58 / 94

第59話 営み

翔優は、まだ少年のあどけなさは残しつつ、高校生活を過ごすことで自尊心が高まってきた様子もうかがえた。 なのに、相変わらず僕に執着している。 今だって、立派に男の眼をしている。 翔優はのしかかってきて、僕の唇を吸った。 舌使いは下の時と変わらない。 いかにも気持ち良さそうなところを刺激するが、自分本位にしたいだけする。 最初に獣に躾けられたのだから、キスでコミュニケーションするなんて、わからないのだろう。 舐めたいだけ舐めて、息を荒くして、興奮しながら僕の体にも舌を這わせる。 僕の体も、律儀に反応する。 ようやくいつもの位置につき、翔優にとってお勤めなのか趣味なのか、の時間が始まった。 よくもまあ、毎回飽きずにやれる。 翔優の手が、尻の方に回る。 「……翔優……そっちは辞めよう。まあ、小説では散々書いてはいるが、尻が壊れたら日常生活に困るから。」 そう言うと翔優は残念そうに引き下がったが、欲求不満そうだった。 もう一度キスをしてくる。 さっきよりも舌の出し入れが激しい。 ここでも擬似的な性交をする。 いっそ、僕が女だったら話は早かっただろう。 リビングのソファで、唾液まみれにされた僕と、獣のように荒い息遣いをする翔優。 そこには、何もない。 「いくら体を求めても、翔優が満たされることはないと思うんだ。僕には誰かを特別に愛する機能がない。僕にこだわらず、他を見なよ。君にとって運命の人がいるかもよ。」 僕は浴衣を着直した。 翔優は何も言わなかった。

ともだちにシェアしよう!