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第3話
その日の仕事を終えて帰る頃には雷雨は過ぎ去り、土砂降りの後の雨上がりの空気だけを名残惜しく残す湿気の強い夜だった。
「……帰ります」
「お疲れさん、明日は頼むよ逸見くん」
朝、つまらない記事の追跡が要因で、結局その日グダグダに成ったが、上司は”良くある事”って言葉で片付けたし、事務的に周囲で仕事は淡々と片付いて明日は実際に取材と言う段取りで終わる。結構感情移入何て出来ないモノ。そう、実はそんな暇何て無いのだ。
社屋から地下鉄の駅には本当に歩いて直ぐ。
実際は直結している様な状態だし、自分と行きかう人間も大半は夜勤対応の社員や派遣社員ばかり。
”自分がそうだと認めるには抵抗あるけどね……”
”それに今は特定のが無いからなぁ”
上司の言葉が脳裏を離れない自分がいる。
え?
そんなあなた様にも
昔は有ったんだ?
って呆気に取られたのを覚えました。
正直、そう正直な感想。
当然、偶々そんな相手がいる訳でも無いし、寧ろ普通って意味で追いかければ女性への関心の方が行くのが筋だとも思う。拘っている訳でも何でも無いけど、自分に合う合わないってだけで、本当にその辺は自分のその時だからと、我ながら受け入れて暮らしているつもり。
予想外だったのは、案外あの上司はこの問題の奥に、自分自身も多少は関与した感情や経緯の何かが有ったと言う事実だけ。
意外だった。
鉄仮面も一応人間だったのね~♬
でも、何故か嬉しく感じている自分がいたり、胸中何故か複雑な自分が一喜一憂に踊る愚かさを感じて凹む。
好き、嫌いだけで世の中幸せか不幸か選べるならどれだけ幸せなのだろ?
地下鉄車両に乗り込めば、微かに雨の後も蒸した名残の空気を感じる。
ひんやり冷たい冷房の風は、湿気まみれた自分を冷たく包む。
嗚呼、晩飯どーすっかな……
いつもの思考に辿り着く。
大学を卒業して、新聞社に勤務して以来、仕事が終われば帰宅はいつもこの思考。
別に誰かと一緒に何て考えることも無い。
実家に居たころは歳離れた小さな弟がいるから帰宅途中に美味しい駅地下のお菓子やら何やらで最寄りの駅に寄り道なんてのはあったけど。
一人暮らしを会社から近い場所で開始してからというものの何とも直近直行の冴えない2年目。
つくづく、暗い20代後半に入ったばかりの自分。
彼女でもとか職場の仲間に言われても、そんな気にも成れず。
たまに職場の同期と飲んでも、別に美味く感じない酒と食事なら、お独り様の場所でも行こうかとグルメ情報をスマホに入れてフラフラもしたけど、どうもつまらない。
自炊も出来るが面倒。
最後は食べずに寝る。
そのオチを他人は、ふて寝と言う。
一人で寝る暮らしが凄く開放感極まり無い事を知ったのはこの独身生活からだ。学生時代は寮だったし、大学時代は実家だった。いつも賑やか?喧しい?の環境だった。以来、この環境に誰かを迎え入れる気分は先ず無い。
……然し、今日は無性に腹が減る
自宅の最寄り駅まで僅か10分の路線も何故か長く感じる空腹。
何食べよう?
あんまり店無いんだよな
冷蔵庫に何か有ったかなぁ?
こんな思考を遮る様に列車は駅に到着。結局の処、改札出て自宅の方へ向かう通り沿いの妥当なファミレスで終わる。
「ミラノ風ドリア半熟タマゴ乗せ、肉サラダ、セロリ、ドリンクバー……」
本当に調子が狂う一日だった。
窓に視線をずらしてみたら、高校生位かな、サッカーボール転がしながら数人で凄く愉しそうに交差点でお喋るしてる姿。
部活の後の帰りの駄弁りがマジ永遠に続けば( ・∀・)イイ!!って感じたよな♬
凄く懐かしくて、凄く好きだった時期。
人それを青春と言うのだけど……。高校サッカーの名門で凄く華々しく感じた高校生の頃。そのころ芽生えたのは今では苦いショッパイ恋の思い出。
大人に成るって何だろうね……。
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