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第1話

まとめて括り上げた両の手を頭の上に持ち上げ、ベッドのへりに結び付ける。抵抗の自由を封じられて、青年の目が怯えに見開かれる。  哀れな獲物の上に、僕はゆっくりと跨る。やめろ、と掠れた声を絞り出し、それでも威嚇に青年はこちらを睨み付けてくる。細かに震える全身、首筋に手を触れてやると、びくりと腰が浮き上がった。  ……理想的だ。表面上は強がった虚勢を張るけれど、内心は抑え付けられる恐怖に負けそうになっている。いつ喚き、叫び出すのか――適わぬ解放を求めてもがき、暴れ、乱れ悶える青年のさまを想像し、僕はうっとりとしてしまう。  何回味わっても、この楽しみは薄れない。僕の中にある征服欲が存分に刺激される。こんなにも毎回ちゃんと僕を喜ばせてくれる対象を、見付けてこられる僕がラッキーなのか、それとも世間にはこんな反応をする人間がそんなにも多いのか。  今口付けたら、反逆心のままに噛み付かれてしまうだろう。青年の、見るからに味わい深そうな唇はそそるけれども、僕は自分が痛くされる事は僅かにも嫌なのだ。それに、拒絶をしか返されないのでは、楽しめない。嫌がるが嫌がる程には抗えない、そんな状況でないと。  まだ充分な強さを放つ瞳に鋭く見上げられて、背筋をぞくぞくと快感が走る。捕まえてきた獲物に順位はつけ難いけれど、今目の前に居るこの青年は確実に過去最高なんじゃないか、と思う。  屈服させ支配する迄の過程、威勢を張った顔が絶望に塗り替わり、力を失っていく過程。今から彼が示すであろう、自尊心を踏みにじられ、反抗の意志を失い、逃げ場もなく諦めに打ちのめされる姿。  どんな声を挙げるのか。苦痛に満ちた声、呪詛の籠もる声、懇願を含んだ声、謀らずも洩れてしまう喘ぎ声は、こぼれる吐息はどんなにか甘いだろう。祈る様な囁きは聞けるだろうか、涙は、綺麗な彼の目に浮かぶ涙はどんなにか耽美なんだろう……  想像だけで、イッてしまいそうだ。首から喉元を辿って胸元へ、置いたままだった手を僕はゆっくりと下ろしていく。  はだけたシャツから顕わになる肌。滑らかなその手触りも、興奮に輪を掛ける。  噛み切られてもいい。僕は堪らず青年の引き結ばれた唇に口付ける。びくっと全身が跳ねて、青年の体に緊張が走る。より頑なになる唇に、僕は緩く口を押し付ける。  長く、味わいたかった。力が抜けたら柔らかいのであろう、応えてくれたら甘いのであろう唇を。  不快を隠そうともしない眉根の寄った表情、ぎゅうっと瞑られた双眸、逃れようと背けようとする顔はけれども、頭上に持ち上げさせられた腕に阻まれ殆ど動かせてはいない。  慣れていないのか、単に嫌悪に思考が停止してしまっているのか。必死で縛られた両手を揺らし、捻るけれど、執拗な唇への愛撫からはどう逃げればいいのか分からないらしい。  そうして、訳が分からなくなった者特有の、パニックになって引き起こす行動を無意識に彼は選んだ。先程懸念した、噛み切る、だ。  実際は、そんなに大した感じじゃない。まだ舌を噛まれなかっただけいい。無理矢理に舌で開かせた歯列が、侵入を拒む咄嗟の反応で閉じようとした、そこに僕の唇があった、ただそれだけの経緯だ。  ほんの僅かに切れた唇、滲んだ血など微々たる量なのに、僕はわざとに新たな血が溜まる位に自分で傷口を圧迫し、唾液と共にそれを相手の口の中に流し込んでやった。  動くのを恐れた様に身を硬くしたままの相手は、反射的にそれを受け入れ呑み下してくれて、……呑み込んだ生温い唾液と鉄の味の不快にか、恐ろしい程に嫌な顔をしてみせた。  そのままどうにか力を入れて顔を逃がし、青年は僕の一方的な侵略から抜け出した。間髪入れずに、非難の響きを滲ませた声が僕を制する様に放たれた。 「いい加減にしやがれっ、この変態野郎!!」   ……せめて変人、にして欲しい、と僕は思う。美しく儚いものに惹かれ手に入れたいと願う事は極正常な欲望である筈だ、その相手として選ぶ対象が、どうしても世間の尺度からは外れてしまうだけで。  だけど、予想をいい意味で裏切ってくれた相手の反応に、僕は思わず破顔してしまう。頬を紅くさせて精一杯の凄みを利かせて強がる様子なんて、数ある選択肢の中で一番目か二番目にこちらを喜ばせる反応だ。略奪者の嗜虐心を煽る、最高に出来のいい対応だ。  久しく返されなかった反応、と言うか。拉致され両手を拘束された時点で相手の負けは確定している、逆らう事で余計な暴力やいたぶりが追加されると考えて、普通なら脅えに身を縮め、逆らう前に様子を窺う処だ。  なのに、一分の勝算もなく勇敢にも真正面から立ち向かってきた。短絡的なのか純粋なのか、余程の正義感の持ち主なのか。  自分が僕の暗い欲情の火に油を注いだとも気付かない、まだ僕を睨み据える青年の首筋に、僕は唇をつける。笑ったままに、僕が無言でそうして攻撃を始めた事に対し、彼はまだ一途に咎める声を挙げてくれるだろうか。   肌に、軽く歯を立てる。薄い皮膚の下、正確に頸動脈を捉えてそれに歯が当たる様に力を入れてやる。強張った青年の体は、僕の意図を汲んだせいではないだろう。肌を喰い破られる、単にそう錯覚しての反射的な脅えに過ぎないのだろう。  肉食獣が獲物を仕留める仕草に似せて、お前は僕に喰われる哀れな犠牲者だと、僕は相手に知らしめたのだけれど。幾度か繰り返せばその内気付いて貰えるだろうか。僕はいつでもお前を殺せる、殺すつもりで居る、そんな含みと共に。  今はまだ僕の宣戦布告の片鱗に気付きもしない相手は、己の信じる正義に力を漲らせた様に、有り得ない奇跡に心を奮い起たせた様に、強く光る瞳を僕から反らしもしないのだ。   ――今迄に感じた事のない期待。僕は、溺れる位に彼に夢中になるだろう。気がふれる位に、快楽の虜になるだろう。彼の何がどう、とか説明は出来ないけれど。  これは、楽しめる。笑った僕の口元に浮かんだ残忍さに気付いたのか、怯んだ様に唇に何か言葉が載せられようとした。  素早く、口で蓋をしてやる。スイッチオン、僕の欲情の最終ロックは外された。そして悪いけど、僕はなかなか満足しない方なのだ。  ……長い夜の、始まりだ。  初めての反応。いつ迄も僕を穿つ様に睨みつける険しい瞳。殺意をしか浮かべない棘々しい光。  切り裂く程の緊迫感を張り巡らせる彼の体に手を這わせて、強情を続ける相手に、僕は最上級の敬意を払っている。  もう結構な回数、彼を虐げた筈だ。それでも全く失われる気配のない反抗心の強さ、どころか凌辱を加える毎に一層僕への憎悪を深める様に、青年の僕を射る目にはますます暗い力強さが灯る。  楽しめそうだと思った僕の直感は、正しかった――ここ迄に反撃のチャンスを窺い、手首を拘束する紐さえなければ僕に殴りかかろうとする位に全身に気を張って、抑え付ける僕から僅かにも目を反らそうとしない相手など、初めてだ。  彼の原動力となる屈辱と悔しさと憎しみはどれ程に激しく彼の体内を荒れ狂っているのか、それを維持出来る彼の精神の強さに、僕は感服してしまう。支配するとか諦めさせるとか、目の前のこの青年にはそれは最後迄望めないだろう。  逃げられないと知って、或いは犯される事自体のショックで、どんなにいきがっていても、普通の相手ならば徐々にまたは唐突に意気消沈した様に、反抗や反応自体が薄れていく。体力的な疲労とも比例する様に、時間が経つ程にそれは顕著だ。なのに、この相手は。   迂闊に口付けて、唇を舌を何度噛み千切られそうになったか。普通ならか細い喘ぎをしかもう洩らせはしないだろう、長い凌辱の果てに於いても尚、殺してやる、と毒を吐く様に凄んでみせる青年の姿に、僕は感動を覚えていたりする。  殺してやる、――いい響きだ。当然相手を殺してあげるのは僕で、その為に捕まえてきたのだからわざわざ相手にそれを口に出して宣言したりはしない。なのに殺すつもりの相手からその言葉が飛び出すとは、……僕は堪らずうっとりと笑ってしまう。  馬鹿にしている訳じゃない、本当に、心から目の前のこの青年が可愛く、愛しかった。僕に殺される事位分かっているだろうに、まさかただの強姦だけで終わると過信しているのか、その無意識の余裕故の反抗なのか。  今迄の相手ならどこかで僕の狂気の目指す先に気付き、そのせいで皆諦めに力を抜いたのに。  ……可愛い過ぎる。そう思う気持ちに初めて確かな感情がこもるのを、僕は自身で楽しんでいた。示すであろう甘く可愛い反応を想定した上で吟味し選んできた獲物に対して、実際に感じる「可愛いさ」は、どこか作り物めいていた。ベールを掛けた様に、幾らでもある玩具を手にした様に。  脅えた目、恐怖に竦む体、次第に本能的に暴れ、拒絶を全面に押し出して叫ぶ――詳細は違えど、結局は皆同じ反応なのだ。早くから泣きじゃくるか、耐える様に悲鳴を呑み込むか、僕の反応を窺いながら刺激しない程度に毒づくか。そんな些細な違いを見せるだけで。  僅かな個別性は強姦に色を付ける程度の愉しみとしか、思えなかった。僕の真の目的は、相手を殺し、その体を本来のその持ち主に最も相応しいと思う姿にし換え、それをいつ迄も自分の手元に置く事。  犯す時よりも、殺す時の方が断然気持ちがいい。更に言うと、殺した後、動かない体を手にした時の方が一番に興奮する。と言っても、この時の興奮には性的な意味は一切含まれない。  ……言っても、きっと誰にも理解されないと分かっている。だから、僕は生きた人間とは付き合えないのだ。自分の身の置きどころ位、わきまえている。  感謝の気持ちを、殺した相手を死後も愛し、その外見を最大限に綺麗に保つ事で表しているつもりだ。世間では普通、こんな風に自分の欲求を叶える事なんて出来ない人の方が多いのだから。僕は恵まれてる、そう思うと僕の「人形達」が更に愛しくなる。彼等なしで、僕は生きてはいけない。  容易に成し得てしまえる一方的で威圧的な服従をしか、僕は知らない。けれども今。  僕を報復に燃えた生き生きとした目で睨む相手の迫力は、溢れる生命力は、初めて「生きた人間」の瑞々しさでもって僕を夢中にさせている。無理だと無意識が早くから自分に期待する事を封じていただけの、本当は自分に返して欲しいと思っていた、力強い程の対等さで全力で嫌悪を憎悪を僕にぶつけてくれている、怖じ気のない反応。要するに僕は今、心の奥底から嬉しくて堪らないのだ。  ……僕はこの青年を殺せない。殺せない、どころか、僕を憎んでしかいない筈の相手に、どうやってか僕は僕を好きになって貰いたい、とか無謀な事を望もうとしている。  やっと出逢えた運命の相手、そう思う程に僕にとってこの青年は、気高く崇高な存在なのだった。体だけしか僕のものじゃない、侵せない神聖なひと。  どうやったら、心毎僕に振り向いてくれるんだろう……。  青年の、僕に対する燃える様な憎悪の念は、今はひとまず鎮火している様だった。それでも今迄誰しもが浮かべていた敗北の色は一切その顔には現れず、ただ疲労の為の小休止、そう思わせる緊張感がまだ体を包んでいた。  どう接すれば、牙を剥かれずに済むんだろう……ぐったりと身を投げ出した、目を閉じて顔を僕から反らした青年に、僕は迂闊に近付けずに居る。  相手の示す言動を想像して怖くなるなんて、初めての事だ。今の今迄、そんな事態になる前に相手の命を消してきたから、僕はきちんと誰か一人の人間に向き合った事がない、のだ。経験のない僕には、ここが正念場になるだろう。  恐い。だけど、こっちを向いて欲しい。僕を見て欲しい。声を聞かせて欲しい。罵りではなく、嘲りでもなく、……ああ違う、そのどちらでもいい、どんな言葉でも態度でもいいから、僕を見て、僕と対等に喋って欲しい……。  不可解な思いのままに何かが、腹の底から突き破る様な激しさを伴って僕を突き動かした。勢いに任せて乗り上げる様に青年の体に体を重ね、向こうを向いた顔に自分の顔を寄せ、唇を捕まえていた。  噛まれても構わない、むしろ噛みつかれでもした方が、僕を認めてくれた様に思えて嬉しいかも、そんな期待すら持っていた。必死で顔を逃がそうとするだけの、抵抗にもならない抵抗しか出来ない青年の唇を味わって……僕は、初めて自分を狂おしく掻き立てる訳の分からない熱に、戸惑いと興奮を感じていた。  荒々しく唇を重ねながら、伸ばした手で青年の両手を括っていた紐を解いてやる。自分にだけ有利な状況なんて、フェアじゃない――それは今迄の僕の全ての在り方を真っ向から否定するもので、僕が青年を尊重したいと考えた現れなのだけれど。  自由を取り戻した手は、直ぐには痺れや強張りに動かせないのだろう。もどかし気に青年の体が僕の下で蠢いて、重ねた唇の隙間からこぼれる堪えた声も甘く、僕はそんな相手にまた愛しさを覚えている。可愛い、愛しい……僕のもの、僕だけのもの。  ゆっくりと唇を離して、僕は囁いていた。 「……名前は……?」  勢いよく目が開かれた、瞬時驚きが勝った目はけれどもすぐに、警戒を貼り付けて鋭く僕を睨む。乱れた青年の髪をそっと撫で付けて、僕はもう一度、同じ質問を口にする。 「名前、は……?」  言うまい、と決めたらしい強い意志が、僕に伝わった。動かせる様になった手をようやく有効に生かし、青年は僕の肩口に固めた拳をぶつけ、僕を押し退けようとしている。ただ彼のその動作にはどこか戸惑いが漂って、どこ迄本気で嫌がっていいものか決め兼ねる弱さが先に立っていた。  愛しい、そう思う僕の表情はそんなに優しい顔を作っているのだろうか、更に困惑した様に青年の手が止まる。  油断した唇に、また唇を押し当てる。反応、感触、共にやっぱり甘いそれに、僕は溺れてしまいそうだった。 「……」  ほら、今。心から彼の名前を呼びたかったのに。大事に扱いたい、ずっと傍に居て貰いたいこのひとを、ちゃんとしたこの人の名で呼びたい――しつこくも、僕は繰り返している。 「教えて。名前……」  言葉を紡げるだけの隙間を残して、でも可愛い唇には触れていたい、ぎゅうっと密着させた体の圧迫からも、僕が甘い気持ちで迫っているのは相手にも充分知れている筈だ。だからこその困惑なのか、逃げる事を今は選択していない相手は、無言を通すつもりなんだろうけど。 「な・ま・え」  追い詰める気はない、いたぶる気でもない、純粋に僕は今、楽しんでいるのだ。ついばむ様に、じゃれる様に相手の唇に触れて。張った虚勢が剥がれかけてきた相手の反応を感じながら。 「ねえ。なま」 「こうさかっ、あきとっ!!」  僕の言葉を掻き消す様に、青年が声を張った。うるさい、とかしつこい、とか、時間稼ぎの逃げ道はあった筈だ。だけど結局折れるのなら間のごちゃごちゃしたやり取りは必要ない、とでも考えたのか、潔い程にあっさりと相手は答えを僕の前に転がしてくれた。 「あきと。……あきと」  脳の深い部分に刻む様に、その名を大事に口にする。あきと。可愛いひと。僕の大切なひと。僕のもの。僕の、あきと。 「あきと……」  僕が呼ぶ名前に込めた重さに気付くのか、紅く頬を染めて警戒を深める青年は、絶対に僕を見ようとしないのだ。初めての屈服を見せた愛しいこのひとは。 「あきと……僕は、|上條凱樹《かみじょうよしき》」  自分の名前を自分から他人に明かすなんて、学校以来には産まれて初めての事だった。これ以上はない位に強く抱き締めた相手に、僕は囁きを続けた。 「よ・し・き。呼んで、あきと……」  終わったと思った強制がまた繰り返されると知って、あきとが目を見開いて僕を見ていた。くすりと笑いをこぼして、僕はあきとの唇に触れながら、あきとの頬を撫でた。 「呼んで。あきと」  ……申し訳ない事に、僕は今迄自分の欲求を途中で曲げた事はないのだ。諦めた様に目を伏せた相手は、実に可愛いくて。何故嫌がらないのか、その理由を過信する気はないけれど、自分に都合のいい方に解釈する気もないけれど。 「あきと……」  こんなにも愛おしい気持ちを覚えた相手は、初めてだ。何が、今迄の玩具達と違うんだろう。真っ直ぐに僕を射る目? 馬鹿正直に歯向かってきた態度? それとも、単なる相性的なもの?  ……分からない。分からないけれど――僕はこの人を手放す事はないだろう事だけは、確実だ。例えどんなに手酷い裏切りや仕打ちをしてきたとしても。絶対に。 「……あきと……」  今度は折れる気はないのか、目を瞑って、彼は無視を決め込んだらしかった。呼んだって呼ばなかったってどうせやる事は同じだろ、そう言いた気な、緩く開いた歪められた唇。  全部を投げ出した訳じゃないらしい。当面嫌がりはしていないだけで、どうやってもまだ僕に心を近付けてくれてはいない、手に触れていられるのに、手に入らないひと。  だけど、構わない。時間なら飽きる程あるし、何より気の長さと執着心と鈍感さだけは、僕は他人より勝っていると思う処だ。誰かの気を自分に向ける、だなんて、経験した事のない楽しみだ、わくわくする……。  あらゆる意味で僕を掻き立てる、『こうさかあきと』としての相手を、僕はまた一から味わう気で居る。あきととして僕の手に触れる彼の肌は、名前のなかった先程よりもしっとりと僕に吸い付く。あきとと知った唇は舌は、先程以上にとろける様な感触で僕を上ずらせる。 「あきと……あき、と……」  もう、無理に促しはしない。僕のしつこさが、その内彼の口を開かせるだろう。よしき、誰かが僕をそう呼ぶなんて、10年位振りかも知れない--今から彼にそう呼ばれた時の感激、嬉しさなんて、掻き抱いた彼を締め殺してしまうかも知れないけど。  甘い唇、甘い肌。僕の制御のない欲情を刺激する、狂った僕から更に理性を奪う、気持ち良く僕を昇天させる、底無しの蜜……。

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