琥珀は腰を高く突き上げさせられた格好で、シーツに頬を擦りつけて、なんとも言えない感覚に必死に耐えた。 　快感など微塵にない、まるで責苦を負っているような気分だった。そもそもこんなところをいじられて気持ちがいいはずない。 「琥珀」 　ふいに耳元で暖の掠れた声がした。 「この体勢で入れる？　それとも前からがいい？」 　後ろからの方が最初は楽だとネットに書いてあったが、最初だからこそ犬の後尾みたいなのは嫌だった。 　前がいいと言うと、暖は俺もそっちがいいと、琥珀を仰向けに寝かせた。一度ついばむようなキスをすると、琥珀の両足を大きく開かせ持ち上げた。 　その瞬間、こっちの方がひっくり返ったカエルみたいで恥ずかしいかもと後悔した。 　琥珀の足の間に割って入った暖が腰を浮かせ、手で支えたそれを琥珀の窄まりに当てがう。 　が、二人とも初めてなのと、琥珀が極度に緊張しているせいでなかなか挿入できなかった。 　琥珀が涙声で「いたっ」と連発していると、暖は持ち上げた琥珀の足を下ろし、すっかり萎んでしまった琥珀の中心を口に含んだ。手と口の両方で琥珀のそれはやがて固さを取り戻した。 　琥珀が達するのにそう時間は要さなかった。 　ダメだと言ったのに、暖の口の中で琥珀は果てさせられた。脈打つように吐き出されるものを暖は搾り取るように吸い上げ呑み込んだ。 　腰骨と頭が白く痺れ、軽い放心状態の琥珀は再びさっきと同じように足を持ち上げられるのを人ごとのようにぼんやりと見つめた。 「琥珀」 　唇に暖の息がかかり、そのまま深く口づけられる。 　窄まりに暖の張り詰めた頭が押し付けられる。本能で琥珀の菊口は蕾を固く閉じようとするが、暖のそれは強引に蕾をこじ開け頭を潜らせてくる。 　くぷりと一番大きな部分を呑み込ませられた時、息が止まった。暖の侵入も止まり、ほっと息をつくと、それに合わせてぐいっと頭が奥へ潜り込んできた。 　その後はもう、一度打ち込まれてしまった杭に身体の自由を奪われ、熱く猛ったそれの侵入を受け入れるしかなかった。 　奥の奥まで差し込まれ、内臓を押し潰されるような圧迫感と焼け付くような痛みに目から熱い雫が流れ落ちた。 　琥珀ごめん、ごめんな、と暖は囁きながら伝う涙を唇で拾った。 　暖はしばらくそのまま静止して、琥珀の抵抗が緩むのを待つ。 　本来出すために作られた器官に挿れられるという真逆の行為に、内側が全力で拒絶していた。けれど暖の獰猛なそれとの圧倒的な力の差に、琥珀のそこはついに白旗を上げる。 　それを合図に暖は奥深くに差し込んだまま琥珀をゆっくりとゆすり始めた。奥歯を噛み締め固く引き結んだ口から、んっ、ふっ、と息が漏れる。 　同じ男同士なのに、挿れる方と挿れられる方じゃなんでこんなに違うんだ。 　暖は本能に従うだけでいいのに、自分はこの上なく不自然なことを強いられている。なんかフェアじゃない。覚悟はしていたが想像を遥かに超える責苦のような行為に琥珀は思わず暖を睨みつけた。 　暖は今まで琥珀が見たことのない切なげな表情をして琥珀を見つめていた。 　その瞬間ぎゅっと琥珀のそこが暖を締め付けた。琥珀の中の暖と暖の顔がピクリと反応する。 　暖は掠れた吐息を吐き、潤んだ眼差しを琥珀に留めたまま腰を動かし続ける。 　決して琥珀から視線を逸らそうとしない暖に、琥珀のそこが初めて小さくだが疼いた。