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第176話 ミトと礼於

 ミトが振り返って家の中を見た。 テラスが広くパーゴラが屋根の代わりだ。リビングに続く。開け放たれた広いリビングにいるロジが友也の赤ちゃんを抱かせて貰っている。 傑と交代で怖々と抱っこしている。  ミトは礼於の手を握った。 「礼於は平気?」 礼於は不思議そうにミトの言葉を聞いた。 「僕はどんなにロジを愛しても、 赤ちゃん産めないんだ。」 礼於は驚いた。 「ボク、そんな事、考えなかった。そうだね。 傑は子供欲しいのかな? 子供が欲しいからって、 ボクと別れて女の人と結婚するのかな?  そんな話、した事ないよ。」 礼於は、傑が女の人を妻と呼び、赤ちゃんを抱いて幸せそうにしている姿が目に浮かんでしまった。優しいパパ、は傑にとても良く似合う。 「ミト、ボク初めて考えた。 ボクたちみたいな関係はいつか、終わりが来るんだね。傑はきっと普通の家族を持つんだ。」 礼於の綺麗な瞳から涙がポロポロ溢れて止まらない。ミトは言い過ぎた、と焦って礼於の手を握る。 「こめんね。いつもそんな事ばかり妄想してしまうんだ。」    元気をなくした礼於を気遣って傑は帰る事にした。 「撮影はまた今度。礼於が具合が悪そうなので、帰ります。」  傑は礼於を抱えるようにして、買ったばかりの車に乗せた。  ハジメに勧められてレンジローバーイヴォークの最新モデルを買わされてしまった。  プラグインハイブリッドだがバッテリー容量は少ない。発進時や加速時のアシストはいい。 「ちょっとデカいな。重い車だ、2トン以上ある。でもしっとりとした乗り心地で、ハジメの初代イヴォークのがさつさはないよ。」 そういうとハジメは悔しがる。 「すごい、イヴォークの最新モデルですね。」 車好きなアキラと夕子さんが見送ってくれた。 「礼於、大丈夫か?何かあったのか?」

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