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第7話-1 安住side

 次期プロジェクトは将来的に持続可能な目標がもてるものだと長期にわたり取り組まれるものだと評判が高かった。しかしその分、重圧もかかってくるだろう。だがそれでも可能性にかけてみたかった。 「え?本当ですか?僕の案が通ったんですか?」 「おめでとう。ついては急でわるいんだが次の週末に君の案をまとめたものの研修をしてもらいたいんだが」 「わかりました。任せてください」  緊張気味でいたが参加者メンバーのリストを見て胸が躍った。 「倉沢がいる。何か月ぶりだろうっ!」  でもあいつも忙しいだろうからすぐに帰ってしまうかも。ならば、留まりたくなるようにすればいいだけだ。 「あいつ地酒が好きだったから。店のリサーチしておこう」  倉沢は僕と同期だ。見た目はクールで理知的だが、打ち解けてみると案外話せるやつだった。冷たく感じたのも実は人見知りなのだと後で知った。ああいうのをツンデレって言うんだろうな。 「僕には心を砕いてくれるけどそうでない人との温度差があるんだな」  でもそこがまた自分だけ特別視をしてくれてるようで嬉しい。  最初は仕事熱心なクールな同期くらいな感情しかなかった。ただ、横顔が綺麗だなとは思っていた。  だが、徐々にその内面の誠実さや優しさ。たまに見せる笑顔に惹かれた。そうなのだ。倉沢は気心を知れた相手にだけ見せる笑顔があるのだ。それは営業的な笑顔ではなく素の倉沢の笑顔だった。そこに自分は惚れてしまったのだと思う。  しかし相手はどう考えてもノンケだ。一度は思いを断ち切ろうと女性と付き合ってみた。しかし結局長続きはしなかった。まさかと思い男性を相手にしてみてやっと自分の性癖に気づいたのだ。いつもワンナイトの相手だが、選ぶのは黒髪で横顔の綺麗な男性ばかり。 「倉沢の面影を探してるのか……」  自覚はしたがそれだけだ。どうすることもできない。友人で居るだけで満足だ。そんな気持ちを抱えたまま今に至る状態だ。  早めに研修所についてしまった。倉沢はもう着いただろうか?キョロキョロと辺りを見回すと寒そうに歩いている姿が目に入る。 「おーい。倉沢、久しぶり」  僕が声をかけると笑顔で答えてくれた。ああ良い笑顔だ。好きだなあ。研修後飲みに行こうと誘うとやはり帰るつもりだったらしい。ここぞとばかりにダメもとで泊まれよと提案してみる。 「いいのか? じゃあ泊まらせてもらおうかな?」  嬉しそうな返事が返ってきた。昨日のうちに部屋中大掃除をしておいたことは内緒だ。

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