1 / 200

第1話 傑と礼於

 「バー高任」 傑の店を、この頃礼於が手伝っている。礼於は六本木一のホストクラブ「ディアボラ」のナンバーワンを張っていた美青年だ。以前から恋焦がれていた傑と結ばれて、ホストを辞め、バーを手伝っている。  傑は身長188cmの素晴らしい美丈夫だ。長い髪を一つに結んでサムライのようだ。そっくりなハジメという同い年の従兄弟がいる。36才。礼於は二十歳になったばかりだから16才の年の差だ。  日々の暮らしの中で二人共、毎日が新たな発見だった。 「ボクね、あまり苦労しないでホストになったでしょ。お客さんも変な人はいなかったから、そんなに大変な思いは、した事は無かった。」 「それは礼於の性格が良いんだな。」  傑の膝に抱きとられて甘えながら話をするのが日課のようになっている。  礼於には傑との暮らしが夢のようだ。ずっと好きだった。  傑を初めて見かけた時からもう他の事は考えられなくなった。首に抱きついてその顔を触る。 「礼於はいつも私の顔で遊ぶなぁ。」 「うん、こんなに独り占めしていいのかな? みんな触りたいんだよ、きっと。」 「私はそんなにモテた事はないぞ。」 「みんな、遠くから憧れて見てたんだよ。 畏れ多くて触れないから、きっと陰ながら拝んでたかも知れない。」 「おいおい、仏様のようだな。」 「そうだね。神様よりは仏様の顔だ。」 (どんな顔だよ。見た事ないだろ、仏の顔?)  可愛い事を言う礼於を抱きしめて、口づける。 礼於のキスが傑を狂わせる。 「礼於の顔を眺めていたい人はたくさんいるだろう。礼於は本当に綺麗だ。 私の方こそ独り占めして申し訳ないよ。」 「ボクたちって能天気だね。 知らない人が見たらバカップルだね。」 「いいんだ。私だけのものだよ。」 どんなに強く抱きしめても足りない。

ともだちにシェアしよう!