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第4話 オカマ
ピンポーンとインターホンの音が部屋に響く。
もちろん鳴らしたのはさっき電話で話していた相手だ。
「…おう」
「おうじゃないわ!!人が忙しい日に!!」
「五月蝿い、怪我人が寝てるから。」
「今から診るから、どっか行ってて。」
そう言って手を振りながら文句を言いつつ、そいつは少年のいる部屋へと向かった。
「ねぇ、どっか行ってと言ったはずだけど?」
「お前がこいつに変なことをするかもしれないだろ?」
「しないわ!!てか、お前じゃない。さくらよ。」
「はいはい、神宮寺 雅夫(じんぐうじ まさお)さん。」
「“はい”は1回!!雅夫じゃなくて、さくらよ!!」
「文句言ってないで、早くこいつを診ろ。」
「後でたっぷり文句を言ってやるわ…」
神宮寺は少年を診察しはじめる。
「この子すごく綺麗な顔してるわね。髪は綺麗な金髪だわ。」
神宮寺が奇妙な手付きで少年の髪を撫でるため、青柳は「一応、言っておくがそいつ男だからな」と睨みつけた。
「可愛くて撫で撫でしただけ。母性よ母性」
「男に母性があるか?」
「女よ!!!!…………あら、、、コレ何かしら?」
少年の首輪にはNo,027と記されているのに気づいた神宮寺は、顔を顰めた。
「こんな小さい子に…酷いことを」
少年の身体じゅうに注射の痕があるため、神宮寺は少年の血液を採取した。
「何かしら病気を持っているかもしれないからね…詳しい結果は後日」
診察が終わり、神宮寺は少年の傷の治療をする手をとめた。
「青柳…この子の足枷って外せる?ついでに首輪もやって。」
「おう」
切断工具を使い少年の足枷と首輪を外れると、金属の下にあった肌が見えた。長い間着けられたのだろう。黒く固くなった皮膚、擦り傷から膿んでいるところもある。足の裏、爪は剥れ傷だらけだった。
神宮寺は慣れた手付きで傷の治療すると、先に取り掛かっていた検査キットの結果を見た。
「この子、薬物、性病ともに陰性よ。取り敢えず良かったわね。栄養が足りてないから栄養剤を打っとくわ。」
「ありがとう」
「あら、青柳でもお礼を言うのね!!」
「五月蠅い、オカマ」
「オカマじゃない!!さくらよ!!私は忙しいから帰るわ!!その子が目を覚ましたら連絡ちょうだい!!」
「はいはい」
「“はい”は1回よ!!さよなら!!」
バタンとドアの音をたてて神宮寺は帰って行った。静かになった部屋には小さな寝息だけが聞こえ、少年の顔は少し穏やかだった。
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