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二十二 怠惰な日々

「あ――っ……!」  ドクドクと、つながった部分が脈打つ。吉永の穴がギチギチに拡がっている。俺を深く咥えこんで、いやらしくひくひくと、蠢いている。 「っ、ハァ……、すげぇ、気持ち良い……」 「ぅ、んっ……、航平……」  吉永が息を切らせる。淫靡に腰をくねらせて、吐息を吐き出す。 「すご、奥……、届いてる……っ」  ゆるゆると、腰を動かす吉永の姿に、ごくりと喉を鳴らす。手を縛られているせいで大きな動きは出来ないようだったが、それでも十分気持ち良い。吉永が動くたびに、ぬちゅ、ぬちゅっと音が響く。 「ん、航平、航平っ……」  夢中になって腰を振る吉永に、イタズラ心が湧く。手を伸ばして乳首を弄ってやると、ビクビクと身体を震わせる。 「あ、あっ! んっ」  顔を寄せ、胸に口づける。いい加減、腕を解いてやらないと動きづらそうだ。ネクタイを解き床に投げ捨てる。吉永は俺の身体を掴んで、大きく身体を揺さぶり始めた。 「あ、あっ、あっ……」  ずっ、ずちゅっ、と音が大きくなる。その度にベッドがギシギシと軋んだ。俺は太腿を掴んで、掌で撫でる。滑らかな手触りが心地いい。そのまま尻の方へ手を移動させ、両手で双丘を掴む。弾力のある尻を揉みながら、俺の方も上下に動かす。深く突き刺さった性器が、出たり入ったりする。 (イきそ……)  先ほどもイったばかりなのに、また限界が近くなる。グッと尻を掴む手に力を込め、下から突きあげる。吉永が声にならない悲鳴を上げた。 「―――っ!!」  ビクビクッ! 大きく身体をしならせ、吉永の性器から精液がはじけ飛ぶ。俺の腹の上にめがけて、どろりと熱い粘液が零れ落ちた。 「あ、あっ――!!」  嬌声に、ゾクゾクと背筋が粟立つ。突き上げる速度が速くなり、ぱん、ぱんと皮膚がぶつかる音がする。 「吉永っ……」  俺は吉永の名前を呼びながら、腰を掴む手に力を込めた。 「あ、あっ……」  吉永の身体がガクガクと震える。まだ精液を吐き出しながら、膝を震わせる。俺はもう一度大きく腰を揺らし、精液を吐き出した。  ◆   ◆   ◆  吉永との欲望にまみれた日々は、習慣になってしまった。大抵、濃密な夜を過ごしたあと二日ほどは、まるでその夜が夢だったかのように、いつも通りの先輩後輩の関係が続く。だが三日もすると、互いの肌の温度を探り出す。俺は禁欲する二日間の情熱をぶつけるように、いつだって乱暴に吉永を抱いた。  上から突き刺すようにもしたし、後ろから激しく犯したりもした。道具も使ったし、縛ったりもしてみた。おおよそ、普通のセックスとは程遠い、アダルトビデオみたいなセックス。  この行為が、『遊び』だと、互いに言い聞かせるように、俺たちは特殊な行為ばかり繰り返した。まだこれはやっていないからと、言い訳するみたいに。  けど、本音で言えばいつだって、はまりこんでいたし、既に溺れているのは、事実だった。 (昨日したばっかだし)  また、しばらくはお預けだろうな。そんなことを思いながら、廊下を歩く。夕日コーポレーションの建屋は、広い。敷地の大部分は、製造現場の機械や設備が入っている工場や倉庫で、その他に設計や営業などの人材が入るビルがある。  吉永とセックスしない期間は、いつも通りの関係に、ホッとする反面、忍耐の時間でもある。吉永と変わらない関係でいられることは嬉しいが、肌の柔らかさも、唇の味も、身体の奥の奥まで、全て知っているだけに、欲望が募る。寮生活で禁欲は慣れていたはずなのに、ヤれないと思うと余計にヤりたくなる。 (俺から誘いたくないし)  俺は相変わらず、「吉永が誘ったから乗った」という体である。まあ、実際そうなんだし、盛ってるみたいでカッコ悪いし。  午後の眠気を噛み殺し、スマートフォンを確認した。スケジューラには、打ち合わせと記載がある。まだ時間まで十五分ほどある。余裕だ。  会議室までの道のりを歩いていると、廊下の角から見知った人物が姿を現す。向こうもこちらに気がついたらしい。視線がかち合った。 「久我さん、こんにちは」 「河井さん。どうも」  柔らかい笑みを浮かべながら、河井さんが近づいてくる。総務部に所属する、二つ歳上の彼女には、色々とお世話になっていた。彼氏が居ないと聞いて、同期の女子たちを経由して連絡先を交換したものの、特にやり取りはしていない。 「申請の件、解りました? あれから気になっていたんですが、なかなか時間がなくて」 「あ、大丈夫です。河井さんがメールしてくれた内容で、解決しました。こっちこそ、連絡せずにすみません」 「いえいえ、解決したなら良かったです」  ニッコリと微笑む姿に、胸がくすぐったくなる。可愛い女性だと思う。ここ最近は吉永とヤってばかりいたが、生来の性癖はノーマルなのだ。女性らしいふっくらとした頬と、華奢な肩。女の子と喋っているというだけで、気分が良い。 「そう言えば、魚富味行きましたよ。寮の先輩と」 「あ、そうなの? どうだった?」  プライベートな話題に、なんとなく口調が柔らかくなる。魚富味は出来たばかりの店で、話題になっていた。 「味は良かったですよ。ちょっと量が物足りない感じでしたけど」 「そうなんだ。――あとで行ってみようかな」 「あ、ランチもやってるみたいです。俺は夜、行ったんですけど」 「ランチやってるんだー」  ふわふわした雰囲気の彼女に、つられてこっちも笑う。 (誘ってみるか?)  あわよくば、デート出来るかも。そう思って、さりげなく誘いにかける。 「一緒に行ってみます? なんて」 「ん? ああー、じゃあ皆に声かけてみようか」 「――そう、っすね」  さすがに最初から二人きりはなかったか……。脈があるのか、ナシなのか、正直、解らんな。でもナシだったら、もっと遠回しに断られるかな。 「じゃあ、適当に声かけますよ」 「うん。私の方も声かけるね。連絡先――は、交換したんだっけ。連絡するねー」 「はい」  取り敢えず、悪くはないよな? て言うか、これ合コンってことで良いんだろうか。 (取り敢えず、独り身の奴らに声をかけるか) 「あ、時間」  気づけば、会議まであと三分になっていた。慌てて俺は、廊下を小走りに駆けていった。  

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