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番外編・クリスマス・リベンジ(中編)★

「んっ、……んむぅ」  藤ヶ谷は絨毯に座り込み、ベッドに座る杉野の剥き出しの下半身に顔を埋めていた。  熱い先端を口に含み、懸命に唇でくびれを刺激する。  先走りが溢れてくる溝を舌で舐め取っていくと、口に独特な味が広がっていった。  唾液が垂れて滑りやすくなった竿を手で擦すれば、ピクリと杉野の腰が震えるのが分かる。  ソファ、絨毯、ベッドはさまざまな種類のピンク色。  壁にたくさんの造花が飾られている部屋は、ツリーと同じく前回来た時と同じだった。  入ってすぐは、前に寝てしまったことを杉野に指摘されて苦笑いすることになったが。 「あの時、藤ヶ谷さんの寝顔をおかずに抜いてしまいました。すみません」  などと律儀に謝られてしまっては。 「今日は俺がちゃんと気持ちよくするから!」  と、同じ男としては気合を入れるしかないだろう。  宣言通り、ご奉仕中、と言うわけだ。  藤ヶ谷の動きに合わせて、杉野の呼吸が荒くなるのが音や腹の動きから伝わってくる。 「……っ、藤ヶ谷さん、もういいです、よ」  短く息を吐いたか思うと、頭を撫でる手が止まって離れるように促してきた。  しかし、藤ヶ谷は言うことを聞かずに、腿にしがみつくようにして中心を強く吸う。 「っ……!」  目線を上げると、杉野の眉が顰められている。  頬が紅潮して色っぽく、胸が高鳴った。 (気持ち、よさそう)  口がいっぱいになっていて、顎が痛いが構わない。  唾液と先走りが混ざって淫らな水音が立ち、杉野が息を詰めて腰を引こうとする。 「く……っもう、イ……っ」  掠れた声が限界を訴えてきたところで、藤ヶ谷はパッと口を離した。 「……、藤ヶ谷さん?」  期待した絶頂が得られず辛そうな杉野が、切なげに見下ろしてくる。  自分を求めてやまない表情がたまらず、藤ヶ谷はうっとりと舌を出して不憫な中心を軽く舐めた。 「顎、疲れちまって」  当然、確信犯だ。  悪戯っぽい笑みに、杉野は肩で息を吐いて口の端を上げる。 「やってくれましたね、全く。覚悟してください」 「……ぁっ」 「もうこんなにしてる」 「だって、杉野……っ、エロいんだも……!」  舌を這わせているだけで興奮した中心をズボンの上から足で揉まれて腰を揺らす。  緩やかに持ち上がっていた藤ヶ谷のソコが、どんどん形を持っていった。  杉野にもソレが伝わっているらしい。 「エロいのはどっちですか」  そう言って目を細めると、器用に足がセーターの中に入ってきて肌を撫でる。  腹がモゾつくと共に、まだ隠れている後孔が、目の前にある杉野の熱を待ち侘びてひくついた。  藤ヶ谷は熱く硬いソコに頬を寄せ、喉を鳴らす。 「杉野……ヒート中じゃないし、ゴム無しでいけないか?」 「いけません」 「だよな」  どんなに煽ったって、初めてラットになった時以外で杉野が避妊を怠ったことはない。  真面目な恋人に唇を尖らせつつも、大切にされていることを噛み締める。  直接触れられなくなるのは惜しいが、藤ヶ谷はベッドサイドの棚に置いてあったゴムに手を伸ばした。  ローションでベタつくソレを杉野の先端に被せ、形に沿ってゆっくりと中心を覆っていく。  根元まできちんとできると、腕を引かれた。  促されるままにベッドに上がる。流れるように押し倒されそうになるのを制して、藤ヶ谷は杉野の膝の上に乗った。 「今日は、俺が上な」  杉野の襟付きシャツのボタンを外しながら額に口付けると、年下の番は大人しく頷き藤ヶ谷のセーターに手をかけた。  互いに上半身が裸になると、藤ヶ谷は膝立ちでズボンを脱ぐ。  その下から現れた面積の小さい赤い下着からは、もう藤ヶ谷の中心が頭を出していた。  扇状的な光景に怯むことなく真っ直ぐ見下ろす杉野は、腰骨のサイドにあるリボン結びの紐を引っ張った。 「相変わらず、挑発的ですね」 「好き、だろ?……っ」  スルリと下着が落ちていく。  問いかけを肯定するかのように唇同士が重なった。  様子見はせず、いきなり舌が唇の合わせ目から侵入してくる。 「……っふ、ぅ」  藤ヶ谷も自ら舌を差し出して杉野を招き入れると、躊躇なく絡み合う。 「ん……っ」  脳から思考を奪っていくような口付けを交わしながら、藤ヶ谷は勃ち上がっている杉野の中心に片手を添えた。濡れた先端を窄まりに当てがい、腰を沈めていく。  先端を難なく飲み込んだが、甘い息を溢した杉野がハッとして腰を抑えてくる。 「……っ、解さないと」 「待ち合わせの前に……っしてきてる、から」  藤ヶ谷はそう言って、躊躇なく腰を落としていく。  いつも杉野はじっくりとほぐしてくれるが、今日を楽しみにしていた藤ヶ谷は自分がその間に耐えられなくなるのを知っていた。  すぐに挿れて欲しくて、準備は万端にしてきたのだ。  その甲斐あって、もう慣れ親しんだソコは半分ほどまで収まっている。 「そんな状態でずっと隣にいたんですか」 「へ……っ?」  低い声が聞こえたかと思うと、腰を掴んでくる手に力が篭る。  そして、勢いよく奥まで貫かれた。 「ひぁあ!」  甲高い声が上がり、背筋にビリビリと電流か走る。  衝撃で目が潤む。  藤ヶ谷は慌てて杉野の肩に手を置いて、腰を上げようとした。 「ば、ばか……っ、でもゆっくり……ぃあぁっ」  しかし藤ヶ谷のペースに合わせることなく、杉野は激しく何度も突いてくる。  腰が跳ね背を逸らした時、藤ヶ谷を支える手が腰から胸に移動した。 「ゃっ、そこ……っ」 「好きですね、ここ」  親指で胸の突起をクリクリと両方ともこねくり回され、素直にあえかな声を出す。 「んっ……もっと、強くぅ」  要望通り。杉野は親指と人差し指で摘み、きゅっとテントの形になるように引っ張った。 「は、ぁんっ」  惜しみなく与えられる快感に、藤ヶ谷の唇は閉じることなく嬌声を届け続ける。  気を良くした杉野は、奥に硬い欲望を擦り付けながら愛撫を続ける。 「ぁっ……あっ」  心地よい刺激に喘ぎ、杉野へ向ける藤ヶ谷の瞳が蕩けていく。  だが、その目が突如見開かれ雫が零れ落ちた。 「ひ……っ、ゃああ」 「藤ヶ谷さん、かわいい」 「ふか、ふかすぎ……だめぇっ」  胸を触り始めてから緩やかだった杉野が、再び強い律動を開始したのだ。  逃れようにも、もう膝が上がらないほど藤ヶ谷は感じ入ってしまっていた。  重力に任せて、奥のモノを腹に収めておくしかない。 「い、いく……っも」  迫り上がってくる感覚に、縋るものを求めて杉野の頭に抱きつく。  息苦しいはずの杉野はそれを退けようとはしなかった。  そのまま最奥を、音が鳴るほど突き上げる。 「んぁああああっ!」 「、ぅ……!」  藤ヶ谷が遂情すると同時に、中心を強く締め上げられた杉野も果てた。  がくりと力の抜けた藤ヶ谷の身体を、杉野はしっかりと抱き留める。  互いの息遣いだけが鼓膜に届く。  藤ヶ谷は恍惚としながら杉野の肩に顎を乗せ、耳元に濡れた唇を寄せた。 「すぎの……」 「はい」 「ん、とな。大好き」  胸にいっぱい詰まっている気持ちを言葉に乗せると、表情は見えなくとも杉野が微笑む気配がした。  抱きしめ直されたかと思うと、ごろりと体勢が変わる。桃色のシーツに背中が着地した。  見上げた杉野の優しい目からも、藤ヶ谷への隠す気のない愛情が溢れ出ている。 「俺も、愛してます」  その後は言葉もなく見つめ合い。  どちらからともなく、唇を合わせあった。

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