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五 つまり、そういうこと。
結論から言うと、バーは盛況だった。お陰でここ数日、毎日通ってしまった。なお、お代は酒やツマミである。お遊びだからな。
最近は蓮田が蕎麦打ちを練習し始めたので、そろそろバーの営業も終わりかもしれない。次に行ったら蕎麦屋になってる気がする。
(結局、ドラマ観てねーし)
ドラマの続きは気になったが、そう何回も「観ないの?」と催促するのはなんと言うか、ムカつく。吉永は気まぐれだから、こうやって振り回されることも多い。そのくせ「そうだっけ?」とケロッとした顔をされるので、腹が立つ。こうなるともう、腹が立った方が負けな気がする。
今日もバーで時間を潰そうかと迷っていると、廊下で吉永とすれ違った。
「あ」
「おー、航平」
ケロッとした顔で手を上げる吉永に、眉を上げる。
「どうした?」
「いやー、ちょっと最近なー」
その最近が、俺も気になるわけだが。
(何かやってんのか?)
歯切れの悪い回答に、肩を竦める。
「なんだよ。また何か悪い遊びしてんの?」
「まあ、そんなとこだな。ただなー」
「面倒臭いな。ハッキリしろよ」
「まあ、そうか。うん、お前、ちょっと来いよ」
「あ? 良いけど……」
どうやら、何か新しい遊びにハマっていたらしい。仲間はずれにするつもりだったわけではないようなので、少しだけ不満が消える。そのまま、吉永の部屋へと連れられた。
「何だって?」
「取り敢えず、ベッドに座って。あ、足こっちのが良い」
枕のある方を背に、足を伸ばしてベッドに座らされる。何をするんだろうか。
「で、これ」
「あ? 何これ。VRのゴーグルじゃん。買ったの?」
「あった」
持ってたのか。知らなかった……。
てか、VRのゴーグルってことは、ゲームでもやってたのか。まあ、VRならば一人プレイだもんな……。でも、誘ってくれても良いのに。
「ここ押して、被って」
「おう」
なにやら制作会社らしいロゴが表示され、画面が切り替わる。マンションの一室らしい風景が広がる。
(ふむ。ゲームっていうより、実写っぽい? 割と綺麗なマンションだけど)
どうやら映像は、ベッドに座っている状態のようだ。それで、座らせたらしい。
「なあ、これ……」
「良いから、そのまま観てろって」
「はあ」
説明もないまま映像を見続ける。奥にあるドアが開き、若い女性が現れた。
『こんにちはー。マイです』
黒髪セミロングの女の人だ。やはり実写である。小綺麗な恰好をしているが、なにか違和感がある。なんというか、少しわざとらしいファッションだ。しばらく映像を見ていると、女性が目の前に来て、上目遣いに顔を覗き込んでくる。
(おわ)
VRは初めてだが、なかなかドキドキする。すぐ目の前にいるみたいじゃないか。女性は笑顔を見せながら何やら会話を続けて来る。
『今日どんな下着か、気になる? へへっ……見たいの? もう……ちょっとだけ、だよ?』
カットソーをずらし、チラリと下着を見せる。って。おい。
「おい! これ、AVじゃねえかっ!」
「おう。良いから観てろ」
「っ……あのなあ……」
VRで何してるのかと思ったら、ナニしてたのかよ。まあ、確かに、ちょっと興味はある。存在は知っているが、VRのセクシーな動画は初めて観る。
(どうせなら、貸してくれれば良いのに……)
何が楽しくて、吉永の部屋で、吉永の居る目の前でAVを観なきゃいけないのか。と、思うものの、好奇心には勝てず目の前の映像に集中する。
(うお。ぷるるん……結構、美乳だな……。女優さんの名前、あとで教えてもらおう……)
悔しいが、吉永にしては良いチョイスだ。結構、好みのタイプかもしれない。
手を伸ばしたらおっぱいを揉めそう。無意識に手を伸ばしたが、残念ながら空を掴んだだけだ。
映像は進み、彼女が手でしてくれるという流れになる。ゆっくりとスエットを下ろされ、下着を下ろされる。なんだか、メチャクチャどきどきするんだが。
(思ったより、リアルだな……。なんか、実際に触られてるみたいな気に……)
暖かい手が、上下にモノを扱く。時々上目遣いで『気持ち良い?』と小首を傾げる姿が良い。
「っ……、く……」
思わず声が漏れる。リズミカルに動く手に、ビクビクと身体を揺らす。先端を引っ掛かれ、ぐちぐちと弄られる。
「あっ……! いや、ちょっと待て、おい!」
何かがおかしい。VRゴーグルを外し、周囲を確認する。視界が急に変わって、クラリと眩暈がした。
「何だよ。観とけって」
「お前、何やってんだっ!」
目の前に、映像に合わせるようにして、手で俺の性器を掴んでいる吉永がいた。マジで何やってんの? コイツ。
(しかも、なんか脱いでるし)
何故か吉永は、下を履いていなかった。マジで何してんの?
「良いから、動画観てろよ。萎えちゃったらどうすんだよ」
「ばっ! おま、擦んな……!」
ぬちゅぬちゅと先走りを塗り込むように手で擦られ、ゾクゾクと背筋が粟立つ。吉永の手なのに、非常に気持ちが良い。いや、溜まってるだけか。
「ほら、映像観てた方が良いだろ? 大丈夫。安心しろ。ちょっと借りるだけだ」
「バカ言え」
吉永の腕を掴み、捩じ上げる。そのままベッドに押し倒す形になってしまったのは不可抗力である。
「わっぷ」
「何やってんだ。お前な」
「何だよもう。ノリ悪いなあ。ちょっと突っ込もうと思っただけじゃん?」
「……何を」
「お前のナニを?」
「……何処に」
「俺の穴に」
「――」
絶句する俺に、吉永がケラケラ笑う。本当に、コイツ。
いや、俺が突っ込まれる側じゃなくて良かった。取り合えず、それは良かった。
(しかし、どういうことだ?)
「何で急に」
吉永ってホモだったっけ? と思いながら首を捻る。いや、ホモだったら良いってわけじゃねえけども。
「いやあ、これさ」
そう言って吉永が布団の端を捲って、ピンク色のバイブを取り出した。先日見た記憶がある。アナルバイブだ。
「あ?」
「お前この前、自分のケツにでも突っ込んだらって言ってたじゃん?」
「……言ったっけ?」
「言ったよ」
え? 言った? 俺。そんな鬼畜なこと言った? ああ、言ったかも。なんかそんな気がして来た。
「え? それで?」
「で、突っ込んでみたわけよ。そしたら……まあ、ハマっちまって」
「……アナニーに?」
「アナニーに」
え? じゃあ、何? このところ付き合いが悪かったのって――。
悪い遊びにハマって。そう言った吉永を思い出し、同時に自身に挿入して遊んでいた姿を妄想し、下腹部あたりがキュッとした。
「とはいえ、オモチャじゃん? まあ、ホンモノを突っ込んでみたいなって。一回くらい」
「……」
「な? 減るもんじゃねえし」
な? じゃねえよ。
マジで。いい加減にしろ。コイツ。
「……はぁ……」
ドッと疲れが出た。何というか、アホだコイツ。アホ過ぎる。鬱かもとか一瞬でも思った俺がバカみたいだ。
吉永はケロッとした顔でゴーグルを手に取って、俺に渡そうとする。
「取り合えず、動画の続き観ろよ。お前も女の子とヤってる気分のが良いだろ?」
はぁ。何だかバカバカしくなってきた。
まあ、確かに、減るもんじゃねえし。別に良いけどさ。こっちも萎えそうにないし。……むしろ硬くなってるし。
「これどうやって使ってんの? 見せてよ」
取り合えず、動画はどうでも良いや。それより、吉永がハマったっていうアナニーのが気になる。
「あ? 別に突っ込んだだけだけど」
「自分じゃ動かせなくね? やって見せてよ」
「……まあ、良いけど? 引くなよ?」
それは保証出来ない。
ピンク色のバイブを手に取り、吉永がアナルに押し当てた。
「んっ……」
ぐっと押し付けると、先端が穴にぬるんと入り込む。
「結構簡単に入るんだな。何か濡れてる?」
「潤滑ゼリー、入れておいた……ん、あ……」
ぐちょぐちょと、濡れた音が響く。穴を出入りするバイブに、好奇心がむくむくと沸き上がった。
「手、邪魔で見えねえし。それ、貸して」
「あ」
吉永の手を退け、バイブを掴む。スイッチを入れると、バイブはうねうねと回転しながら動き出す。なかなか、卑猥な動きだ。じゅぽじゅぽと出し入れをしながら、オモチャを呑み込む穴を凝視する。
「あ、あ……! 航平っ……、ん、激しっ……」
「へえ。マジで勃起してんじゃん。気持ち良いんだ」
「んー、んっ、あ、あっ……! ずぽずぽ、されんの、良いっ……!」
「毎日こんなことしてたの? しかも、俺にも突っ込まれたいって?」
ビクビクと、吉永の身体が痙攣するように動く。何か、もう、エロ過ぎて。
「あっ、あ、あっん……! あ、あ、航平っ……、航平っ……」
甘い声と、吉永の乱れた姿に、血液が下半身に集中するのが解る。吉永はだらしなく両足を開いて、されるがままになっていた。
(チンコ、痛てえ……)
ガチガチに勃起した肉棒が、欲望を訴えて膨れ上がる。充血したそれは、興奮して、痛いほどだった。
ずるっ。吉永のアナルからバイブを引き抜く。ビクンと身体を大きく跳ねらせ、喉を仰け反らせた。穴がひくひくと蠢く。穴はピタリと閉じることなく、僅かに収縮してパクパクと口を開けていた。
「あ、あ……」
「……」
無言で、肉棒の先端を穴に押し付ける。吉永が顔を上げ、俺を見る。
「入れるぞ」
「え」
吉永は入れてみたい。俺も入れてみたい。
つまり、そういうことだ。
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