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空と君と_3
『なくな、オレはその目きれいで好きだ。だから、またいじめられたらオレがまもってやる』
そう言われたあの時からアイツは特別になった。
皆が俺の目を気味悪がる中アイツだけは、祇園だけは綺麗だと言っていつも真っ直ぐに俺を見てくれた。その漆黒の目を俺も綺麗だと思った。
「あーあ、もう本当」
祇園を追い出した屋上で一人、しゃがみ込んで頭を抱えた。
「ずりーぃなぁ……」
“俺が守ってやる”……か。
「昔から変わんねぇのな、本当ずりーぃわ。誰だよ氷の王子とか言った奴。全然違ぇーわ……」
氷なんかじゃなくて寧ろ……。
祇園への特別な感情が友情ではなく恋愛感情だと気付いたのはいつだったか。
「顔あっつ……戻れるかよ、こんなんで。祇園の阿呆、鈍感、天然たらし…………好きだ、ばーか」
きっと、あの漆黒に捕らわれた日からずっと……。
寝転がって見上げた空は俺の目と同じ色。昔はこの空を見上げるのも大嫌いだったのに。アイツが綺麗だと言ってくれたから、今はこの空も目も好きになれたんだ。
「まあ、祇園はこれっぽっちも気付いてないだろうけど。いや気付かなくて良いんだけど……あー、でもなんかムカつく」
空を見るのも癪になって、遮るように腕で視界を覆う。
子供の頃こそ可愛らしい顔をしていた祇園は、小学生、中学生と成長するにつれてどんどん格好良くなっていった。
それはもうモテる。周囲の男共を敵に回すほどモテる。例え本人が迷惑そうにしていようともモテる。
そして俺は、祇園に恋する女子たちの気持ちが分かってしまう訳だ。困ったことに。
サッパリと切り揃えられた艶のある黒髪も、吸い込まれそうな漆黒の目も、日焼けを知らない白い肌も、落ち着いた耳に心地良い声も、体温の低い指先も、少し甘い石鹸の香りも、どれを取ったって好きなんだから……本当始末に負えない。
幼馴染というポジションは近くて遠い。越えられない枠の中でただ年月を重ね、心の蟠りは募るばかりだ。
この屋上が生徒達の間で告白スポットになってることを知っていて、俺はよくここへ来る。
祇園への告白を聞き胸を痛め、祇園の返事を聞き安息する。
もう何度繰り返したっけな……。
「我ながら痛すぎる…………それもこれも全部アイツのせいだ、ばーか!くそぉ……もう一層のこと俺も告白――出来たら苦労してねぇよな……」
好きだなんて言って返ってくるアイツの反応考えただけで怖い。今までの女子たちに向けた冷たい声で拒絶されるのがオチだ。
「……それならずっと隠したままでいい」
「――何を隠すって?」
「へ……?」
突然腕を取られ開けた視界。
映るのは青い空のはずが、飛び込んできたのは今最も見たくなかった漆黒。
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