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第2話 二人での仕事

翌日、俺と望月は古谷課長に呼び出された。 2人の顔がまともに見れない。 まさか自分があそこに居たことはバレていないと思うが、やはり気まずい。 用件としては、ある経営者への金融商品の提案を二人でしてほしいとのことだった。 大口客になりそうだったので、実績のある望月をメインにしつつ、俺の勉強のために一緒に仕事をと……いうことだった。 課長との面談が終わると、望月が話しかけてきた。 「他社もアプローチしてると思うんで、急ぎたいですね。今日、打ち合わせできます?」 「すみません、今日はこれから出かけるので、終業後になってしまうんですが……」 「俺はいいですよ終業後でも。用意はしとくので、30分くらいで済むかと思います」 「ありがとうございます。よろしくお願いします」 そう言って、俺はオフィスを後にした。 ♢♢♢ 帰社すると、他の社員は皆、退勤していた。 「すみません望月さん、残らせてしまって」 「いえ、俺も就業時間だと予定がいっぱいだったので。じゃあ早速始めましょうか」 望月の資料はやはり一味違った。 データは提示しつつも、相手の気持ちが動くような見せ方が上手かった。 顧客が関わる業界の情報や成功事例も具体的で豊富だ。 説明もたとえがうまく、素人でも実感できるイメージがもてる。 最初に指導を受けたときは何とも思わなかったが、経験を積んでからだとより望月の営業力の凄さがわかった。 「俺は提案は好きなんですけど、最初のアイスブレイクが苦手なんです。そこは早坂さんにお願いしますね」 「は、はい。そうですね。がんばります」 準備は望月におんぶに抱っこで、本当に自分の出番はアイスブレイクだけになりそうだ。 「早坂さん、腹減ってないですか?」 「ああ、そうですね。いい時間ですし」 「良かったら、今からメシか飲み、どうですか?」 あんなことがあって、一瞬戸惑ったが、指導係をしてもらっていた時も最初の一回しか飲みに行っていない。 最近はそんな話すら出てなかったので、行くことにした。 「じゃあ適当に通りに出ましょう。契約の前祝いとして」 前祝い…… まだ最初の打ち合わせしかしていないのに。 やっぱりデキる人間の発想は違うなと思った。

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