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建物の二階奥にあるVIPルーム。
天蓋付きベッドに暖炉、ゴシック調の内装で凝ったインテリアに彩られた部屋は雰囲気満点、常連客に好評だという。
「ん……っ……ン……ン……」
あられもない気配は浴室からしていた。
チェスボードを彷彿とさせる白と黒のタイルで埋め尽くされた床。開放的な大きな格子窓が特徴的であった。
「はぁ……ッ」
窓辺に設置された真っ白な猫足のバスタブ。
お互い着衣のまま、靴も履いた状態で、浅い湯船に浸かった伊吹生は凌貴にキスされていた。
「お前な……どうして風呂場直行なんだ」
熱烈なバックハグとキスを同時進行でやってのけた年下の青年に、隙を見て苦言を呈する。
「最初のときみたいに全部濡れたじゃないか」
ロールスクリーンは上げられた状態で、瞬く夜景が一望できる浴室。緩やかなカーブを描くバスタブに背中を預けた凌貴は、呆れ返る伊吹生を背後から覗き込む。
「最初の出会いを再現してみたかったんです」
「つくづく変わった奴だな」
「プールに行こうか迷いました」
「やめろ、突き落として風邪でも引かせるつもりか」
微温湯の中で凌貴は改めて伊吹生を抱きしめる。
首筋から耳元にかけてキスを連ね、耳たぶを甘噛みしてきた。
「ッ……あのとき、死神かと思った」
「僕はバルコニーから貴方を見つけた瞬間、視線が外せなくなりました。伊吹生さんは周囲から完全に浮いていた」
「……ただのオッサンだからな」
「潜入捜査でもしているような真剣な眼差しが印象的だった」
湯船が波打つ。伊吹生の胸元を凌貴の両手が訪れた。
「やっぱり恋でしたね」
濡れそぼったワイシャツがぴたりと張りつく胸板で、艶やかな五指が積極的に動く。
遠慮がちに芽吹く突起を探り当てると、悪戯に爪弾いては、捏ね繰り回した。
「ッ……そもそもな……俺はお前と接触したら、駄目なんだ。イエローカードが出た。次は接近禁止命令の誓約書にサインすることになる」
「僕に会えなくなるのは嫌ですか?」
伊吹生は胸の突端を執拗に弄くる凌貴をジロリと睨め上げた。
「顔も知らない奴等の言いなりになるのが気に喰わないだけだ」
「でも、伊吹生さん、僕に会いにきてくれたでしょう」
「……」
「ね……?」
凌貴はワイシャツに浮かび上がる、シコリを帯びてきた二つの突起をキュッと抓った。
「ン、っ……ぅ」
「僕を助けてくれたときも雨で濡れていましたね」
外されたベルトがバスタブの外に無造作に放り投げられる。
「伊吹生さんの血……とても美味しかった……」
伊吹生は身を竦ませた。
すでにカタチを変えつつあった熱源を下着の上から愛撫された。
「刺されたことも忘れるくらいに甘くて、刺激的で、堪らなかった」
凌貴は肌身に密着していた伊吹生のボクサーパンツをずり下ろし、熱を宿すペニスを掌に捕らえ、しごいた。
序盤から湯船がぐらつく程に荒々しく可愛がった。
「ああ……ッ……ッ……ん……ッ」
「……いってください、伊吹生さん」
凌貴の乱杭歯が耳たぶの柔らかなところに浅く埋まる。心身が粟立つ婬靡な悪ふざけに追い討ちをかけられ、伊吹生は咄嗟に首をすぼめた。
呆気なく達した。
浅ましげに紅潮しきった頂きから、白濁した絶頂の証を解き放った。
「は……ッ……ッ……ッ、んむ……ン……」
射精したばかりで喘ぐ唇を唇で塞がれる。
強引に上向かされて深く長くキスされた。
(……逆上せそうだ……)
微温湯のはずが、熱湯に沈められでもしているかのように、爪先まで熱くなった。
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