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番外編その1-3
二人からひとりひとりに手渡されたのは薔薇のモチーフの小箱。なんと中には小さなマカロンが二つ入っております。さすがです。
「ピンクのがラズベリー。ブルーのがブルーベリーだそうだ。食べた後は小物入れになるので事務用品とか入れて使えるよ」
「ありがとうございます!」
甘酸っぱい味のマカロンは今日の二人のようでした。
「うっわぁ。メルヘンチックっすね」
早瀬くんが覗き込んできます。
「ケーキ屋の主人に女性社員が喜ぶモノを聞いたら食べた後も使えるのはどうかって薦めてくれたんだ」
「ぷぷ。倉沢さん、それって市場リサーチじゃないっすか。仕事熱心っすね。俺のはないんすか?」
「ばあか。今日は女子社員への慰労って言っただろ」
「え~。マカロン美味そうじゃないっすかぁ」
「ビールでも飲んでろ。胡瓜のお代わり作ってやるからさ」
「ほんとっすか!やったああ」
「……僕も手伝うよ」
推し二人がそろって台所に立つと私たちもそっと音を立てずに動きます。だってお二人の共同作業が見られるんですもの。当り前です。
倉沢さんの前に手際よくボールや調味料を並べる安住さん。黙って調理をする倉沢さんは真剣そのもの。初々しいですわ。
「こんなものかな?」
「健吾。味見させて。あ~ん」
倉沢さんが言われるままに安住さんのお口に胡瓜を放り込みます。すると美味しいよといいながら、安住さんがちゅっと倉沢さんの頬に接吻をされました。
「「「~~~っ!!」」」
慌てて口をふさぐ私たち。甘~いっ。離れた場所にいるCとDが互いにバンバン叩きあっております。わかるよ。私もじたばたしたいっ。
「なっ……。皆がいるのに」
「ごめん。急にキスしたくなったんだ」
「し、しょうがないな」
耳まで真っ赤になる倉沢さん。見てるこっちまで胸がキュウんとなります。それを見つめる安住さんの蕩けるような表情に皆釘付けに。
「そこで何イチャついてるんっすか?」
早瀬くんの声に一斉に我に返る私たち。
「え?皆ここにいたの?え?……」
倉沢さんが私たちを見つけ挙動不審になられました。
「いえ。今来たところです!何も見ておりません!」
「そうです。ささ。食べましょう!」
「はい。早瀬さんもビールのお代わりはいかがです?」
急にテキパキと動く私たちに安住さんが口元だけで笑われます。さすがは王子。すべてお分かりだったのですね。おそらくワザと見せつけてくれたのでしょう。でもその嫉妬心は私たちの萌えネタでございます。ウフフ。これでご飯三倍は食べれそう。
帰り際に倉沢さんに呼び止められました。
「佐々木さん、|あ《・》|の《・》|時《・》はありがとう。時間稼ぎをしてくれて助かったよ」
「とんでもありません。何があっても私たちはお二人の味方です」
倉沢さんは私の言葉に瞠目されたがすぐに綻ぶような笑顔を見せてくださいました。それは見事な大輪の花のようでございました。この時から私の推しはお二人になりました。私この会社に転職して本当に幸せでございます。
本日の萌語りはここまででございます。ご拝聴いただきありがとうございました。
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