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第97話・夢見心地★
杉野はベッドに落ちてしまっていた藤ヶ谷の両足を肩に抱え上げた。
そして避妊具の上から濡らした中心を、柔らかくなっている入り口に再び充てがう。
「すみません、さっきは一気に行き過ぎました」
「へ……っぁあ」
何が起こったのか分からないまま、ジュプン、と先端が入った。
そして、先端のみを出して入れてという動きを繰り返す。
襞が捲れ、そこからじわじわと熱い波が広がっていく。
「我を忘れて、泣かせてしまった」
「ァっ……すぎの、……っ」
腰を揺らすと少しずつ奥に進んできた。
一度通った部分の圧迫感はほとんどなく、杉野は藤ヶ谷の好きなところを中心に往復して刺激してくる。
更には既に熟れ切った胸の突起を摘まれて、藤ヶ谷は快楽に飲み込まれていく。
「今後はないようにしますの、で……っ」
「ふぁあっ」
力を抜いた瞬間に、一気に杉野の腰が進んだ。
奥を突かれる振動で、藤ヶ谷の体は大きく跳ねた。
腹が苦しく、熱い。
だが先ほどのような恐怖感はなく、杉野が押し付けてくる欲望に内壁は喜んで絡みついている。
「ぁっ……ぁ……」
「全部、入りましたよ」
「んぅ」
耳元で深い声が囁く。
すぐ傍で呼吸を感じながら耳に歯を立てられ、藤ヶ谷は身体を回る血液の流れが早くなるように感じる。
愛に溢れた目で見下ろしてくる杉野に、恍惚とした表情を向けた。
「腹が、すぎので、いっぱい……」
想像力の及ばないほどの幸福感に、さっきまでは何故あんなに怖かったのかと不思議に思うほど。
夢見心地の藤ヶ谷を、杉野は汗ばんだ肌を重ねて抱きしめた。
首筋に吸い付きながら、腰を回すように動かす。
「んっ……んっ」
時間をかけてじっくりと中を広げてくれるのは、杉野の愛情を感じて嬉しい。
しかし、じんわりと気持ちいいと同時に昂った身体には|焦《じれ》ったかった。
藤ヶ谷は杉野の両頬に触れ、至近距離で瞳を揺らす。
「す、杉野、もう大丈夫……だから、動いてくれ」
「無理しないでください」
「っゃ、ほ、んとに……、あぁっ」
喉元を甘噛みされ、杉野の腹筋が藤ヶ谷の中心を擦る。
体が揺れると、ゆるやかに奥へと振動がいく。
「ぅぁ、あんっ」
あえかな声が藤ヶ谷から上がる。
しかし、その程度ではもう足りなくなってきた。
奥への刺激も、敏感なところを擦る動きも。
もっと強くシて欲しい。
藤ヶ谷の頭は次第にそんなことでいっぱいになっていく。
「うご、いて」
「……っ、痛くしたくないので」
「たのむっ、ゆっくり、つらぃぃ」
与えられる緩やかな動きとは逆に、藤ヶ谷は意識的にナカの杉野の熱を締め付ける。
杉野の納得いくようにしてほしい気持ちと、めちゃくちゃにしてほしい自分の欲求が合わさって思考がぐちゃぐちゃになっていた。
「ぅ……っ上手、ですね」
「んっ」
息を詰めた杉野が、観念したように腰を引く。
そして、
「ァアッ」
熱を奥に強く叩きつけられ、身体に電流が走る。
求めて止まなかった律動は、期待以上に激しい。
遠慮なく突き上げられ、迫り上がる悦楽に藤ヶ谷はひたすら声を上げた。
「ひ、ぁぁあ!ソコ、……っうぁ、あ」
「大丈夫、ですか?」
「ん、やだ……っおれ、やっぱむり、やぁあっ」
痛くはない。
苦しくもない。
思考も何もかもを持っていかれるような初めての経験に、体も頭もついていかないだけだ。
藤ヶ谷の中心が芯を持っていることが、それを示していた。
「すみませんが、今回はもう本当に……っ」
余裕がなさそうに見える杉野にも、藤ヶ谷が快楽に溺れているだけなことが伝わっているのだろう。
「止まれません」
「……ぁっ」
指先で涙を拭ってくれながらも、宣言通り止まらずに中を抉ってくる。
藤ヶ谷は何も出来ずに揺さぶられ、脳は甘美な欲に溶けていく。
だが自分の体ではなくなるような、今までにない状態に恐ろしくなり杉野の胸に縋る。
「すぎの、すきっ……すきって、いって」
「大好き、です。今までも、これからも……っずっと愛してます」
真っ直ぐな言葉に藤ヶ谷の恐怖心が解れていく。
杉野は両手とも指を絡め合わせ、しっかりと握った。
唇を合わせて呼吸が出来なくなるほど深くキスをしてくれる。
「んぅっ……はぁ、ん」
訳がわからなくなりながらも懸命に、藤ヶ谷は意識を保った。
僅かに唇が離れた瞬間に、杉野の顔を見る。
その瞳に自分だけが映っていることを確認した。
今までずっと隠さなければならないと勘違いして言えなかった言葉を何度も繰り返す。
「すき、すきぃっ……すぎのぉっ!」
「俺も、好きです」
「……っも、イくっ」
込み上げてくる波に耐えきれなくなり、足先をピンと張る。
杉野も同じく限界が近づいてきていた。
これ以上は無いと思っていた藤ヶ谷の最奥を突いて追い上げる。
「一緒に、イきましょう、ね……っ!」
「ぁっ……ぁああああっ!!」
藤ヶ谷は極快感に頭が真っ白になり、一際高い声を放って果てる。
痙攣する体内で蠢く内壁は杉野を絶頂へと導いた。
お互いに汗ばんだ手を握り直す。
すぐには動くことが出来ないまま、吐息を重ね合った。
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