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第177話 傑と礼於
二人のマンションに帰って来た。
「どうしたんだ。」
頬にすごく泣いた痕があった。
「ミトは意地悪な事、言わないだろう。
いじめっ子に泣かされる年でもないよな。」
礼於は傑に抱きついて離れない。
「傑もいつかは結婚して子供を持つんだよね。
ボクはそれまでの繋ぎ、なんだ。
ミトはロジャー先生が
赤ちゃん大好きなのがツラいって。」
「なんて事だ。それでロジャー先生はなんと答えたんだろう?」
「うん、絶対そんな事はないって。
一生ミトだけを愛するって約束したんだって。」
「礼於、私も同じだよ。わかってると思ってた。
なんでそんな事を考えたの?」
礼於は傑が嬉しそうに赤ちゃんを抱っこしていた事を訴えた。
礼於はなんて可愛いんだ。そんな事を思ったのか。
「礼於、礼於が欲しくなった。
でも、無理はしないよ。可愛いな。」
傑のゴツゴツした指が礼於の頬を優しく撫でる。
「涙の痕がある。宝石のようだ。」
その頬を唇で触れる。大切そうに唇が頬をたどって口づけをする。
「あ、ああ、好き。好き。傑。」
「なんで泣く。」
礼於は、大好きな傑の手が、誰か他の人を愛する事があるのか、と思っただけで涙が溢れる。
傑が涙の一つ一つを口づけで拭う。
「私の宝物だ、涙だって全部。」
キスの合間に愛の言葉をくれる傑。また、キス。
抱いてベッドに行く。二人だけの船。恋の海へ出ていく。
(ああ、私はいつも恋をしている。
礼於に出会ってから、ずっと。
この恋は上書きされて、いつも新しい愛しさに
溺れそうだ)
抱きしめて身体中全部、貪り尽くしたい。
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