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第1話(初めまして〜からの?)

「雪、大丈夫か?」 「うん、緊張するけど、挨拶は大事だよね! 怖い先生じゃないといいけど…」 「相変わらずマイナス思考だな、雪は」 ある動物病院の前で繰り広げられる会話。 そこには、一瞬女の子かと見間違えるほどの可愛い男の子と、その子より少し背の高い男の子がいた。 この2人は動物病院の前にオープンしたドッグサロンの子達だ。オープンの挨拶に来たらしい。 「診察落ち着いたかな?」 可愛らしい顔の村田雪が、不安そうに病院の中を覗きながら言った。 「今は患者さん居なくなったから、少し位なら迷惑じゃないんじゃん?いくか? 」 こちらも顔面偏差値高めの、今家律が言う。 「うん、行こう! 」 雪は、自分を奮い立たせ動物病院の扉を開ける。 扉を開けると少し消毒液の匂いがした。 清潔感ある雰囲気で白い壁にダークブラウンの長椅子が置いてある。 「こんにちは、お忙しい所すいません。私達、来月頭に道路挟んだ向かいにオープンするドッグサロンの者です。ご挨拶に伺わせて頂きました! 院長先生はお手隙ですか?」 雪はバーッとまくし立てるように話した。 受付には、雪達と同じ位の若い看護師さんがいる。 彼女はニッコリ微笑んで、 「こんにちは、わざわざご挨拶ありがとうございます。私、看護師の斉川と申します。今院長に確認してきますね、少々お待ち下さい」 そう言って裏に行った看護師さんを見て、 「優しそうな人でよかったね」 雪が小さい声で言った。 「うん、それにめちゃくちゃ可愛い~」 「こら、律! 近場でナンパはするなよ」 「しない、しない! いくら俺でも、わきまえてるよ!」 律が心外だな~と不貞腐れてると、奥から2人の男性が出てきた。 2人とも背が高く長身のイケメンだ。 1人はニコニコしてるが、もう1人は機嫌が悪いのか若干しかめっ面をしている。 (なんか忙しい時だったのかな~…) 雪は少し心配そうに 「お忙しい所すいません。僕達、今度道路挟んだ向かいにオープンするドッグサロンの村田と今家です。本日はご挨拶にお伺いしました」 と挨拶のお菓子を差し出した。 「わざわざ挨拶に来てくれたんだね、ありがとうー。俺はここの副院長の倉木、よろしくね」 とフランクな話し方でニコニコしてる男性が言った。 雪はもう1人の男性も何か話すのかと顔を見たがそんな気配は無さそうだ。 (やっぱり迷惑だったのかな?) 少しシュンとしたのが顔に出たのか、副院長の倉木が 「おい、お前も挨拶しろ!」 と、不機嫌そうな先生の肩を小突いた。 「院長の斉川です」 面倒くさそうに挨拶した斉川に、倉木が呆れた顔をした。 「ごめんね、君達こいつ人嫌いで動物しか興味がないから、許してやって」 と、フォローになってないフォローをしている。 「いえいえ、忙しい時に来た僕らが悪いので、お気になさらず! では、失礼します」 雪と律がペコッと頭を下げて病院を出ようとすると、倉木が 「何かあったらいつでも協力するから言ってね!」 と優しく言ってくれた。 「ありがとうございます」 再度頭を下げて出ようとすると、 ガシッ!! (えっ?! ) 雪は自分の腕を、不機嫌そうな斉川が掴んでるのを見て心底ビックリした。 (えっ?! えっ?! 僕、なんか悪い事したかな?挨拶の仕方?) 雪が戸惑ってると、斉川はじっと雪の顔を見てきた。 (何? 何? 顔になんかついてる? めちゃくちゃ顔近い! そしてすげーイケメン!) 周りもポカンと見てると、急に斉川が雪の髪を撫でだした。 (えーっ!! ちょっと待って待って! 無表情で撫でてるこの先生!怖い怖い! 髪に何かついてるのかな?) 雪がパニックになりながら色々考えを巡らせてると、倉木が呆れたようように、 「おい、和希!トリマー君がビビってるだろ!やめてやれ。全くお前は気に入った犬がいるとすぐ触るからな」 と言って、斉川に声をかける。 倉木の言ってる事にも理解が出来ない雪は?マークの顔で倉木を見た。 「ごめんね、え~っと村田君だっけ? こいつ動物の中でも犬が好きで、気に入った犬がいるとすぐ触り出すんだよね。きっと君の髪がふわふわしてるから触りたくなったと見たな。特に君は顔が可愛くて犬っぽい」 クスクス笑いながら倉木が説明してくれた。 雪はビックリしたのと恥ずかしかったのとで、とっさに、 「僕は犬じゃありません!」 と言って、斉川の手を払い除け、走って病院から飛び出した。 「ちょっ、雪待ってくれ!」 慌てて、律も後を追って病院を出た。 ハァハァとお店に戻ってきた雪に、律が息を切らしながら声をかけた。 「お前逃げるの早すぎ、大丈夫か?」 「だってだって、急にあんな事されたらパニックだよ!」 雪がプンプン怒って話す。 「まあ、確かにビックリしたけど、いやらしい感じじゃなかったぞ? 本当に犬みたいだと思ったんだな」 笑いながら言う律に、 「もう、いつも助けてくれるのに!」 と理不尽に怒る雪。 「イヤー俺もビックリしたけど、悪気無さそうだったからな~」 (そりゃ他の人みたいに下心も無さそうだったし、無性に犬に触りたい気持ちも分かるけど~了解もなく触られたらビックリするだろ!) なかなかショックが消えない雪に、 「さっ!来月から忙しくなるし、病院に行く事もあまり無いから会うこともないよ」 と気楽に律は言った。 「うん、そうだね。行く事があるのはケガさせたりだから、お世話にならない方が僕達には良いよね」 ウンウンと頷きながら無理やりさっきの事を忘れようとしている雪だった。

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