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第10話 タツオミ
あれから、タツオミを含めて勉強する機会が増えた。
タツオミから、予備校で教えてもらったことを聞くととても勉強になって、自然とやる気も上がった。
「タツオミって、もう俺の先生みたいだよ。月謝払わなきゃ。」
俺は半ば本当にそう思ってた。
「じゃあ、今度ハンバーガー奢ってよ。もう、俺の好みはわかるでしょ?」
タツオミはどの食べ物も、いつも同じものしか食べない。
俺とタツオミは笑ったが、ハルマは元気がなかった。
「ハルマ……具合でも悪いの?」
ハルマの顔を覗き込む。
「あ、いや。大丈夫だよ。」
ハルマはハッとしたように言った。
「じゃあ、今日は予備校だから、俺は行くね。明日なら、空いてるから。」
と、タツオミは俺に向かって言った。
タツオミと別れて、ハルマの家に向かう。
「タツオミと勉強するようになって良かったよ。俺の周りはあんまああいう頭いい奴いないからさ。なんか、勉強するのが普通……って感じ、新鮮だった。」
「そうだね。タツオミは上の進学校にも行けたんだけど、家が近いからここにしたんだって。」
「じゃあ余裕あるよね。ハルマも、今となっては別の高校が良かった……なんて、思ってない?」
「俺は、今の生活気に入ってるよ。」
そう言う割に冷たい声だ。
「どうしたんだよ、さっきから。なんで怒ってるの?」
「怒ってないけど……。リョウスケって、タツオミを使うのうまいよね……。」
「使う?」
「タツオミとは入学から結構一緒にいるんだけど、あんなに色々教えてくれたことなかったんだ。リョウスケって、質問が上手いっていうか、甘えるのが上手いよね。タツオミが楽しそうに教えるの、初めて見た。」
「え、そうかな……。自分じゃわからないけど……。」
もしかして、俺が仲良くしすぎてヤキモチをやいているのか?!
しまった、当初の目的を忘れていた。
でも、前よりは三人で仲良くなってるから、これからだよ、これから。
ハルマは黙ったまま歩いている。
ハルマの家に着き、部屋に入る。
コートを脱いでハンガーにかけていると、ハルマが後ろから抱きついてきた。
「最近してなかったから……。」
ハルマもついに性欲に負ける日が来たか。
ちょっと感慨深い。
後ろを振り返り、ハルマを抱きしめる。
外が寒くて、鼻が冷えている。
冷たくなった頬をくっつけてからキスをした。
ハルマに押されて、背が壁に押し付けられる。
ハルマの舌も容赦なく入ってくる。
「んん……!ふ……っ!」
ハルマの勢いに、つい俺も声が出てしまった。
ちゅ、くちゅ、
という音が寒い部屋に響く。
今、ハルマは何を考えているのだろう。
誰でもいいから欲望のままにキスしてるのか、タツオミを妄想しているのか。
「……ねぇ……いつ、入れてみる?」
キスの合間に、急にハルマが生温かい吐息を耳に吹きかけながら言った。
「そ、そうだね……なんか、ローションとか、必要みたいじゃん?何がいいのかわかんなくて、色々見てたんだよね。ごめん、遅くなってて……。」
正直、タツオミとの毎日が楽しくて、ちょっと忘れていた。
「……それなら、俺が買ったから、大丈夫だよ……。」
「え、そうなんだ。」
「もう、指も入るから……あとは、リョウスケの予定が合えば……。」
マジか!
自習力がすごい。
「わ、わかった……。心の準備がまだ……。ハルマの、親がいない日が……いいよね。」
「じゃあ、金曜日……。父さんは出張だし、母さんは仕事の後、そのまま飲み会なんだ。」
なんて生々しい会話。
女の子から言われたら、もう眠れないくらい興奮するだろう。
だが、実際の俺は、ついに日にちが決まってしまったことに動揺していた。
性欲の弱いハルマの練習くらいに始まったはずが、ただハルマをエロい子にしてしまったような気がする。
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