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第73話 酔っ払い
あんなの見た後に、エロい気持ちにならない人間なんて、いないでしょ。
俺は布団に入り、悶々としていた。
先輩のあのエロい姿を思い出す。
とろけた顔。
悶える体。
ヒビキさんとの謎の関係……。
大人っ!
なんかわかんないけど!
俺は…先輩のことが好きなの?
ヤリたいの?ヤラれたいの?
もう……
どっちでもいい……。
先輩と、ハルマのイメージが重なる。
やっぱり……おすすめのおもちゃ……買おうかな……。
密林通販サイトをそっと開いた。
――――――――――――
その日、俺はタツオミとファミレスにいた。
タツオミから相談があると言われたのだ。
絶対、勉強の話ではない。
「あのさ……どうしたら、彼女にもっと喜んでもらえるかな?」
「……彼女がいない、俺に聞く?」
改めて、俺の経験豊富さはベクトルが違うと感じさせられる。
「……なんか……こんな比較もおかしいんだけど、リョウスケとしたときは別に遠慮が必要なかったんだ。でも、彼女にそんな勢いで行ったら、引かれるんじゃないかって……。」
「俺も引いてたよ。」
心外だったので、強調する。
「……リョウスケだって、それなりに楽しんでたよ。」
「うん、そういうことにしといてあげる。結局、最低限友達としての信頼はあるしね。同性同士なら、体が同じだからわかる分、気を遣わなくていいかもしれないし。あと、感想とか、話やすい。」
「……コミュニケーションか……。」
「カッコよく言えば……。」
でも、付き合ってるからといって、そういうことが素直に話せるかというと怪しい。
「上手い人はさ、経験数が違うんだよきっと。でも普通はそうならないから、やっぱ、ちょっとずつ話すしかないんじゃないかな。」
「そうだよね。わかった。まともな意見、ありがとう。」
うん。
なんか小馬鹿にされた気もするけど。
勉強してからファミレスを出たので、遅い時間になってしまった。
飲み屋が多い通りで、酔っ払いが店の前でたむろしている様子がある。
「あれ?カシワギ先輩……。」
居酒屋の前に数人いて、その中に先輩の姿があった。
「ホントだ。見かけるの久しぶりかも。大学生、ってかんじ。なんでスーツなの?」
「塾講師やってるんだって。」
「……へぇ。よく知ってるね。」
マズイ、口を滑らせた。
「最近、たまたま出くわしたんだよっ。」
先輩はフラフラしていた。
飲み過ぎたんだろうか。
でも、先輩は未成年だ。
塾の集まりなら、そういうところ厳しそうなのに。
その集団は解散して、先輩は一人で歩き始めた。
表情がすぐれない。
具合が悪そうだ。
声をかけようとした時、さっきの仲間の一人が後ろから追いかけて来て、先輩に声をかけていた。
先輩の腰に手を回して、ニヤニヤしながら話しかけている。
なんか、嫌な感じだ。
「ごめん、俺、ちょっとカシワギ先輩に声かけてみる。」
「え?いや、でも……。」
タツオミの戸惑いの声を背に、先輩を追いかけた。
大きな通りの交差点を、先に行かれてしまった。
二人は、先輩の家でない方向の住宅街の方へ向かっていた。
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