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第17話 ギョクとゼフラ③
【Side:ギョク】
ハルは俺の妃となり、王子を産んだ。王位継承権のある攻めの王子だ。
だがその王子は次代の守護者だった。それゆえに王位継承権は与えられなかった。
けれど、それでいい。神が遣わした守護者でもあり、そして王子として育てる以上、叔父の介入は許さない。早速面会を求めて来たが、ハルの身体の負担を考え断った。
そして次代の守護者についても、何かあっては困る。ハルのためにも。だから次代の守護者の祖父と言えど、過度な干渉ははね除けた。
それでいい。叔父には二度と、手は出させない。
「ギョク、見舞いの時間だ」
ロウが呼びにくる。そういや、ロウも運命の番を迎えたんだったな。めったに顔には出さないが運命の番を溺愛しているらしい。
ロウも幸せそうで何よりだ。
「……そうだな」
俺は俺で、ハルのためにしてやれることをしないとな。
だからハルのためにもできればそっとしておいてやりたい。けれど、冷遇妃だなどと噂が立てばそれこそ叔父が息子の保護だなどと、心にも思っていないことを主張し介入してくるかもしれない。
だから俺はあくまでも身体が弱く公務に耐えられないが、王子であり次代の守護者を無事に産む義務を果たした妃を離宮で静養させることにした優しい夫を演じなければならない。
まぁ、それに当たり、王妃の公務を果たす妃をもう一人迎えることが王室からの条件として突きつけられたが、それはそれでいい。
多分ハルは、これ以上は子を産むことはかなわない。王族の子孫を残さなければいけない以上、妥当な判断だ。
次期王太子は、叔父の手が加わらない家から選べば、確実に遠ざけられる。
「待たせたな」
ハルを静養させている離宮を訪れると、寝台の上で王子を抱いて起き上がっているハルがこちらを向く。
「陛下」
今はもう、兄さまとは呼ばなくなったハルが儚げに微笑む。出産も、ハルには負担だっただろうに。
でも、番とのたった一度のチャンスが欲しいと望んだ。
ハルの傍らには、顔を仮面で隠した獣人の男が控えている。
アイツも、名前も身分も変えたとはいえ、万が一にでも顔バレすると困る。ここに情報を流す者などいないが。
「体調は」
「お陰さまで」
ハルは無事に出産し、そして産後の状態も良好だ。高齢とは言え治癒魔法に長けた黒兎族の守護者と良質な薬草を仕入れてくれる蛇族がついているのだ。
そう言えば、黒兎の守護者も次代が産まれたのだったか。あちらもイルと同じく成獣とともに守護者の任を引き継ぐ。
黒兎と蛇族がいれば、ハルは今後も安心して療養できる。そして、運命の番の側にはいられる。側にいるのに、愛し合えたのもたった一回のチャンスだけ。触れ合いたくもそうはできない。けれど2人とも側にいることを望んだ。
「また来る」
「うん、イルに顔を見せてあげて」
イルは幼い頃はここで育てさせている。前世の記憶があるからか。普通は乳母に任せるのにな。ハルもイルの面倒をここで見ることを望んだ。
王子としての御披露目が済んだら、与える王子宮で過ごすことになるだろうが。それまで、イルと過ごしたいのだろう。
番にとっては決して父として接することができないが、それでも近くで成長を見ていられるならと受け入れた。
「王子として生まれても、雄性の竜人として生まれても、窮屈でしょうがない」
離宮を出て、天を仰ぐ。――――――俺は、何もできない。
「あら、だったら一緒にどうかしら?」
それは……今までにないほどの衝撃だった。
父上と母上も、そうだったんだろうか。守護者たちも、こんな衝撃とともに。
「ねぇ、ダーリンっ!私と繁殖しない?」
ぎゅっと首に抱きついてきたのは、2本の歪んだ黒い角の出たベールの下から覗く艶やかな黒髪に、瞳孔が縦長の金色のツリ目に美しく整った顔立ち。
そして括れた腰の下は蛇の尾であった。
「へび、ぞくか」
「そうねぇ、でもアナタの運命の番でもあるのよ!」
「それは……っ!」
俺にも分かった。彼が俺の特別だと。唯一だと。この身体の中にある獣か、それとも竜か、その血が訴えている。
「あぁんっ、今すぐ後尾したいっ!」
――――――なのに、何でこんなにエロエロなんだ。しかし、俺の股間がムラムラするのも事実である。
「おい、待て。まず俺は王太子だぞ」
離宮の外とは言え……さすがに不味いだろう……!
「あら、自分の国の王太子の顔くらい知ってるけど。私はゼフラ。よろしくねっ!それにアナタにはずっと会いたかったの!姿絵を見ていたらドキドキして胸の鼓動が止まらなくってっ。でも実際に出会ったら分かったのよっ!アナタが私の、運命だったってねっ!」
それは、そうだが……。本当ならばすぐに……いや、ダメだ。理性より先に、自分が王太子である事実が降りてくる。
「こんなところを見られたらっ」
「いいじゃない。ここには私の班の面々しかいないものっ」
はっ!?
そして彼の腕輪の影に見えた紋が目に入る。わざと、見せてきたのか。
「健気でイイコね、気に入っちゃった。それに仮面くんも。運命の番の純愛ってステキだわ。だって私たちもこぉんなに盛ってるんだものっ!アソコがヒクヒクしちゃうぅっ」
いや、何でアソコをヒクヒクさせているんだ。確か蛇族は生殖器が陰茎嚢のナカにあるんだったか。そして、俺が攻めならその運命は受け。蛇族の受けは、陰茎嚢のナカに挿入用の穴があるんだったな。――――――つまり、ふたなりである。
しかし……そんな風に誘われたらさすがに我慢できなくなるだろ……!さすがに……っ!!!
「んふふ。蛇族はね、最愛の番に邪眼は使わない。いいえ、効かないけど使わないの。本気の愛には必要ない。でも最愛のためなら惜しみなく使うの」
「……はぁ」
「だから命じてくれればいい。私たちはそのためにいるんだから。私のでびゅー戦は番のために大放出するって決めてたの!あっ。でもアナタの大放出は私のナカに、注いでねっ!」
そう言って俺の番は……陰茎嚢にぐぷっと指を突っ込んだ。ゆ……誘惑やめろぉぉぉっ!
「いやおいっ!せめて場所をわきまえろっ!」
お前の班のやつらもいるんだろうが!
「羞恥プレイもきっと楽しぃわぁっ!もう、発情しそうっ!」
いや本当にどうしてこんなに、エロいんだろう。
俺の番……ゼフラは。
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