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第37話 お茶会 ①

 殿下は恥ずかしがり屋なのか、本当に忙しいのか、あれから特にな変わりなく、殿下との接点が少ないまま時間が過ぎていった。  変わったことといえば……。  クロエが園庭のガゼボの中にセッティングされた机の上に昼食を並べる。  実はクロエは武道もでき、少々の相手なら勝てるそう。  だかはクロエと一緒であれば、自由に部屋の外に出られることになった。  そこでクロエが「気分転換感に」と、ガゼボで昼食を取ることを勧めてくれた。  ガゼボでの食事は、とても気分転換になる。  公務で忙しくしている殿下も「ガゼボ(ここ)で食事をすればいいのに」いうと、 「でしたら殿下のお仕事の目処がつきましたら、一度お茶にお誘いになられるのはいかかがですか?きっと殿下もお喜びになると思いますよ」  と言われた。 「そうなのかな……?」  殿下は僕と一緒よりヒューゴ様と一緒の方が、ためになる話がたくさんできそうな気もする。 「はい!だって殿下はユベール様のことが好きですもの」  好きって……。  僕はまだ殿下のことを知らなさすぎて、殿下も僕のことを知らなさすぎる。  以前よりは近づいた気はするけれど、殿下が僕を好きだなんて、わからない。 「そんなのわからないよ」  無意識のうちに僕はそう呟いていた。 「もちろんです。殿下がユベール様を見つめられるときの表情。愛おしさがダダ漏れです。あんなに優しいお顔をされた殿下を見たのは、ナーシャ様とご一緒だった時ぐらいです」 「ナーシャ様?」 「殿下が12歳の時にお亡くなりになった、お母上様です」 「殿下もお母上様を亡くされていたんだね…」  殿下は僕と同じでお母様をな 亡くされていたとなんで知らなかった。  母様がいなくて悲しくて、心にポッカリと穴が空いた気持ち。僕には痛いほどわかる。 「ナーシャ様がいらっしゃった頃の殿下は、それはそれはお優しく、慈愛に満ちていらっしゃったのに…」  クロエがそこまで言った時、 「おしゃべりがすぎるぞ」  ガゼボにヒューゴ様がお一人でやって来た。 「申し訳ありません…」  クロエが頭を下げる。 「ユベール様、話の腰を折ってしまい申し訳ございませんでした。ただ、ナーシャ様のお話は、デリケートな話になりますので、もしお聞きになりたいのであれば、殿下から直接お聞きになるのが一番だと思いまして…」  確かにそうだ。  殿下幼い頃にお母様を亡くされていとのこと。  心の傷は消えない。  なのに自分の知らないところで大好きなお母様の話されているのは、嫌だと思う。 「そうですね。殿下が僕に話してもいいと思われるまで、待ちます」 「ユベール様は、今も昔も本当に思慮深くていらっしゃる」 「え…?」  ヒューゴ様の言葉が引っかかる。 「ヒューゴ様は『今も昔も』とおっしゃられていましたが、それはどういう意味なんでしょうか…?」  そう訊くとヒューゴ様は眉をピクリとし、視線を下に向けたが、すぐにいつものような笑顔にもどる。

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