4 / 69

プロローグ:調教準備~異種挿入~

 不安と恐怖に怯え、ガタガタと震える真治を全く無視して、ザラキアはいそいそと立ち上がって部屋の隅から一本の黒革のベルトを取ってくる。それを真治の首に巻き付け、金具を留めた上から、何やら呪文を唱えて指先で印を描いているようだった。  「──よし、首輪は嵌めた。これでシンジは俺の所有物、ペットで、奴隷だ。他の誰にも手出しできねぇ。ここのルールを知らないお前に教えてやるが、今から俺のことは『ご主人様(マスター)』と呼べ。もし言うことを聞かなかったら、とびっきり辛い目に遭わせてやるからな。」  「あ──、ぁ、…い、痛いのは──嫌…、です…!」  命令口調で言い放つザラキアの片手には、短い乗馬鞭のようなものが握られていた。それで空をヒュッと斬り、バチィン!と床を叩いて見せる。その音だけで、ビクリと竦み、恐怖のあまり縮み上がった真治の目からは、また涙がほろりと零れた。  「よぅし、従順なのはいいことだ。…さて、と。この処女穴を壊さないように、少しずつ慣らす…。こいつぁ、調教師として腕が鳴るな。」  臆病な真治の無抵抗は、ザラキアの気を良くしたらしい。彼は、打ち鳴らした鞭を立て掛け、傍らの台の上からジュースの缶ほどの大きさの蓋付きの容器を取り出した。蓋を外すと、中から、何かがざわざわと這い出して来る。その異形のおぞましさに、真治はぎょっと目を見開いた。  「なッ──?」  「ああ、掃除蟲(スカベンジャー)を見たこともないのか。コイツが、今からお前の穴の中に入って、食べカスを綺麗に掃除してくれる。──ま、どこにでもいる、人間と共存するありふれた軟体生物さ。これから毎日、お前の中にこれが入るんだ。」  「ひ…、やだ、気持ち悪い──っ…。」  筒の中から這い出してきたのは、生肉のような赤黒い色をした、スライム状の軟体生物だった。粘液を纏ってぬるぬると光る姿は、巨大なナメクジやナマコのようでいて、それよりもずっと柔軟性が高い。おまけに、その全身には、まるでカタツムリの目のような先の丸い柔らかな突起物が無数に、毛のように生えて(うごめ)いているのだ。  ザラキアの掌に懐くように絡み付く気色の悪い生き物を捕まえると、ザラキアは、その頭と思しき部分を、剥き出しにされた真治の両脚の間の穴の縁へとぴたりと宛がう。冷たさと気色の悪さに、背筋にぞわりと寒気が走り、全身にゾクゾクと鳥肌が立った。  「そら、行け。人間の老廃物がなければ飢える生き物だからな、これは。丁度腹を空かせているところだろ、奥の奥まで舐め尽くしてくれるさ。」  「っや、嫌ああぁ──っ…!」  見る者に生理的な嫌悪感を抱かせる外見をした生き物を身体に押し付けられているというだけで気持ちが悪いのに、こともあろうに、その軟体生物は、今まで自分自身でさえ触ったことのないきゅっと窄まった穴の(ふち)をぞろぞろと這い回り、中に入り込もうとしている。くすぐったさと冷たさと、何とも言えない不安感に押し潰されそうになりながらガチャガチャと拘束を鳴らして足掻く真治。しかし、柔らかな身体を持つ蟲は、すぐにツプンと穴の中に滑り込み、肉壁を撫で回しながらゆっくりと奥に潜り込んでいった。  経験したことのない、延々と続く挿入感。痛くはない、しかし奇妙な感覚に身震いし、蟲を押し出そうと下腹で(りき)んでも、結局は逆効果で、かえってぬめぬめとした軟体がずるん!と奥まで入り込んでくることになる。  「…嫌、いやだ、そんなとこ──っ…っぁ、は、入ったらダメぇ──っ…!」  「そうか、正真正銘の処女なら、蟲を入れるのも初めてか。こいつは面白い…。蟲が、こんなに細くならなければ中に入れないとはなぁ…。ま、これから、お前の肉穴には蟲以外のモノもズブズブ入るんだから、これくらい慣れて貰わなきゃあ困る。」  「そんなぁ──っ!…っぁ、イヤ、何か──、…変──ッ!」  あられもない恰好で開脚台に縛り付けられ、狭く窄まった尻の穴には、赤黒くねばついた生き物が頭を食い込ませ、深々と腹の内側に入り込もうとしている。  蟲の全身に生えた柔毛のような突起がざわざわと肉壁を撫でて押し上げる度に、真治の全身にはぶるりと震えが走り抜けた。異物感と背中合わせの、むず痒く、くすぐったいような感触の正体が解らず、浮かせた腰をゆらりと振ってしまう。ざわり、ざわり、と少しずつ這い上がる軟体は、無数の突起で腸壁を隈なく押し上げながら、信じられない程に深いところまで入り込んできていた。  つと、ザラキアが目を細めて笑う。  「んん?何だ、シンジ。お前、洗浄だけでおっ勃ててるじゃねえか。奴隷の素質があるのか?」  「う、嘘──ッ…!」  乗馬鞭の先でツンツンと突っつかれた、自分の右手以外に誰も知らない白く小ぶりな牡の部分が、ふるりと頭を震わせながら半ば勃起し掛けているのだ。それに気づいた瞬間、真治はくらりと目眩(めまい)を覚えた。  男と男が性行為をする時、この穴を使うことがあるというのは知識だけで知ってはいる。しかし、自分自身が捕まって、無理矢理こんな目に遭わされるとは思ってもいなかった。  ざわり、と軟体が奥に入り込む度に感じていたのは、全く未知の性的な快感であったのだ。ザラキアによってそれをはっきりと見せ付けられてしまえば、後はもう嫌でもその感覚を意識するしかなくなる。肉襞の裏まで余さず舐めるように這い回る軟体生物の動きに合わせ、目の前がぼうっとなるような心地がした。  こんな気色の悪い生き物に汚らしいところを(いじ)くられて、感じてはいけない筈なのに、これは気持ちがいいことなのだ、と気付かされてしまえば全く歯止めは効かなかった。  身体が芯から熱くなっていくのを感じながら、細長く変形して肉洞を掻き回す生物の動きに合わせて悩ましげにゆさゆさと腰を揺さぶる。

ともだちにシェアしよう!