6 / 6

6ページ

「ふぁぁあ。」 欠伸が出た。隣でコタがつられて欠伸をする。ホテルじゃ気は休まらなかったし、昼ごはんを食べたばっかりだ。コンビニの駐車場を出て、しばらく行った所で組織に指定されたコインパーキングに入ったらしく、車が止まる。すっかり慣れた動作でコタを椅子から降ろす。 「俺は後から行くから。気をつけろよ。」 「うん。分かった。」 ヒロと別れ、コタと手を繋ぎ、事前に言われた道を通って引渡し場所へ向かう。監視カメラや人の目に付かないルートなので、ぐにゃぐにゃと入り組んでいる。細い路地を出ると、約束の公園につく。公園の広場の時計は13:55を示していた。 「コタ、あそこに時計が立ってるだろ?」 「うん。」 「向かいのあのベンチに座ったら時計が見えるから、2時になったら、あっちの入口にある交番に行きな。分かった?」 「うん、分かった。」 俺はしゃがみこんで、コタと目を合わせる。 「公園の中は交番から見えるから、俺は公園には入らない。ベンチまで気をつけて行くんだぞ。何かあったら大声で叫べ。お巡りさんが助けてくれる。」 「分かった。」 「俺らの事は誰にも話すなよ?警察に話したら、俺たちの組織が、お前も両親も殺しに行くからな。」 「うん。大丈夫。」 俺を見たコタがニコッと笑う。こいつ、かわいいんだよな。離れるのが少し寂しい。 「……じゃあ、まぁ、元気でな。」 「うん。バイバイ。」 コタが小さく手を振る。俺は背中を押してやった。 「何かあったら大きな声出すんだぞ!」 「うん!」 トトトっと小走りでベンチに行き、腰掛けるコタを公園の外の木に寄りかかりながら見張る。公園の広場では、コタより少し大きい少年たちがサッカーをしているのが見える。しばらく見ていると、2時になったのかコタが立ち上がって歩いていき、交番の前の警官に声をかけている。 「もう行ったか?」 振り向くと、ヒロが立っていた。自販機に寄ったのか、手には缶コーヒーが2つ握られている。 「遅せぇよ。2時の約束だろ。」 「大丈夫だったか?」 「ああ、交番入っていった。」 渡された加糖の缶コーヒーは温かい。緊張していた身体から力が抜ける。 「帰るか。」 「ああ、帰ろう。」 元来た道を、ヒロと歩いて車に戻る。途中でヒロの手を掴むと、ギュッと握り返してくれた。監視カメラの無い道だ。人通りも無い狭い道、男同士で手を繋いでも気にする事は無い。これから事務所に戻って車を返して、今回の仕事はお終い。久しぶりの助手席に乗り込む。 「さて、行きますか。」 「うん。」 ヒロがエンジンをかける。今から戻れば、いつものスーパーで夕飯の買い出しが出来るだろう。 「あー、今日、鍋食いたいな。」 「いいな。」 「何鍋にする?俺、キムチ鍋がいい!」 「じゃあ、キムチでいいよ。」 二人だけを乗せた車は、俺たちの街へと出発した。 (終)

ともだちにシェアしよう!