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第26話 決意 ⑧
「僕にはちょっと早いかも…」
そう言ったものの、僕はもう18歳。
成人し、そういう本を読んだり、話をしたりするに早い年じゃないのはわかっている。
でもお城で暮らしていた時、読んでいたといえば冒険者のお話だったり、孤児院で読んでいたのは神様のお話だったり、昔からある名著。
色々は本が置いてあっても、官能小説は流石に置いていなかった。
「早いなんてことはありませんよ」
「でも僕には、その…刺激が強くて…」
そう言いながら、男性と女性が絡み合う所が目に焼き付き顔がますます赤くする。
「何を仰ってるのですか。官能小説と言いましても、二人の恋を邪魔するものとの愛の戦いや、愛するが故の葛藤。締め付けられるような心情に二人が結ばれた時の幸福感…。そういう恋愛の素晴らしさがこの中に詰まっているのです」
「そう…なの?」
「そうですとも!究極のロマンです。きっとユベール様はこの本のヒロインのように、殿下からの究極の愛に包まれるんでしょうね」
クロエはうっとりと何か想像しているように、宙を見る。
「そんなこと……ありえるのかな……」
今の殿下との関係だと、そんなことありえない。
だって僕は殿下のかりそめの側室。
決して殿下から愛されての事じゃない。
「それに近い将来、殿下とユベール様が床を共にされる初夜のとき、何もご存じないのはユベール様自身が不安になられるかも知れません」
殿下と床を共にする!?
初夜にすることって、床をを共にすることだったんだ!
宮廷に来て初めての夜。
殿下はお忙しく来られなかったけど、もし来られていたら、そこで僕と殿下は……。
みんな知っていて、僕だけ知らなかったことや、床を共にするときのことを想像してしまうと、全身の血液が沸騰してしまいそうになる。
知らないことをする。
この挿絵の人たちみたいなことをする。
そういうことは、どうしてもいけないことのような気がしてしまう。
「知識はあって困ることはありませんよ」
それなのにクロエの前で『読まない』という選択肢はなさそうだ。
「どうしても読まないとダメ?」
本を強く勧めてくるクロエにいうと、
「ダメです」
「読みたくなければ、読まなくてもいいですよ」
クロエとヒューゴ様からまったく正反対の答えが返ってくる。
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