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第1話
「九重悠太 の超常現象日記……あっ違った。なんで自分の名前間違えてんだよアホか俺」
ぼーっとしていたせいか、人生で最も多く書く己の名前すら間違える特大のドジをやらかして、黒の油性マジックで訂正をする。
ホラー作品好きの両親の元で育ったこともちょっぴりは関係しているのか、俺は幼い頃からオカルトが好きな根暗な男子であることは自認している。
ただそれだけなら良いが、それは精神性の高い神話から、超自然・心霊現象、国内各地や各国の因習や宗教。神と悪魔信仰。
果ては罰当たりだが、実際にいわく付きの廃墟探索や黒魔術、召喚の儀式を試してみたこともあるほど、生粋のマニアだ。
儀式と言っても、そんな大それたものではない。
定番のコックリさん、地面に木の枝で魔法陣を書いたり、特定の単語を書いて紙を燃やすようなおまじない程度。
家の窓に張り付いていたヤモリを捕まえた時はさすがに両親もドン引きしていたが。
単なる拗らせ厨二病であり、いい歳になったらガチ黒歴史に変貌するかもしれない。
故にか、学校ではいつも気持ちがられていた。
外見を気にせず、ボサボサの黒髪に、前髪も顔半分を隠すくらい長い。
さすがに視界が見えないほど邪魔になってきたら、美容院なんて洒落たところへ行く勇気はなく、ようやく自分で切る程度。
制服も窮屈なのが嫌でいつも乱しては生活指導の前でだけ正す、くらいだし、スニーカーも上履きも最後にいつ洗ったのか思い出せない。
満面の笑みを見せているはずが、下手なのか化け物を見るかのような目を向けられたこともある。
と言っても、例え難癖を付けてくるものが居たとして、完全無視か架空の宗教の話をすると、たいていは勝手に引いて関わらないようにしてくれる。
そりゃあ、ヤンキーにすら「神を信じますか?」なんて言った日には、本気でイカれた奴だと思われて終わりだ。
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