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第9話 涼Side-3
博信が俺を助けに颯爽と現れた時は感動で涙が溢れた。神々しい騎士のようだったから。あとはひたすら自分の身体が気持ち悪かった。博信の綺麗な手が俺を触るとその手が汚れてしまう気がしてたまらなかった。
そんな俺を博信は少しづつ時間をかけて開いて行く。やっとひとつに繋がった時はこの上なく幸せだった。
その後、俺は兼ねてから学業と同時に行っていた副業を再開させた。
博信はただのプログラマーだと思っているが俺はハッカーだ。博信が大学をやめ、生活の為に始めた投資運用が上場になる情報を、企業のサイトに忍び込み流用したのは俺だ。資産運用のノウハウをそれとなく教えたのも俺だ。だが、博信は自分が稼いだ資金を全部俺名義にしてしまった。
本当になんて可愛らしいヤツなんだろう!
それからしばらくしてハッカーは休業し、今は企業の為にセキュリティ関連のプログラムを作成している。博信のために危ない橋は渡らない様にしようと決めた。
だが……俺は博信には伝えてないが疑っている事がひとつある。それは博信は本当に父さんの実の息子ではないのかという事だ。どういう経緯があったのかはしらないがふたりは惹かれあい博信が産まれたのではないだろうか。直接父さんに聞いたことはないがあの人ならやりかねない。それに俺の感情や考えまでもあの人にはバレてしまってる気がする。そうでないとこうも簡単に博信が俺を救出することが出来たのだろうか?と思ってしまう。本当は俺から博信へわざとSOSを出すつもりだったのだ。だがそれよりも早く博信は俺を見つけることが出来た。裏で父さんが手を回した気がして他ならない。
俺たちの血統はきっと呪われている。一人の人間を愛してしまったらその人をどうやってでも手に入れようとしてしまうんだ。きっと執拗に囲い込む様にして。
……まあそれも今となったらどうでもいいことだ。
そろそろ博信の帰宅時間だ。俺の事が心配なようでいつも時間通りに帰ってくる。
「ただいま~」
「おかえり」
当たり前のように抱きしめれば甘いキスが落ちてくる。傍に居るだけで満ち足りた幸せを感じる。
時間をかけて網を張った巣にやっとかかってくれた愛おしい博信。
もう二度と離さない。俺という毒に犯されろ。そうして身も心もふたりで溶け合うんだ。
END
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