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三十 今日はナシ

「今日も続き観ようぜ」  と、俺がドラマの続きを再生させようと、手にしたリモコンを、吉永が掴んだ。ギクリとして、吉永を見る。 「お、おう?」 「……」  吉永はじぃっと俺を睨むように見つめて、ずいっと顔を近づけて来た。近い。 「どうかし――」  ぱく。吉永が俺の鼻に齧りつく。痛くはなかったが――。 「っ、おい――」 「ん、」  次いで、唇に噛みつかれた。 (あ)  ヤバイ。頭では分かっていたが、我慢していた分、理性はあっという間に崩れ去った。  舌が唇に挿入される。吉永は俺の膝に乗っかるようにして、体重をかけて来る。吉永が太腿で、俺の脚を擦る。それは、ダメだって。 「っ……」  唇の柔らかさが。口の中の熱さが。舌の気持ち良さが。冷静さを奪っていく。 「は……、航平……ん」  甘い声が、耳たぶを擽る。ゾクゾクと背筋が粟立つ。本能のままに吉永の腰に手をやり、夢中で唇を吸った。辞めなければ。そう思うのに、抗えない。角度を変え、俺の方からも舌を絡ませる。もう無理だ。 (くそ……吉永のヤツっ……!)  俺の気が乗ったのが解ったのか、吉永が上気した顔で俺を見る。潤んだ瞳に、ゾクゾクと全身が震えた。 「……今日は、ドラマはナシ」 「っ……うん」  抗えない。ダメだ。  吉永が頬を擦りよせてくる。甘えるようなしぐさに、吉永相手だと言うのに胸が疼いた。 (クソ。マジで……)  ムカつく。誘って来た吉永にも、あっさり乗ってしまう自分自身にも。  キスをしながら、腰の隙間から肌に触れる。なめらかな肌。少し骨ばった腰。ズボンの隙間に手を差し込み、尻を掴む。弾力のある丸い双丘を揉みながら、舌先を絡め合う。 「ん、ふ……、んっ……」  スエットごと下着を脱がせ、尻を剥き出しにする。吉永は邪魔だというように器用に足で引っ掛かったスエットを脱ぎ、裸の下半身で俺に跨った。 「っ、……ベッド、行かねぇの?」  俺の問いに、キスに夢中になっていた顔を上げる。いつもより興奮しているように見えるのは、結果として、ここのところ焦らしていたからだろうか。 「はっ……、ん、床で、してみる?」 「……」  確かに、床ではしたことがなかったかもしれない。新しいことをしようと誘われれば、それを理由にしてもいい気がしてくる。  俺の興味が湧いたのに気づかれたらしく、吉永がニッと笑う。腕を俺の首に回し、引き寄せる。 「ん、航平……触って……」  甘い声で強請られば、抗えるすべなどない。  俺は貪るように首筋に噛みつきながら、太腿を掴んだ。

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