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第11話
琥珀はベッドに突っ伏すと号泣した。
暖が琥珀の親友でなくなるなんて、琥珀の人生はもう終わりだ。
暖に嫌われた。
鋭い刃物で滅多刺しにされたように胸が痛くて、涙が止まらなかった。
自分のどこがいけなかったのだろう。特訓だからといって家にまで泊まり込んだのがよくなかったのだろうか。
暖が嫌なんだったらもう暖の家には泊まらない。
他にもして欲しくないことがあればなんでも言ってもらいたい。全部治すから。暖の言うことはなんでも聞くから。
そうしたらまた暖は友達に戻ってくれるだろうか。
いつから暖は琥珀の親友をやめたいと思っていたのだろう。男同士でキスなんて気持ち悪いことをすれば、琥珀と喧嘩別れできると思ったのだろうか。
それほど琥珀が嫌だったのだろうか。
けど暖にも言ったように、琥珀はキスくらいで暖のことを嫌いになったりなんかしない。
すごく驚きはしたけど、でも相手は暖だから。
他の男 だったら吐きそうになるくらい嫌だけど、でも暖だったから。
それともこんなふうに思う自分は変なのだろうか。だから暖は琥珀のことが嫌になったのだろうか。
琥珀がキスなんて平気って言った後に暖は琥珀の親友でいたくないと言った。
逆にもっと怒るべきだったのか? 気色悪いことしやがってこの野郎って。でもだって、そんなふうに思わなかったんだから仕方ない。
いや、だからそれがダメなのか。あーっ、もう何がなんだか分からない。
ぐるぐる考えても、暖に親友を解消されてしまった事実は変わらず、それを思うと悲しくて悲しくて琥珀は涙が止まらなかった。
それまで毎朝一緒に登校していた二人だったが、次の朝、暖は琥珀を迎えに来なかった。
もしかしたら、玄関を開けると門のところに暖がいるのではないかと微かな希望をもって外に出てみたが、そこに暖の姿はなかった。
学校に着くと、すでに暖は登校していて、そして琥珀とは目も合わせなかった。
暖は琥珀をまるっきり無視するわけではなく、必要な会話はしてきた。
劇の練習は滞りなく進み、周りの人からは、二人の間に変わったことは何一つないように見えたかもしれない。
実際にみんなと一緒にいる時の暖は、琥珀に笑顔を向けてきて、冗談を言ったりもした。
けれど二人になった途端、暖の態度は硬化し、会話がなくなるだけでなく、自分に話しかけてくるなとばかりに見えない壁を作ってきた。
琥珀はだんだんと劇の練習をするのが辛くなってきた。
親友を解消された暖とメロスとセリヌンティウスを演じるのは、もはや罰ゲームみたいだった。
そうして迎えた文化祭当日。劇は滞りなく上演され、二日間の観客の数はそこそこに、大きなハプニングに見舞われることもなく無事幕を閉じた。
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