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第33話 ボランティア
週末、カシワギに紹介された移動図書館のボランティアに参加した。
この図書館は個人の方がやっていて、本自体には詳しくないらしい。
まずは、本の整理だ。
たくさんの寄付された本をめくり、挟んでるものや酷い書き込みがないかチェックする。
かなりの量で根気がいる。
さらに、今の流行りや名作を踏まえて入れ替えて行く。
本は重い。
出し入れや移動で、なかなかに体を使う。
お昼は、お弁当を出してくれた。
「いやー、若い人に手伝ってもらえるなんて、ホント助かったわぁ。」
明るいおばちゃんが移動図書館の館長だ。
亡くなった旦那さんの趣味を引き継いだらしい。
「せっかく定年退職して、これから自分の好きなことを……って張り切ってたのに、一年で逝っちゃってね。ホント、無理は禁物よ。長年の無理はたたるから。」
笑って言うが、60代で亡くなるなんて早すぎる。
きっと辛かっただろう。
「二人も、やりたいことは今すぐよ!」
年長者に言われると、勇気が出る。
午後はイベントに来た子たちに絵本を読み聞かせた。
俺はこういう表現は下手だ。
努力はするが、どうにもならない。
子どもたちに申し訳なかった。
かたやカシワギは上手かった。
カシワギは小学校の先生を目指している。
優しい声で子どもたちを楽しませている。
カシワギのおかげで、イベントは盛り上がった。
「すみません、俺、役に立たなくて……。」
「そんなことないよ。子どもたちは喜んでたよ。」
子どもたちの笑顔には癒された。
「お腹空かない?ごちそうするから、なんか食べに行こうよ。」
確かにお腹は空いていた。
カシワギおすすめのたこ焼き屋さんに行くことにした。
店内の飲食スペースで、カシワギはたこ焼きを頬張った。
「……あれ?食べないの?」
「俺、猫舌なんです。」
「へぇ!初めて猫舌の人に会った。本当に熱いのは、ダメなんだ。」
「そうなんです。辛いのは大丈夫なんですけど。」
「そうなんだ……。可愛いね。」
カシワギはどういうつもりで言ったかわからないが、一年前にキスしたことを思い出して、恥ずかしくなった。
たこ焼きを割って、中の熱さを逃す。
慎重に口に入れる。
やっぱり熱くてすぐ水を飲んだ。
カシワギからは大学受験のことを聞いた。
やはり三年からは学校の内容も難しくなる。
本当はもっと聞きたかったが、これ以上親しくなるのはばかられた。
帰り際、カシワギが言った。
「今日、ありがとうね。去年、僕が強引なことしたから……嫌だったよね。ホント、ごめん。卒業前に、謝る機会があって、良かった。」
カシワギがやっぱり悲しそうな表情で言った。
「いえ……俺も、突然逃げて、すみません。」
今なら、カシワギの気持ちがわかる。
もし、リョウスケに同じように拒絶されたら、傷つく。
「じゃあ、また。委員会で。僕でよければ、大学の話してもいいし。」
カシワギは微笑んで言った。
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