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第18話 園庭で ①

 殿下はいいと仰ったけれど、また同じ失敗をしないように、僕はあの日以来、窓に近ずいていない。  そしてあの日以来、僕の部屋に毎日届けられていた青い花は、届けられなくなった。その代わり、園庭のいろんな花が届くようになる。  園庭を見なくても、部屋の中でいろいろな花が見られるのは嬉しい。でも、あの青い花が恋しい。僕が一番心寂しい時に、いつもそばにいてくれた、あの青い花。僕を見守ってくれているようだった。  部屋にとじこもり、部屋にあった本は全て読み尽くした。本から様々な知識は得られたけれど、もう本当にすることがなくなってしまった。でもそんなことは誰にも言えない。  自然とベッドのヘリにただ座り、家族のこと、孤児院のことを思い出す日々がつづいた。 「ユベール様、お茶はいかがですか?クッキーもありますよ」  毎日、クロエはお茶と菓子を持ってきてくれ、僕の話し相手をしてくれる。 「ありがとう」  微笑み、ティーセットが準備されたテーブルに向かう。クッキーを一口食べたけれど、味がしなくて 二口目を食べる前に、皿に戻した。お茶を飲んだが、また味がしなくてティーカップをソーサーの上に戻す。 「お口に合いませんでしたか?」  クロエは冷めたお茶を入れ直してくれる。 「そんなことはないよ。とても美味しい」  もう一口食べた。味はしなかったけれど、せっかくクロエが僕のことを心配して用意してくれたもの。残すのはわけには、いかない。  口の中でもそもそするクッキーを、お茶で流し込んだ。 「ユベール様、もう園庭は見られないのですか?」  まだクッキーは残っていたが、クロエが下げながら訊いた。 「うん。もう同じ間違いはできないからね」  誰の手も煩わせないようにしないといけない。 「僕はここにいるだけで、誰のなんの役にもたっていない」  そういうと、 「そんなこと思わないでください」  クロエが僕の手を取る。 「私は優しくて、一緒にいてくださるだけで癒してくださるユベール様が大好きです」 「僕もクロエが大好きだよ」  この後宮で心を許せるのは、クロエだけ。 「ユベール様は殿下のことは、お好きですか?」 「え?」 「私は殿下はユベール様のことが、大好きだと思います」 「殿下が?僕のことを?そんなのありえないよ」 「どうして、そう思われるのですか?」  どこからかクロエは、部屋に飾る新しい花束を持ってきた。

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