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第4話-3
「なんでもいい。和食が食いたい」
互いに無言のまま帰宅すると唐突に倉沢が言い出した。
「わかった。すぐ作るよ!」
「ああ」
良かった。このまま口もきいてくれないんじゃないかと泣きそうだった。なるべく手早く待たせないようにと豚汁を作る。夜中に重いものは胃に悪いので軽い夜食程度にしておこう。
倉沢は僕が料理をしてる間もずっと無言で見つめてくる。視線が痛い。圧が凄い。何かしゃべらないとと思う程言葉が出なくなる。でも、倉沢の口にするものだ。手を抜くわけにはいかない。ちゃんと出汁をとり、アクをとり具材が柔らくなったら味噌をとき入れ、仕上げににショウガの千切りを加えた。
「良い匂いだな」
倉沢の表情が少し緩む。よし、つけあわせは常備菜のきんぴらと卵焼きにしよう。
「あっ。しまった。ご飯がないっ」
倉沢の視線が気になって炊くのを忘れていた。
「かまわないさ。これで充分だ」
「悪い」
「良いから食べようぜ」
テーブルにつくと倉沢は黙々と食べ始めた。
「うん……旨い」
その言葉にほっとする。僕も同じように豚汁を口にするが緊張して味が分からない。いつも通りに出来てるのか? 大丈夫なのか? ああ、胃が痛くなってきた……。
倉沢は完食するとひとつ息を吐いてまた僕をみつめた。
「さて、そろそろ話してもらおうか?」
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