18 / 18

最終話 シモンとアマギ

――あれから1年後―― 「……アマギ、また新人から告白されたんだって?」 シモンが不機嫌そうに言った。 「ええ。これで8人目です。」 「まあ、今更お前がモテることを心配はしないけど、寄宿舎の風紀は乱すなよ。」 「風紀を乱してるのは、シモンさんの喘ぎ声ですけど。」 シモンはアマギの髪をくしゃくしゃにした。 「ちょっと!せっかく整えたのに!」 「兵士に色気はいらない!」 インキュバスになったアマギは、インキュバスとして生きることにした。 色気がコントロールできるようになり、不用意に誘惑することはない。 シモンとアマギは部隊に復帰した。 あの事件にまつわることは、ザニス大神官の上級悪魔の悪魔祓いへの協力だったということで、これまでの不都合なことは不問にされ、アマギがインキュバスであることは隠された。 カペラは、フェリスの復讐を諦め、改めて悪魔祓いを受けた。 何度目かの儀式でカペラは人間に戻り、今は僧侶として修行を積んでいる。 カペラが人間に戻ると、ザニスは大神官を辞し、後進育成に専念することになった。 トマスは、各地のライライチョウを調べ、ライライチョウの扱いに関する法案を作るよう王国に要請した。 それを後押しするように、リンデルが品種改良したライライチョウを育てている村と、人身売買の闇組織を暴いて摘発した。 ユンは結婚した。 「ユン、これ、結婚祝い。俺と、アマギから。男二人の感性で選んだから、センスは期待するなよ。」 「ありがとう。シモンだけで選んだならそうかもしれないけど、アマギが選んでくれてるならきっと大丈夫だね。」 「アマギのこと、買い被りすぎだよ。意外とアイツ、私服とかダサいからね。」 ユンは笑った。 ―――――――――――― 「シモンさん、最近年のせいか、性欲が無くなってきてますよね。」 「あのね、毎日求められて、毎日応えられるわけないでしょ。」 「じゃあ、俺、少し、浮気して来た方がいいですか?」 シモンは、アマギが様々なエロい姿で他の人とヤっているのを思い浮かべた。 「いや、ダメに決まってんでしょ。一回でもアマギを知ったら、一回では済まないから……。」 「んじゃ、がんばってください。」 アマギはシモンの唇にキスをした。  「だから、俺はそういうプレッシャーに弱いんだからさ、あんまり強調しないでよ!」 アマギは楽しそうに笑った。 「そうだ!カペラから、ハガキが来てたよ。」 カペラは風景画を描き、ハガキにして時々アマギとシモン宛に送ってきた。 メッセージは書いてない。 「アマギ……今は、カペラをどう思ってるの?」 カペラは、今は改心しているとはいえ、アマギを淫魔にした罪は重い。 「あの時、フェリスの姿になって、カペラの心を救うことができて…この力を別の使い方にしたら、もっと誰かを助けられるかもしれないって思ったんです。それ、やってみたいなと思って。」 「すごい決断だよな。」 「それは……シモンさんが、ずっとそばにいてくれるって言ったから……。」 アマギの切なそうな顔を見て、シモンはドキッとした。 「……そっか……。」 「誘惑は、シモンさんにだけ使えばいいですからね。」 「わざわざ使う必要は無いと思うんだけどね。」 「時々、シモンさん手を抜くから。」 「いや、毎回全力はちょっと……。」 アマギはシモンの胸元に擦り寄った。 シモンもアマギを抱きしめた。 互いに優しいキスをして、微笑み合った。

ともだちにシェアしよう!