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第9話 理系クラス

ハルマは理系で、俺は文系だからクラスは分かれている。 きっとハルマは理系クラスの誰かが好きなんじゃないだろうか。 一緒に帰るために、理系クラスに行く。 ハルマはタツオミと話をしていた。 タツオミはどの教科も成績がいい秀才だ。 でも、数学だけならハルマが上だった。 ハルマがタツオミに数学を教えている。 タツオミに数学を教えられるのはハルマだけ、とも言える。 にわかにタツオミが怪しい。 見た目も爽やかでカッコいい。 小柄で線が細いハルマと、男らしい身体つきで精悍な顔つきのタツオミ。 タツオミがキスをして、ハルマがうっとりする絵面を思い浮かべる。 イケる! 全然似合う! とりあえず、タツオミの周辺を探り、男でもいけそうならそれをハルマに伝えよう。 そしたらハルマも告白しやすいだろう。 ―――――――――――― 二人が話しているところに入った。 タツオミが俺に気づいて言った。 「あ、ごめんね。長引いて。」 「いいよ、待ってるから。」 俺はそう言って、近くの空いてる席に座った。 他のクラスメイトもほぼ教室を出ていた。 「もう終わったから、大丈夫。」 ハルマはそう言って、片付けを始めた。 「……なあ、良かったら、今日、タツオミも一緒に勉強しない?」 俺がそう言うと、二人は驚いたような顔をした。 「まあ……学年トップのタツオミに、数学の偏差値70のハルマに対して、俺が教えてあげられることは何もないんだけどさ……。」 思いつきで誘ったが、なんか恥ずかしくなった。 「でも、タツオミは予備校あるんじゃないの?」 ハルマが言う。 「いや、今日は無いから大丈夫。良かったら行こうかな。さっきハルマに物理教えたけど、ちょっと違うかもって思うところが出てきて……。そこもう一回いい?」 なんて誠実なタツオミなんだろう。 下半身次第の俺からは想像がつかない会話だ。 場違い過ぎる。 ハルマも、俺なんかじゃなく、こういう男と一緒にいた方がいいんじゃないだろうか。 そういう流れで、ファーストフード店に入った。 まずタツオミがハルマの物理の問題を解き直して、教えていた。 何を言ってるかはわからないが、タツオミの落ち着いた声や語りの柔らかさは心地良かった。 あんな声で口説かれたらひとたまりもない。 ハルマも、いつも一緒にいる時より真剣な顔だ。 うん、まあ、俺と一緒にいて、真剣さが必要な場面はないからね。 ハルマの方が終わり、俺に何か質問はないかと話を振られた。 「国語のプリントなんだけど、この問題のとこいいかな?」 タツオミが解説をしてくれる。 すごくわかりやすい。 先生を超えてるところがある。 できるやつは何でもできるんだな、と思った。 「リョウスケは、国語の単語帳は使ってる?」 「え、何それ。」 「抽象的な言葉や今話題の用語の解説参考書だよ。評論なら、あらかじめ内容の方向性がわかったら、解きやすいだろ?」 なるほど、真面目にその場で一から考えるのではなく、あらかじめ話題に触れておくんだな。 「これ、良かったらしばらく貸すよ。」 タツオミが国語の単語帳を貸してくれた。 パラパラとめくると、丁寧にラインが引いてあったり、書き込みがしてある。 これを持っただけで頭が良くなりそうだ。 「へえ!こんなのがあるんだ。ありがとう!やってみるよ。」 そこからは少しおしゃべりをして、帰宅した。 家に帰り、テキストを開く。 いつもなら、ハルマの家から帰って来たらすぐダラダラしていた。 でもそれじゃダメな気がした。 タツオミの雰囲気に、良い意味で火をつけられた。

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