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二十四 ホテルにて

 駅の裏通りにあるホテルは、古くさい建物だったが中は比較的綺麗だった。慣れた様子で部屋に上がる吉永に、なんとなく過去を想像してモヤっとする。考えてみれば、ずっと付き合っているような気になっていたが、実際はここ二年ほどの付き合いでしかない。それまでの吉永のことは、俺はまるで知らないのだ。 「お風呂一緒に入ろうよ」 「え、あ、うん」  誘われ、戸惑いながら返事をする。ガラス張りの浴室に、丸いジャグジー風呂。何故か浴槽がライトアップされる仕様だ。 「電気消す?」  笑いながら言う吉永に、「いや」と返事する。 「見えないから良い」 「雰囲気よりそっち優先なんだ。まあ、航平らしいか」 「なんだよ、俺らしいって」 「ん? スケベ?」  思わず殴ろうとしたが、かわされる。笑う吉永に、ムッと唇を結んだ。 (くそ。泣かしてやる)  絶対に今日は泣くまでヤってやると、心に誓いながら服を脱ぐ。吉永の方を見ると、既に丸い尻を剥き出しにして、お湯の準備をしていた。 「……」  今、後ろから飛び付いて、あの丸い尻を揉みしだいたら、どうするだろうか。太股を撫でて、脚にしゃぶりつきたい衝動をこらえ、裸になる。 「寮だと、一緒に入れないしな」 「入ってはいるだろ」 「それは屁理屈だろ」  呆れたように言われて、「なんだよ」と返す。入ってるじゃん。大浴場とか。まあ、最近はシャワーが多いか。痕が消える間もなく、抱いている。  二人して浴槽に入る。洗うのはまあ、お楽しみだ。向かい合って湯船に浸かりながら、吉永が俺の首に腕を回す。 「誰が休憩とか言い出したんだろ」  伸ばされた舌に舌を絡めて、舌先で擽り合う。チロチロと舐め合うようにして、唾液を絡め合った。 「どっちかっていうと、運動だよな」 「ん、ぅ……」  はぁ、と息を吐き出し、唇が離れる。もう少しキスしたいのに。そう思って顔を引き寄せたが、吉永の指で唇を阻まれる。 「ダメ。まだ、お預け」 「……何でだよ」 「すぐ終わっちゃうだろ? お楽しみは、」  言いかけたのを、腕を引っ張って遮る。吉永を背後から抱き締め、首筋にキスをした。 「ちょっと、危ねえだろ」  そう言いながらも、吉永はクスクス笑っている。皮膚にキスしたり、まさぐったりしながらじゃれつく度に、お湯がちゃぷちゃぷと音を立てる。 (お湯が温いの、わざとか……)  のぼせないように、温くしたのだろう。いちゃつきたいのだと思えば、悪くない提案だ。  まあ、時間はたっぷりある。がっつく必要もない。 「おれが洗ってやるよ」  吉永がそう言いながら湯船から出る。まあ、そりゃあ、そんなこと言われたら、期待しちゃうもんね。  ニヤつく気持ちを押さえて、平静なふりを装い、椅子に腰かける。吉永は自分の身体にたっぷり泡を纏って、俺の身体に擦り付けた。 「うひひ。ちょっと面白い」 「自分ばっか擦んなよ」 「あ、ん」  太股を撫でてやると、ピクンと身体が跳ねる。こうして肌を擦っているだけだと言うのに、妙に心地良い。俺が富豪だったら、毎日こうして身体を洗わせるのにな。美女たちに。 (まあ、吉永は美女ではないんだが……)  女のような柔らかい身体ではないが、しなやかでハリのある肉体も悪くない。吉永は脚も綺麗だし。  全身を使って洗われていると、なんだか偉くなった気分だ。身体に手足を絡み付かせ、淫靡に洗われていく。良いな、これ。 (寮じゃ出来ねえな)  こんなに楽しいのに。まあ、またホテルに来れば良いか。 「吉永」  顔を向けさせ、唇を重ねる。 「んぅ……、ん」 「今度は、俺が洗うわ」 「あっ」  転倒しないよう支えながら、吉永をマットの上に寝かせる。泡を追加して、太股からふくらはぎへ手を滑らせた。 「っ、ん……」 「なんだよ。もう感じてんの?」  揉むように脚を弄くりながら、足首、足の甲、足の裏と、手を滑らせる。滑らかで、ほどよい肉付きのしなやかな脚。泡がなけりゃ、齧りついてたのに。  脚の指に自分の指を絡ませ、一本一本、丁寧に洗っていく。吉永を洗う日が来るとはな。 「あ、っ……航平っ……」 (脚に挟みてぇな……)  吉永をからかっているが、こっちも半勃ちだ。泡だらけの脚に挟んで擦ったら、気持ちいいだろう。 (いやいや、今はもっと、虐めてやんないと)  両足を掴んで、脚を開かせる。尻を上に向けさせ、ひっくり返してやった。 「お。吉永、身体柔らかいな」 「キツ……、いって」  恥ずかしそうに顔を朱に染めて、吉永が抗議する。多少、辛そうだが、まあ大丈夫だろう。 「すげー、良く見える」 「っ、ん……、あんま、ジロジロ……見んなって」 「今さらだろ。それに、見られて感じてるクセに」  笑いながら、俺は腿の付け根を擽った。吉永がビクッと身体を揺らす。 「は……、ん……」 「こことか、どうよ」  言いながら、アナルと性器をつなぐ、間の皮膚に指を這わせる。ゾクゾクと、身体を震わせる様子に、俺はいっそう、その場所を刺激する。 「あっ、ん……そこ……っ」  もどかしそうに腰をくねらせ、吉永がせつなげに悶える。直接触られない快感が、吉永を揺さぶっている。 「あ、あ……、ジンジン、する……ぅ」  俺は皮膚を擽りながら、アナルのヒダを親指で擽った。 「吉永のアナル、開いちゃってんじゃん?」 「あ、あ……」  指の先端を、柔らかい穴にちゅぷ、ちゅぷと出し入れする。何度も俺を受け入れているせいか、吉永のアナルはヒダが柔らかくなって穴が縦になっていた。俺のせいだと思うと、少し嬉しくなってしまう。 (俺専用だし)  俺以外の誰も、ここを使っていないと思うと、優越感が湧く。 「ここも、綺麗にしないとな」 「んぁ……っ」  ぬぷ、と指を挿入する。泡を塗り込めるようにじゅぷじゅぷと音を立て、アナルに指を出し入れする。吉永の腿がビクッ、ビクッと、小刻みに震える。 「あ――、ん……っ」 「イくなよ? 洗ってるだけなんだし」 「っ、航平っ……ん」  吉永の性器は勃起して、ぱんぱんに膨らんでいる。その先端から、先走りの粘液がトロリと溢れる。 「んぁ、……、こうへ、気持ち良く、なっちゃ……っ」 「弱すぎだろ」  揶揄しながら指を引き抜き、今度は直接的性器に触れた。 「っっ!」  ビクビクッ! と、大きく身体が跳ねる。 「ここも、洗わないとな」 「ん、あ、っ……」  小刻みに声を上げながら、吉永が震える。ビクビクと太腿が揺れるのがいやらしい。吉永も楽しんでいるのだろう、俺にされるがままに、手はだらりと力なくマットの上に垂れている。  竿をゆるゆると洗いながら、睾丸と先端を同時に弄る。先の方はぬるぬるしていた。 「あ、あ……、イっちゃ……」 「ダメだって」  ぐっと根元を押さえ、イかせないようにする。吉永はつま先をぴくんと跳ねらせ、俺を見つめた。濡れた瞳、唾液の零れた唇。まあ、俺もかなり限界なんだけど。 (ここで一発ヤっても良いけど)  じっくりベッドでしたい気もする。迷っていると、吉永が俺の腰に脚を絡めて、腕を伸ばしてきた。 「……ベッド、いこ」 「……そうするか」  誘いに、唇を重ねる。早く繋がりたい衝動をこらえながら泡を流して、くっつきあいながらベッドへと向かった。

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