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第51話 可愛い人 ①
「ん……」
ベッドの中で目覚めると、太陽の光が部屋を明るく照らしていた。
時計を見ると、もう昼前。
もうこんな時間!!
こんな時間まで寝ていたなんて!
急いで体を起こそうとしたが体に力が入らず、起き上がれない。
しかも蕾から媚肉に違和感があつまって、気だるい感じもする。
いったい僕は……。
ぼーっとして働かない頭で昨日何があったか思い出していくうちに、みるみる顔が真っ赤になっていく。
自分の体を見てみると、裸のままで気を失ってしまっていたはずが今は体は綺麗にされ、アレク様からプレゼントされたパジャマまで着ている。
「ユベール、起きたか」
「アレク様!」
部屋の窓側に豪華な一人がけの椅子にアレク様が腰をかけ、書類に目を通しす姿が目に飛び込む。
「こんな時間まで眠ってしまい、申し訳ございません」
ベッドから立ちあがろうとすると、
「無理をするな」
アレク様が僕のそばまでやってきて止める。
「体調はどうだ?」
「まだアレク様と繋がったままの感じはしますが、他はいつも通りです」
正直にが答えるとアレク様は目を丸くして、パチパチと二回大きく瞬きをした。
「ユベール、煽るな」
アレク様は僕を抱きしめ、首元に口付けの印をつけると体を離した。
「あまり可愛いことを言うと、押さえが効かなくなる」
僕の長い髪を指に絡ませて、口付けをする。
「本当は一緒にいたいが、ヒューゴが許してくれそうもなくてな。だから今日もクロエと一緒に好きなことをして過ごせばいい」
僕が好きなところはアレク様の傍だけど、次に好きな場所は……。
「ではガゼボに行ってきます」
「ガゼボに? ユベールもあそこが好きなのか?」
「はい。子ども達と一緒にいると優しい気持ちになれます」
「ユベールの心が休まるところが、俺が好きな場所と同じで嬉しい」
アレク様が微笑み、なんだか胸がきゅっとなった。
身支度を済ませるとクロエと一緒に、お茶と子ども達に配ってあげられるようなクッキーと子ども向けの本を持って、ガゼボに向かった。
「ユベール様~」
ガゼボに着く前に子ども達はすで集まっていて、僕を見つけると周りに駆けてきた。
どうやらクロエが子ども達に僕が|ガゼボ《ここ》に来ると事前に伝えておいたようだ。
僕達はお茶とお菓子を楽しんだ後、本を読んだり、字の勉強をしたり、アレク様が新しく用意してくれた草花の本で園庭の花の名前を調べたり……。
子ども達は色々な表情を見せてくれ、僕は時間を忘れて楽しい時を過ごした。
夕食はアレク様と一緒に食べ、そのまま僕たちは、僕の部屋で過ごした。
「楽しい時間が過ごせたんだな」
僕がアレク刺しを膝枕をすると、アレク様は僕の長い髪を指にからませながら、今日の話を聞いてくださる。
「草花の本を気に入ってくれているなら、今度は昆虫の本を用意しよう。園庭で昆虫探しも楽しいだろう」
アレク様は子ども達が喜びそうなことを、次々に考えてくださる。
アレク様のことを知れば知るほど、よく気がついて、相手のことを考え、笑顔になることをいつも考えてくれる。
聡明で頼り甲斐があるのに、こうして甘えてもくれる。
本当に素敵で可愛い方。
そしてとても愛おしい方。
「アレク様は、本当に可愛らしい方ですね」
アレク様の黒髪に指を通す。
「それはほめられているのか?」
アレク様が僕の手を取る。
「ええ、もちろんです」
「ならよかった。ユベールだけには嫌われたくない。ずっとそばにいてほしい」
僕の手の甲にアレク様は口付けをする。
そんなアレク様の姿が愛おしすぎて、胸が高鳴る。
「ずっとおそばにおいてください」
僕はアレク様の額に口付けをした。
この日から毎日夕食後はアレク様を膝枕をしながら、日中の話をするのが日課となっていた。
ある時、僕が昆虫探しに夢中になっているカイトくんの話をしていると、アレク様が「他の男の話ばかりするな」と拗ねた時は、お腹を抱えて笑ってしまった。
子ども達と触れ合う中、他の使用人達とも話す機会が増え、日を重ねるごとにアレク様や子ども達、後宮内との人たちとの距離が近くなり始めていた。
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