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第95話・我慢⭐︎
下半身が苦しそうなのにも関わらず、落ち着いた様子の杉野が蕾に触れる。
「入れますよ」
「ん……っ」
濡れた指が一本、ツプリと侵入してくるのを感じた藤ヶ谷はシーツを握りしめ皺を作った。
「藤ヶ谷さんの中、あったかいです」
「じ、実況禁止……!」
潤んだ瞳で睨みつけ、釘を刺す。
杉野は素知らぬ顔で指を体内で動かし、内壁を広げるように探った。
するとある一点を掠めた時、藤ヶ谷は体に電流が走ったかの様な痺れを感じた。
「あっそこ」
「ここ?」
「ひぅんっ」
指が意思を持って藤ヶ谷の良いところを叩く。
自分でも触ったことのあるソコは、藤ヶ谷が最も快感を得やすい部分だった。
杉野の長い指は、藤ヶ谷がするよりも余裕をもって刺激を与えてくる。
「……っ、ん、……ぁ、は」
「気持ちよさそうですね」
「……っ!?」
予告なく2本目の指が入ってきて、藤ヶ谷は思わず杉野の逞しい肩を掴んだ。
2本の指が開いたり閉じたりして内壁を押し広げながら、藤ヶ谷の敏感なところを挟む。
「す、すぎの……っ」
慣れた場所なのに、杉野が触ると与えられる快感の大きさが違って感じる。
いつもと違う場所なのではないかと錯覚して首を左右に振った。
一度達した藤ヶ谷の中心はたちまち芯を持って持ち上がり始める。
「あっ……しらない、これ……!」
「可愛い反応、ありがとうございます」
杉野は満足気にグチュグチュと淫靡な音を立てながら、敢えて藤ヶ谷の呼吸に合わせずに擦り上げていく。
予想できない動きで弱い部分を追い上げられている藤ヶ谷は、足をバタつかせて腰を引こうとすらしている。
しかし、うまく抑え込まれて更に指の動きは強くなった。
「ぅああっ……それ以上したらまたっ……やだ、今度はいっしょがいいっ」
両肩に爪を立てる藤ヶ谷の健気な声に対し、杉野はあやすように鼻先に口付けた。
「何回でも気持ちよくしてあげます。大丈夫。見せてください、イくところ」
「も、ヤだってぇ……っぁあああん!」
必死の訴えも虚しく、藤ヶ谷は体を丸めて精を放った。
脚の間にある杉野の胴を強く締め付け、内壁は指に吸い付いて蠢く。
薄らと浮かんでいた涙が、頬に一筋流れた。
「は、……ぁぅ……」
多幸感を乗せた吐息を吐きながら、力が抜けてベッドに背中の全面をペタリとつける。
頬を紅潮させているものの涼しげな目元をしている杉野を、乱れた呼吸と共に呼ぶ。
「すぎ、の」
「なんですか?」
「お前は余裕そうで、ずるい」
自分の方が年上なのに、経験の差を突きつけられているようで唇を尖らせる。
藤ヶ谷の額に張り付いた髪を横に流してくれていた杉野の眉がピクリと反応した。
「余裕?」
「ゃぅ……!」
心外そうな声が聞こえ、再び後孔のナカの指がバラバラと動きだす。
「ないですよ。気持ち良さそうな藤ヶ谷さんを見てるだけで、イきそうだ」
「……っんぁ」
指が3本に増え、藤ヶ谷の内部はどんどん柔らかくなって受け入れ体勢を整えられていく。
杉野は耳、首筋、胸、腹と順番に、温かい手のひらを下ろしていった。
「でも、やっとこうして抱けるんだ……ゆっくりあなたを感じたい」
「すぎの……っ」
うっとりと唇に弧を描く杉野を見て、胸が締め付けられる。
約2年間。
本当にそうだとしたら、藤ヶ谷が悩んだ時間よりも相当長い時間だ。
(ずっと、我慢してたんだ……なのに、俺……)
知らぬこととはいえ、自分の杉野に対する態度に罪悪感が押し寄せてくる。
今もそうだ。
杉野は優しく言ってくれるが、おそらく藤ヶ谷に合わせてペースを落としてくれている。
それを、血管が浮いてはち切れそうな杉野の中心が物語っていた。
(杉野が我慢しないで動いたら……俺、どうなるんだろう……)
アレが中で暴れると想像すると怖いものがあったが、好きな人にこれ以上我慢を強いたくない。
藤ヶ谷は体を這う杉野の手に自分の片手を重ねた。
「すぎ、の。優しいのも良いんだけど」
ギュッと手を握り締め、小さく息を吸う。
耳を傾けてくれている、熱を帯びた穏やかな瞳をじっと見上げた。
「俺、もうお前が欲しい」
顔が熱い。
どうか頷いてくれと願うが、やはり杉野は首を縦に振らなかった。
「藤ヶ谷さん、まだ」
「お、俺!」
断ろうとする杉野を藤ヶ谷は遮る。
オメガとはいえ同じ男だ。
どうしたら杉野の理性に勝てるかを頭の中で必死に考えた。
「我慢してないお前が、見たい……っ」
藤ヶ谷は自分で膝裏を持つと、大きく開いて臀部を持ち上げる。
その拍子に杉野の指がズルリと抜け、濡れそぼった孔からローションが背中に垂れていく感覚に目を瞑る。
(これ断られたら恥ずかしくて消えそう……!)
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