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第102話 ヤバイ
凱旋パレードが正午からスタートした。
王国を取り巻く全ての魔物を倒した勇者達の為、国を上げての凱旋パレードに国民達は大盛り上がり、魔法学園の門を開けただけで大歓声だ。
勇者達が乗り込むのはこの日の為に特別に用意された4人乗りのオープンタイプの馬車だ。
1台目は貴族勇者の馬車 ジュン・ローガックス、シューライ・ショーカ、ガストー・サオマ、セプター・バンテールの4人が乗車。
2台目は神子と位の高い勇者の馬車 ラリー・トゥー・フェイブ、エイプ・フリーレル、俺が乗車。
3台目は平民勇者の馬車、アリージャ、メイゴ、マーチ、フェリス・オークトが乗車することになった。
貴族のフェリスが平民勇者の馬車に乗るのは、アリージャが俺を後ろから攻撃することがないように監視役として同乗することになったからだ。
魔法学園の門から出ると沿道には国民達が一目、勇者達を見ようと詰め掛けて、小さな旗を振ったり、手をふって口々にみな感謝の言葉を言っている。
そして俺は一人高い位置に用意された椅子に座り、エイプの魔法で強制的に国民達に笑顔で手を振っている。
ちくしょう、手がもげそうに痛いっっ
早く終わってくれよっっ!!
パレードルートを半分くらい進んだ頃、問題が起きた。
3台目に乗っているマーチが急に立ち上がり座ろうとしない。
馬車の周りを並走している騎馬兵からも座るように言われているのに頑として座らない。
はっきり言って神子の俺よりめちゃくちゃ目立ってやがる。
観客たちは ざわざわとどよめいていたが沿道から大声の声援をかけられて、マーチはやっと大人しく座った。
マーチが悪目立ちするというハプニングはあったものの、アリージャは暴れず、魔法学園まで無事に戻ってくることが出来た。
馬車では一段高い場所に座っていた俺は下に座っていたラリーが降りてからじゃないと降りれない。
従者が馬車に駆け寄り階段を設置しながらラリーに労いの言葉をかける。
「お疲れ様です。ラリー殿下」
「はは、国民の喜ぶ顔が見れてよかった」
「はい、ラリー殿下のご尊顔を拝することが出来て国民もさぞや喜んだことでしょう」
「そうだな。あと残るは御子だけだ」
目と鼻の先にいるんだ聞きたくなくてもラリー達の会話が聞こえてくる。
何が御子だけなんだ? 御子ってなんだよ。
エイプが俺の為に手を差し出してエスコートをする。
「神子様、お手をどうぞ」
「はい💗」
ずっと振り続けていた腕は乳酸が貯まってパンパンに腫れて疲れているし、動かすのもしんどいが命令されれば俺の意思に関係なく身体は命令通りに動く。
早くこの魔法を解いてくれよ。
「(あっ!)」
急に俺の腹が熱くなって模様が光り出した。
なんだこれっ?!
またエイプがなんか魔法をかけたのか!!!
ヤバイ、頭がくらくらする。
ヤバイヤバイ、どんどん視界が狭まってくる。
ヤバすぎる!!これ…立ってられない。
俺は目の前にいたエイプの胸の中に倒れこんだ。
薄れゆく意識の中、エイプが俺を抱きしめて嬉しそうに何か叫んでいる。
なんて言ってる…意識が朦朧として聞き取れない……
「ああっ!!やっとついに神子様の××に××が×××ました!!」
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