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第11話 ハンバーガー

翌日、俺はタツオミとハンバーガーショップにいた。 タツオミはてりやきハンバーガーしか食べない。 サラダとお茶もつけてやる。 「ファーストフードだけど、ポテトやジュースじゃなくてサラダやお茶にする、という些細な抵抗をしてるんだ。」 若いのに、健康(?)に気をつけているらしい。 タツオミも部活に入っておらず、体力づくりに筋トレをしている。 触らせてもらうと、結構ガッチリしていた。 「集中して勉強するためにも、やっぱり体力は必要だから。」 そこまで考えてるなんて、なんかレベルが違う。 難関大学を狙っているタツオミだが、将来の希望は特にないらしい。 「そういう自分だから、大学に入って燃え尽きないように気をつけないと。」 と言って笑った。 すごく大人に見えた。 「リョウスケはさ、どこ狙ってるの?」 「大学は……国公立じゃないと、ってとこだけで、あとは何も決まってないんだ。今も学校についていくだけで必死だし、なんかタツオミやハルマみたいにしっかりしてないから、不安だよ。」 つい、弱気なことを言った。 不思議なことに、ハルマにも同じようなことは言ってしまうが、その時はちょっと茶化してしまう。 タツオミには、ちゃんと答えないと……という気持ちになる。 「そんなもんだよね。学校の課題やってれば、国公立は大丈夫だよ。ハルマとも、毎日勉強してるんでしょ?なかなか勉強時間って、とるのが大変だから、習慣があるのは強みだよ。」 最近は二日に一度はエロいことで終わってますけど……。 なんか、俺のせいでハルマを堕落させた気がする……。 「ハルマとはさ、本当に付き合ってるの?」 変なことを考えていたタイミングで聞かれて、ドキッとした。 「い、いや。なんか断り文句に利用されてるみたいでさ。嘘に決まってるじゃん!」 今まで、他の人にも何度も聞かれている。 そんなに付き合っているように見えるのだろうか。 「俺さ、自分の時間を取られるのが嫌で、今まで彼女いなくてさ。やっぱり、彼女いた方がいいかな?」 タツオミがそんなことを気にしてるとは意外だった。 「まあ……時間はとられるよね……。」 デートもしなきゃいけないし、連絡も取り合わなくてはいけない。 あんなことやこんなことをした後に、勉強はできない……。 「時々、男同士なら楽かなとも思うんだ。だから、リョウスケとハルマが付き合ってるなら、聞いてみたいと思って。」 「え……それって、タツオミは、男同士もなきにしもあらずってこと……?」 「いや、わからなすぎるから、聞いてみたいな、ってとこ。むしろ、リョウスケやハルマが付き合ってるなら、楽しそうで羨ましいなって思ってたんだ。本当に付き合ってないの?」 「……逆に聞くけどさ、俺たち、付き合ってるように見える?」 「少なくても、ハルマはリョウスケのことが好きなんじゃないかな、って思うよ。」 「え!そうなの?!」 あまりに意外な角度できて驚いた。 「なんか、俺が加わってから、ハルマから嫉妬されてる感じがするもん。」 「そう……なのかな……。いや、付き合ってないんだ、本当に。」 「あれ?じゃあ、余計なこと言ったかな。」 タツオミはバツが悪そうに笑った。 「う、ん。いや、うん。なんだろ。俺にはよくわからないよ……。」 体の関係がなければただビックリするだけだが、それが出来るということは……言われた通り、ハルマは俺が好きなんだろうか。 「リョウスケは……男はいいの?」 「……えっ……俺は……。」 男が全部対象というわけではない。 じゃあ、ハルマに対しては……。 「……もしさ、リョウスケが男もアリなら、俺はどう?」 リョウスケがまっすぐ目を見て言ってきた。 「……え、ええっ?俺と、タツオミ……が、付き合えるか、ってこと??」 驚いて、声が裏返った。 「端的に言えば。俺、リョウスケといると、なんかすごくリラックスするんだ。もっと二人で過ごしたいな……って思うんだ。」 タツオミはちょっと恥ずかしそうに言った。 「あ、うん。そ、そうなんだ……。」 過ごすだけなら友達で十分だ。 付き合うっことは……。 俺の脳内に俺とタツオミがキスしているシーンが思い浮かんだ。 ……無理かな……。 「俺は……男と付き合うことは……考えたことがないよ……。ハルマとも、本当に付き合ってないから……。」 「そっか。そうだよね。わかった。まあ、ハルマが近くにいる限り、俺がリョウスケとこれ以上仲良くすることはできないから……変な言い方だけど、安心して。」 「あ、ああ。友達としては、これからも仲良くしたいけど……。」 「そうだね。ごめん、困らせて。これからは友達としてまたよろしく。今日はごちそうさま。」 そう言って、タツオミは席を立った。 残された俺は呆然としていた。 ハルマが俺を好きかもしれない。 タツオミは俺のことを好きだった。 なんか、俺の人生の初モテ期は、希望とは違った形で花開いてしまった。

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