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二十 蕩かしてやりたい。

 込み上げる衝動をこらえつつ、吉永の身体を抱く。唇に吸い付き、腰を撫でる。いつもよりやや窮屈なスーツの中に手を滑らせ、服の上からまさぐっていく。 「んっ……」  ピクリと、吉永が震える。耳たぶを食みながら、髪の匂いを吸い込む。 (こんなに、感度良かったっけ)  ちょっと触っただけで、吉永が感じているのが解る。最初のころより、確実に感じるようになっている。皮膚を滑っていくと同時に、ゾクゾクと身体を震わせる。 (なんか……)  じわりと、甘いものがこみ上げる。俺の手で気持ち良くなっているというのが、何故か妙に嬉しい。もっと感じさせたい。蕩かしてやりたい。ぐずぐずにしてやりたい。  喉に唇を這わせ、ちゅうっと吸い付く。吉永の手が、俺の髪を掴む。 「んぁ、ちょっと……、痕……」 「嫌なの?」 「嫌っていうか……」  そうじゃないけど。という顔をして、唇を結ぶ吉永に、俺はニヤリと笑って唇を噛む。 「ん」  まあ、誰かに突っ込まれても困るしな。吉永に女っ気がないのは周知のところだし、一番一緒にいるのは間違いなく俺だ。邪推されるのは気分悪いし。見えないところにびっしり着けてやろう。  ボタンに噛みついて、口で外す。吉永がプッと笑った。 「器用なヤツ」 「俺の舌が器用なのは、吉永が一番知ってんじゃないの?」 「どうだか。一番ってことは、ないんじゃないの? んっ……」  まあ、昔の彼女の方が知ってるかもしれないが。いや、どうだろう。こんな風に好き勝手に抱けるのは、吉永くらいだ。女の子相手には『優しい彼氏』みたいなそぶりで、欲を表に出していなかったと思う。  胸をはだけさせ、肌に吸い付く。俺が着けた痕が残っている。薄くなってきたそこに、再び痕をつける。このまま、繰り返していたら、一生消えないかも。なんて、ちょっとだけ思う。 「っ、ん……、航、……」  舌先で乳首を擽る。ころころと転がしたり、乳輪を舐めてやると、ツンと先端が尖ってくる。もっと触ってと主張する乳首の先をトントンと舌先でつついて、軽く噛む。吉永が荒い呼気を吐き出すのを感じながら、ちゅうっと乳首を吸い上げた。 「んぁ!」  ビクッ! 身体が跳ねる。 「気持ち良かったりすんの?」  ぷは、と唇を離して、顔を上げる。吉永は顔を赤くして、唇を結んだ。 「……それ、聴いちゃうわけ」 「そりゃあ」 「解るだろ」  こつんと額を叩かれ、クッっと笑う。表情は言葉よりも雄弁だ。何度も舌で舐りながら、背中に手を差し入れる。背中も感じるのか、背筋をなぞると吉永は腰を捻った。吉永を膝に乗せるようにして抱きしめながら、愛撫を繰り返す。 「ん、ぁ……航平……っ、ん」  膝で尻を押し上げると、顔を赤くして睨んでくる。その様子に、笑いながら尻を揉みしだく。 「あっ、ん」 「ここ、好きだろ?」 「っ、ん……あっ、ちょっっと……」  服の中に手を突っ込み、今度は直に揉む。弾力のある丸い尻は、揉んでいて楽しい。吉永は腰を捩りながら、もっと奥に欲しそうに淫靡な表情をする。 「航平……、ナカ……、弄って……」  お願いされてしまっては、仕方がない。枕元に手を伸ばし、ローションを探す。あった。 (ん? これって……)  ローションを手に取り、ズボンをずらす。太腿まで下着ごと脱がせ、ローションで湿らせた指を穴に這わせた。つぷん、と指先が穴に埋まっていく。 「あ――……、ぅん……」  切なそうな表情に、ゴクリと喉を鳴らす。ぐちぐちと指を動かし、内部をほぐしていく。すっかり覚え込んでいる穴は、柔らかい。すぐにでも挿入出来そうだ。自身が固くなるのを感じながら、念入りに内部を弄っていく。 「あ、あっ……、あ……」  吉永が赤い顔で喘ぐ。唾液が口端から零れて、シャツを濡らす。  やや乱暴に指を動かし、腸壁を擦る。吉永が鳴く。 「あ! あ、あっ! んあっ!」  ビクビクと揺れる腰がエロい。ねじ伏せ、ナカに入りたい欲望を抑え込み、指を引き抜いた。ビクッ! 身体が大きく跳ねる。 「あっ! あ、あ……。航、平……なんで、やめ」  良いところで止められ、吉永が不満を口にする。俺はちゅうっとキスをしながら、尻に手を伸ばす。 「ん……、ぅ。……ん?」  ぬぷっと挿入したものに、吉永が眉を寄せた。 「えっ、ちょ……」 「良いもの見つけちゃった」 「あ、あっ……」  親指より少し太いくらいのローターを、アナルに挿入する。さしたる抵抗もなく、ローターは穴に吸い込まれて行った。ローターに対して、ケーブルはやや太い。そのケーブルが、たらりと穴から伸びている様は、かなりいやらしい。 「マジックミラーのヤツで見たことあるけど、一気に十個くらい挿入れてるヤツ」 「お前、けっこうなヤツ、観てるな……っ」 「吉永は何個くらい行けそう? と言っても」 「んぁっ!」  二つ目のローターを、挿入する。 「五つしかなかったけどさ」 「あ、ん……っ」 「これって本当は乳首とクリも同時に責めるヤツだろ?」 「待っ……」  スイッチを入れ、乳首に当てる。両方の乳首と、アナル。同時に責められ、吉永は喉を仰け反らせた。 「あっ! ぅんっ!」 「もう一個はこっちか」  下着を穿かせ、性器に当たるように挟み込む。ビクッ、ビクッと、身体を震わせ、吉永がもたれかかって来た。 「あ、あっ、あ……!」 「クチ、こっち。舌出して」 「んぁ……、ん」  伸ばされた舌に、舌を絡ませる。吉永は瞳を潤ませながら、俺の唇に吸い付いた。 「スーツ姿で乱れんの、スゲー良い……」 「っ、ん……、あ」  俺の手でこんなにぐちゃぐちゃになってる吉永が、すごく良い。  ふと、思い立って、先ほど吉永が俺の首に巻き付けたネクタイに指を掛けた。吉永がゴクリと喉を鳴らす。俺のスーツ姿に興奮したのだろうか。それなら、ちょっとだけ愉快だ。  ネクタイを解き、吉永の手を掴む。 「っ……ん?」  両腕を腰の方に回し、ネクタイを巻き付ける。吉永は何をされているのか解っていたようだが、興奮した様子で俺をみるだけで、反対はしなかった。 「あ……」  ぎゅっと後ろ手に縛られ、吉永が蕩けた顔をする。身体にローターを押し付けられたまま、拘束された状態に、確かに興奮したようだ。  俺も興奮を隠せぬままに、吉永の顎を掴む。ドクドクと、心臓が鳴る。 (引かれたら、どうしよう)  内心、不安がよぎる。元々、男が好きなわけじゃない。好奇心から始まった関係。こんなことを言ったら、引かれるだろうか。  ベルトを緩め、前を寛げる。既に固く張り詰めた肉棒を突き出し、吉永の唇に親指を差し込んだ。 「舐めてよ」  一瞬、瞳が揺れた。戸惑うのは、一瞬だったように思える。  膝をついて、吉永は俺の股間に顔を埋めた。

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