36 / 58

バレちゃった

※ネコヤ視点です 「ねぇ、実のところさ、2人って付き合ってるんでしょ?」 遠田さんが席を立つや否や 飯田さんがこっそりと訊いてきた。 驚いて「え?」としか返せない。 本当はちゃんと「違いますよ!」と言えればいいのに、嘘をつかない自分が恨めしい。 「やっぱそうなんだ〜。遠田も頑なに否定するけど、雰囲気でわかるし。この年でルームシェアってのもなんか変だし」 「そのっ、遠田さんが隠しているのであれば どうか他の人には言わないでください」 「どうしようかな〜」とニヤニヤする飯田さんに僕は焦って思わず、机の上の飯田さんの手の裾を掴む。 「もし、知られちゃったら、僕、家を追い出されるかもしれなくて…。遠田さんは多分、僕のこと好きじゃないから…」 「ごめんごめん。冗談だよ!びっくりしてるネコヤくんが可愛くて、思わず意地悪しちゃった!誰にも言わないよ!」 「へ?」 急に力が抜けて、僕は涙が出た。 「えっ!?本当にごめん!泣かないで〜。もう酷いことしないから」 飯田さんは焦ったようにテーブルにあった ナプキンで僕の涙を拭いてくれた。 「す、すみません」 僕も慌てて押し付けられたナプキンで 涙を拭こうとする、と 「おい、何やってんだ飯田」 遠田さんが帰ってきた。 怒っている。 「げっ、遠田。お前もっと電話してろよ」 「げ、じゃない。何で八尋が泣いてるんだ?」 「ちがっ!これは、飯田さんの冗談に僕が驚いただけで!」 「ネコヤくん、ごめんねぇ。もう言わないからね」 必死に2人で、遠田さんに何でもないとは 伝えたんだけれども 遠田さんは「解散する。2度と飯田には会わせない」と、お金だけ置いて僕の手を引いて居酒屋を出た。 本当に情けない… 僕がちゃんとしてないせいで… …… 一方で原因となった飯田は「好きじゃないって雰囲気じゃないけどな」と苦笑しながら、 1人居酒屋寂しいな〜と酒啜っていた。

ともだちにシェアしよう!