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第7話 帰宅
パフェを食べた後、カラオケに誘われたが断った。
リカちゃんが何というわけでなく、浮かれていた俺自身が恥ずかしいのだ。
俺が断ると、ハルマも帰ると言った。
二人と別れて、家に向かって歩き出す。
ハルマが、俺から借りていた参考書を返したいと言ったので、部屋に上がった。
「これ、ありがと。後で俺も買うよ。」
「ああ。」
なんとなくボーッとしながら返事をした。
「そんなにリカちゃんのこと、好きだったの?」
「うん…なんていうか、好きになりかけてた……って感じかな……。ああいう子と一緒にいれたら楽しそうじゃん。」
「胸はあんまり無さそうだったよ。」
「だから、それはオプションなの!」
「いつも送ってくる画像はみんな大きいじゃん。」
「好きな人のおっぱいは、大きくても小さくてもいいの!ってゆーか、なんであの場であんなこと言うの?ドン引きされてたよ!」
「大事なことなのに、言わないから。」
「言ったってしょうがないじゃん!胸は急に大きくならないよ!なんで俺がリカちゃんが気になるって知ってて、そんな話するんだよ!」
と、自分で言ってハッとした。
今まで、ハルマが俺の好きな人をとると思っていたが、俺の株を下げることも作戦のひとつなんじゃなかろうか。
「……怒ってる?」
ハルマがちょっとビックリしたような顔で聞いてきた。
「……怒ってるよ……。」
本当は怒ってない。
胸の話なんて、もう高校生だし、大したことじゃない。
あの後、二人はカラオケにも誘ってくれたし、本当にキモがられたわけじゃないだろう。
元から彼氏がいたんだから、ハルマは何も悪くない。
でも、なんとなくハルマをちょっとだけ困らせたかった。
まあ、俺が怒ったくらいでハルマが何を困るんだ、ってかんじだけど。
「……ごめん。そんなにちゃんと考えてるって思ってなくて。とりあえず、彼女がほしいのかなって思ってた……。」
ハルマは急にシュンとなった。
たしかに、最初は不純な動機だし、今ももう彼氏がいるならいいや、ってくらいどうでもよくなってる。
ここで、気にしてないっても言えるけど……。
今までモテるのが当たり前で、マウントしてきていた(と、俺が勝手に思っている)ハルマが、しおらしくしている姿になんかムズムズしてきた。
「ハルマは振る側だからわかんないんだろうけど、振られる方はやっぱり辛いんだよ。これ以上仲良くできないんだな、とか、俺にダメなとこがあるんだな、とか、落ち込むよ。」
ちょっと大げさに言った。
「そんなの、俺にだって経験あるよ!」
急にハルマが大声を出して、ビックリした。
「え?そうなの?俺、知らないんだけど。」
なんでも話せる仲だと思っていたから、ちょっとショックを受けた。
「……好きな人に振り向いてもらえなくて、好きじゃない人にいくら好かれても、意味ないよ……。」
ハルマはうつむいた。
こんな暗いトーンのハルマを初めて見た。
「……結構……ガチなんだね?今の話?昔の話?」
「今も……だよ。」
「それこそ、告らないの?」
「どうせ無理だから……。」
ハルマで無理ってなんだろう。
彼氏持ち?先生?
先生はエロいな。
まさか人妻……。
人妻とハルマは……微妙に似合う。
何を考えてるんだ俺は。
友人の悩みで妄想してる場合じゃない。
「でも、かなわないのにずっと同じ人ばかり追ってても、辛くない?新しい人が合うかもしれないし……。」
「……すぐ諦められるのって、本当に好きなの?」
ハルマがこちらを睨むように見た。
なんか、ギクッとした。
言われてみれば、自分は顔がかわいいとか、せいぜい話しやすいくらいでその子のことが好きになってしまう。
だから結ばれなくても、ショックは受けても傷つきはしない。
でも、ハルマは違うらしい。
そんなにハルマを夢中にさせるなんて、どんな人なんだろう。
「俺、今までハルマとはなんでも話せたから、てっきり好きな人はいないと思ってたんだ…。俺には言いたくないんだよね。別に、興味本位で聞きたいわけじゃないんだ!なんか、今まで知らずに色々言ってごめん……。」
ハルマがそんなに思い詰めていたとは知らなかった。
本当は相手が誰だか知りたい。
でも、こんなに一緒にいて、気づきもせず、教えてももらえないなら聞くべきじゃないんだろう。
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