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最終話 シモンとアマギ
――あれから1年後――
「……アマギ、また新人から告白されたんだって?」
シモンが不機嫌そうに言った。
「ええ。これで8人目です。」
「まあ、今更お前がモテることを心配はしないけど、寄宿舎の風紀は乱すなよ。」
「風紀を乱してるのは、シモンさんの喘ぎ声ですけど。」
シモンはアマギの髪をくしゃくしゃにした。
「ちょっと!せっかく整えたのに!」
「兵士に色気はいらない!」
インキュバスになったアマギは、インキュバスとして生きることにした。
色気がコントロールできるようになり、不用意に誘惑することはない。
シモンとアマギは部隊に復帰した。
あの事件にまつわることは、ザニス大神官の上級悪魔の悪魔祓いへの協力だったということで、これまでの不都合なことは不問にされ、アマギがインキュバスであることは隠された。
カペラは、フェリスの復讐を諦め、改めて悪魔祓いを受けた。
何度目かの儀式でカペラは人間に戻り、今は僧侶として修行を積んでいる。
カペラが人間に戻ると、ザニスは大神官を辞し、後進育成に専念することになった。
トマスは、各地のライライチョウを調べ、ライライチョウの扱いに関する法案を作るよう王国に要請した。
それを後押しするように、リンデルが品種改良したライライチョウを育てている村と、人身売買の闇組織を暴いて摘発した。
ユンは結婚した。
「ユン、これ、結婚祝い。俺と、アマギから。男二人の感性で選んだから、センスは期待するなよ。」
「ありがとう。シモンだけで選んだならそうかもしれないけど、アマギが選んでくれてるならきっと大丈夫だね。」
「アマギのこと、買い被りすぎだよ。意外とアイツ、私服とかダサいからね。」
ユンは笑った。
――――――――――――
「シモンさん、最近年のせいか、性欲が無くなってきてますよね。」
「あのね、毎日求められて、毎日応えられるわけないでしょ。」
「じゃあ、俺、少し、浮気して来た方がいいですか?」
シモンは、アマギが様々なエロい姿で他の人とヤっているのを思い浮かべた。
「いや、ダメに決まってんでしょ。一回でもアマギを知ったら、一回では済まないから……。」
「んじゃ、がんばってください。」
アマギはシモンの唇にキスをした。
「だから、俺はそういうプレッシャーに弱いんだからさ、あんまり強調しないでよ!」
アマギは楽しそうに笑った。
「そうだ!カペラから、ハガキが来てたよ。」
カペラは風景画を描き、ハガキにして時々アマギとシモン宛に送ってきた。
メッセージは書いてない。
「アマギ……今は、カペラをどう思ってるの?」
カペラは、今は改心しているとはいえ、アマギを淫魔にした罪は重い。
「あの時、フェリスの姿になって、カペラの心を救うことができて…この力を別の使い方にしたら、もっと誰かを助けられるかもしれないって思ったんです。それ、やってみたいなと思って。」
「すごい決断だよな。」
「それは……シモンさんが、ずっとそばにいてくれるって言ったから……。」
アマギの切なそうな顔を見て、シモンはドキッとした。
「……そっか……。」
「誘惑は、シモンさんにだけ使えばいいですからね。」
「わざわざ使う必要は無いと思うんだけどね。」
「時々、シモンさん手を抜くから。」
「いや、毎回全力はちょっと……。」
アマギはシモンの胸元に擦り寄った。
シモンもアマギを抱きしめた。
互いに優しいキスをして、微笑み合った。
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