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番外編 結婚初夜★
その日の夜、クラークは寝台の上でサイードを待っていた。その表情は緊張でどこかぎごちない。――と、いうのも。
(と、とうとう、サイード陛下に抱かれるのか……)
今夜は結婚初夜。日中に結婚式を挙げ、ついに夫夫になったのだ。これまで結婚するまではと手を出してこなかったサイードも、今夜はクラークを抱くつもりだろう。
クラークとて早くサイードに抱かれたいという気持ちはあるが……なにせ、前世を含めても初体験だ。緊張するなという方が無理な話だった。
と、その時。薄暗い寝室の扉が開く音が聞こえて、沐浴を終えたサイードが現れた。
「待たせた」
「い、いえっ」
緊張感から声が裏返ってしまった。
サイードは小さく笑いながら、クラークが座る寝台の上に上がってくる。
「緊張しているみたいだな」
「う……」
「安心しろ。優しくするから」
クラークの頬にそっと手を触れたサイードは、クラークの唇に自身のそれを重ねた。触れ合うだけのキスから、段々と深くなっていく。
「ふ…ぁ…っ……」
貪り合うようなディープキスに下半身が甘く疼く。
ゆっくりと寝台に押し倒された。覆いかぶさってきたサイードは、額や頬などにキスの雨を降らせる。それは宥めるような、愛していることを伝えるような、優しいものだった。
「サイードへい、か……ん…ぁ……」
クラークの首筋を舐めるサイードの舌に甘い電流が全身に走る。はしたない声を上げながら、クラークは息を乱した。
花芯が反応しつつあるのが自分でも分かる。それは身体を密着させているサイードにも分かったようで、布越しに花芯を優しく撫でられた。
「……んんっ」
たまらなく気持ちいい。
喘ぐクラークからサイードは一旦身体を離すと、クラークの衣服を脱がし始めた。
クラークの細くしなやかな肢体が、真っ昼間の明るい室内で露になる。サイードの熱のこもった目が注がれているのを感じ、クラークは羞恥に顔を赤らめた。
「あ、あんまり見ないで下さい……」
「何故だ。こんなにも綺麗なのに」
サイードも衣服を脱ぎながら不思議そうに言うが、サイードの肉体はクラークの貧相な身体とは違う。こんなに引き締まった身体をしていたら、誰に見せても別に恥ずかしくないだろう。
「クラークも俺の身体を見ているじゃないか」
苦笑いで突っ込みを入れられて、クラークははっとした。
「あ、いえ、素晴らしい肉体美ですから……つい」
「なら、お互い様だ」
衣服を脱ぎ終えたサイードは、再びクラークの上に覆いかぶさってきた。今度はすでにつんと尖っている赤い果実を口に含み、舌で転がすように舐めた。
「…ぁ……ああっ」
優しい刺激が下半身をじわじわと襲う。そして勃ち上がり始めた熱芯を、サイードの手が捉えて上下に扱く。違う場所へ、けれど同時に快感を与えられて、クラークは身をよじりながら嬌声を上げた。
「あ、ああ……っ」
「可愛いな、クラーク」
サイードはふっと笑い、愛撫を続ける。右の乳首と左の乳首を交互に舐められながら、熱芯にも直接刺激を与えられて、頭が快楽で真っ白になっていく。
「あ…ぁ……イ、く……イっちゃう」
「いいぞ。好きなだけイけ」
吐精を促すように強く熱芯を扱かれて、クラークは達してしまった。白濁とした蜜液がサイードの手に絡みついている。
そしてそれを、サイードはクラークの後孔へと塗りたくった。潤滑剤替わりにするつもりなんだろう。
とはいえ、いきなりサイードのものを突っ込んでくることはなかった。まずは指を一本、突き入れてくる。続いて二本、と少しずつ咥え込ませて中を念入りにほぐし、ゆっくりとクラークの蕾を花開かせていった。
塗りたくられた蜜液がクチュクチュといやらしい水音を立てて、羞恥心がこみ上げてきて仕方ない。
「そろそろ、いいか。挿れるぞ」
サイードは後孔から指を引き抜いて、その代わりにクラークのものより逞しい雄芯をあてがった。それが正常位の体勢でゆっくりとクラークの中に押し入ってくる。
「あぁっ……」
後孔は、瞬く間に雄芯を飲み込んだ。想像していたような激痛ではない。イタ気持ちいいといった感じだ。
「じゃあ、動くから」
ゆったりと抽挿が開始した。痛みがあるだろうと思っての配慮だろう、サイードは頬や額に宥めるようにキスを落とす。その優しい気遣いに安堵して、クラークも強張っていた身体の力が抜けた。
「あっ、ああっ」
秘部に捩じ込まれた立派な雄芯が、奥のしこりを突いて気持ちがいい。
感じ入るクラークの表情を見たサイードは優しげに笑った。
「気持ちいいか?」
「は、い……あ、んんっ」
「そうか。俺も気持ちいい。……愛しているよ、クラーク」
――愛している。
心が歓喜に震える。改めてサイードと身も心も繋がっていることを認識して、幸福感に包まれた。
「わ、たしも……愛しています、サイードへい、か」
「サイード」
「え?」
クラークの上にあるサイードの端正な顔が、微笑んだ。
「サイードでいい。サイードと呼んでくれ」
「サイー、ド……?」
おずおずと呼ぶと、サイードは「それでいい」と嬉しそうに笑う。
その間にも抜き差しは続いていて、段々とクラークの意識は快楽で霞んでいった。もっと最奥にあるしこりを突いてほしくて、腰が無意識に動く。
「あっ……あっ……あっ……!」
揺さぶられながら、何度も何度も腰を打ちつけられて、頭の中に火花が散る。気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだ。
クラークはサイードの首裏に腕を回し、しがみついた。
「サイード…っ……!」
「ああ。一緒にイこう」
後孔を抉るサイードの動きが徐々に激しくなっていく。
やがて、それまで以上に奥深くに侵入してきた雄が中で爆発した。熱い蜜液が中を犯し、同時にクラークも絶頂を駆け上がる。
「あぁああああ!」
花芯から白濁した蜜液が飛び出し、クラークもまた果てた。
互いに息を弾ませながら、二人は寝台の上で抱き合う。
「気持ちよかった、クラーク」
「私もです」
クラークとサイードは微笑み合い、触れるだけのキスをした。
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