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第38話 お茶会 ②
「殿下からの伝言をお伝えにまいりました」
「殿下から?」
「もしユベール様がよろしければ殿下は昼食後、ユベール様とお茶をしたいそうです」
「殿下とお茶!?」
したいと思っていたので、こんなに早く殿下とお茶ができるなんて思ってもみなかった。
「いかがなさいましょう?」
「それはもちろん、殿下とのお茶会がしたいです!」
前のめりに返事をしてしまい、ヒューゴ様にクスリと笑われる。
「わかりました。そうお伝えいたします」
ヒューゴ様は美しく頭をさげてから、また殿下の元に帰って行った。
「ね、ね、ね!殿下はユベール様のことが大好きなんですよ」
殿下の僕への気持ちが『好き』から『大好き』に変わってる。
「そんなの殿下から聞いてないから、わからないよ」
「決まってますって!大好きじゃない人をお茶に誘う人なんて、聞いたことがありません」
クロエはまるで自分のことのように興奮しすぎたのか、目をキラキラさせながら鼻息をふんふんさせている。
「クロエは可愛いね」
ポロリと本音が出てしまうと、さっきまで興奮気味だったクロエだっのに、
「あ、ありがとう……ございます……」
顔を真っ赤にさせながら、ごにょごにょ言った。
ヒューゴ様から殿下の伝言を聞いてからが、大忙し。
特別おいしい茶葉を用意して、僕おすすめのお茶菓子を準備する。
銀食器にティーセット。
ガゼボ内に葉っぱ一枚落ちていないぐらい、綺麗に掃除をする。
僕は殿下にもらった服に着替える。
ずっとクロエとバタバタしている。
でもこんな楽しいバタバタは久しぶりだった。
ちょうど準備が整った頃。
殿下がガゼボにやってきた。
僕の姿を見た殿下は、目を見開き動かなくなる。
やっぱりこんな素敵な服、僕には似合ってなかったのかな……。
恥ずかしくて下を向いてしまっていると、ヒューゴ様が僕に近づいてきて、
「とてもお綺麗ですよ」
僕の手の甲に口付けをしようと、手を握り顔を近づける。
すると何か力強いものに、引き寄せられた。
見上げると、
「殿下」
殿下がヒューゴ様を睨みつけている。
「いくらヒューゴでも許さんぞ」
「ユベール様があまりにもお綺麗だったのでつい……。殿下もそうお思いになりませんか?」
殿下はどう思っているんだろう……。
ちらりと殿下を見上げると、視線と視線がぶつかった。
「……」
でも殿下は無言のまま。
やっぱり殿下は何も思われていない。
殿下とのお茶会が楽しみすぎてはしゃいでしまった自分が、恥ずかしい。
殿下とぶつかった視線を逸らした。
すると
「殿下。先ほどの話をお忘れになったのですか?」
ヒューゴ様が殿下に言う。
「忘れてはいないが……はずかしい……」
殿下も視線をずらしたけれど、頬は真っ赤だ。
「恥ずかしくなんてありません。はい、言ってください」
ヒューゴ様は殿下から、何かいわせたいみたい。
なんだろう?
殿下から外した視線を元に戻すように見上げる。
そうすると殿下は目が泳ぎながらも僕の方を見た。
「き……綺麗だと……思う……」
「!」
き、綺麗だなんて……!
予想外のことを言われ、バフっと音が出てしまったかと思うぐらい、顔が真っ赤なるのがわかった。
「よく似合ってる」
あの殿下に褒められた。
嬉しすぎて殿下をじっと見つめていると、殿下に顎を掴まれ、ぐいっと上げられた。
殿下は僕に覆い被さるように顔を近づけてきて、もう少しで唇と唇がふれあいそうになったとき、
「殿下それはやりすぎです」
僕と殿下の間にヒューゴ様が、割って入ってくる。
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