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第5話 謁見 ①

 馬車が帝都に着くとすぐに宮殿へと行き、そのまま謁見の間へと通された。  静かに跪き頭を低くし待っていると、突然、バタンッと大きな音と共に扉が開く。その瞬間、その場の空気にピリっと緊張が走った。  これから僕は殺されるんだ…。  伯爵から聞かされた時から、ずっと覚悟はできていた。でもいざその時になると、全身の震えが止まらない。  カツカツと大理石の床を大股で歩く音が近づいてきて、僕の側で足音は止まる。  誰かがしゃがむ気配がすると、急に顎をくいっとひきあげられベールを捲られた。  この方がアレキサンドロス様……。  恐怖で震えながら見上げると、恐ろしいはずなのに艶めく黒髪の隙間から覗くルビーのように紅い瞳に、見惚れてしまいそうになる。 「ダインズ家の娘じゃないな。お前、誰だ?」 「……」  冷たい声で質問される。  すぐに答えないといけないが声が出ない。 「誰だと聞いている」 「……」 「話せないのか?」  問いかけられた口調がキツくなり、急いで僕は首を横に振った。  何か…何か言わないと……。  震える手で胸を押さえ、呼吸を整える。 「お、お初にお目にかかります。ユベール…、ユベール・ダインズと申します…」  名前を言うと、アレキサンドロス様の眉がピクリとした。  何かまずいことをいったのか……?  アレキサンドロス様に顎を掴まれながら見つめていると、紅い瞳に見下ろされ震え上がる。 「ユベールだと?」  アレキサンドロス様が眉間に皺を寄せられた。 「本当にユベールと言う名なのだな」 「は、はい」  どうしても名前を聞き返されるのか分からない。でも僕がそう答えると、アレキサンドロス様は何か考えられている表情となった。 「で、ユベール。ダインズ家に未婚の()はいないと聞くが」  僕が男だと気づかれた!?  初めて会った人の中で男だと気づいた人は、今まで1人もいなかった。背中に冷たい汗が流れる。 「ダインズ家は何か企んでいると思っていたから、娘を人質に監視しようと思っていたのに、こんな形ではむかってくるとは……」  僕を見る瞳の奥には怒りが見える。 「で、本当の名前はなんと言う」 「え…?」 「何度も言わせるな、お前の本当の名前はなんと言うんだ」 「…あの…その…」  恐怖のあまり声が詰まる。するとカチャカチャと金属が擦れる音がし、目の前に鋭く光る剣が現れた。  !!殺される!!  目をぎゅっと閉じると、

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