は一気に顔を顰める。
「誰かに聞けって頼まれでもしたか?」
「いーや、俺が知りたいだけ」
「……それマジなやつか?」
「マジなやつです」
ソワソワとして落ち着かないから両膝を抱えて顔を埋めた。それでも反応が見たくて少しだけ隣を覗う。
「好きな奴……か…………」
空を見上げた祇園は思案しているんだろうか。
「屋上 に呼び出されるのはウンザリしていたが、屋上 に来るのは嫌いじゃなかった」
「?」
「屋上 に来るといつも空色が俺を待ってる」
「そりゃ屋上だし空が見えんのは当たり前……」
「お前、鈍感だな。もしくは馬鹿?」
「はーぁ?祇園だけには言われたくないんですけどー?」
ガバッと顔を上げてしまったら思いの外祇園の顔が近くにあって、その瞬間俺は呼吸を忘れた。
「――空を見るといつもお前のことを思い出す」
伸びてきた指先が目尻を撫でて、漆黒の目に俺の空色が映り込む。
あ、俺の目…………吸い込まれてる…………。
「俺が好きなのはお前なんだろうな、きっと」
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