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第27話 ディッセン・アルーバの暴走
「これから祝福の義式を始めます。選ばれし12人の勇者は身分の高い順から神子様にご挨拶を申し上げ、祝福を授けて頂きましょう」
はー、祝福じゃなくて、いっそのことキスって言っちゃえばいいのに めんどくせーな。
「その前に皆様に、一つご報告があります。一番初めに行われる魔物討伐は土属性の魔物に決まりましたので、ラリー殿下と私が先に神子様より魔物討伐のための密契の儀式を賜りました」
勇者達は色めきだった。
「なっ?!もう密契の儀式を済ませてるだと」
「は?何いってんだ?」
「やっぱり抜け駆けしたのか、あの嘘つきめ」
みんな殺気立って、ラリーとエイプを睨みつけてる。
「静粛に!討伐が控えている為、本日の祝福の義の後、土属性の弓の名手シューライ・ショーカ様と、木属性のマーチは密契みっけいの儀式を行うためこの場に残っ下さい」
本当に俺、抱かれないよな
………ん?
さっきエイプがなんか変なこと言ってなかったか?
「おい、エイプさっき変なこと…」
「それでは神子様、祝福をお願いします」
「チッ!エイプ後で話がある」
「はい、後でお部屋に伺います」
このっ!!涼しい顔で笑いやがって!後で覚えてろよ。
ラリーとエイプを除いた勇者が一列に並んでキスを待っている。
うへぇ、嫌だなぁ。
「み、水属性、フ、フェリス・オークトです。ああ、あの、ま、魔道士です。お、お、お願いします」
何だこいつ、キョドって…オタクぽくて……坂井を思い出させるな。
はー、めんどくせーな。
とりあえずエイプに言われたとおりにセリフを言うか。
「…宜しく頼む」
近づいてきた紫の髪の男の頬に祝福のキスを授けた。
「「?」」
エイプと紫頭の二人は変な顔をしている。
何だよ。変な顔して、これで良いんだろ?
「オークト様、神子様はお恥ずかしいようです。ご自分で受け取っていただけますか?」
はぁ?恥ずかしいってなんだよ。
「は? は、はい。し、失礼します」
紫頭は俺の頬を両手で包むと、ぶちゅーっと口にキスしてきた。
「んんんっ!!…んはぁっ…なにすんだっ!」
「う、うわあ!」
紫頭を思い切り突き飛ばして、文句を言うと次の勇者がすぐに目の前に立った。
「荒っぽいな…水属性、魔法剣士 ガストー・サオマです。お見知りおきを」
「ちょっ待てよっ、ンンンーー!」
強制的にキスさせられるのに我慢できなくて、コイツも突き飛ばそうとしたのに身体が硬い筋肉で覆われてて、押しても叩いてもびくともしない。
「…っ……はぁっ…」
「………」
青頭は汚いものに口を付けたみたいに手の甲で口を拭って後ろの男と交代する。
ガチのキスじゃねえか!! 冗談じゃない話が違うぞ。
「っ、エイプ話が……うぶぅっ!!」
次から次へと流れ作業のように唇を奪われていくうちに、腕に力が入らなくなってされるがままに。
「っ………はぅ…いや…んんんんんんっ!!」
いやだ………やめろ。
身体の力が抜ける……それに………さっきから………
尻が…濡れて………気持ち悪い。
…頭もクラクラして…きた…キスのしすぎ………酸欠か?
腕も上がらない。
「火属性、剣士 ディッセン・アルーバ、宜しく頼む」
赤い髪のディッセン・アルーバが俺の顎を持ち上げて触れるだけの軽いキスをした。
何?……もう…終わり?………助かった………。
「す、ごい…」
一言漏らすとディッセン・アルーバは俺を強く抱きしめて再びキスする。
「ううううぅ💗うううんんん💗うんうんううん!!」
最初の軽いキスとは違い、舌を絡め口の中を隈なくなめまくり唾液を吸い出し喉を鳴らして飲み込む。
食われるような恐怖を感じるような、めちゃくちゃ濃いディープキスを繰り返し………
放せっ殺す気かっ!
「ぅんんんんんんーー💗」
「兄様っ!!」
「離れろ、ディッセン!!」
キスに夢中になって暴走したディッセン・アルーバをエイプともう一人の男が引き離す。
俺はエイプの腕の中でぐったりと身体を預けた。
「わあああっ!!神子様っ!!」
「神子様がっ!!」
「神子ーーーっ!!」
うるさい男どもの声が小さくなっていく………
やがて聞こえなくなった。
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