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6.初めてのお泊り⑥
櫂は母親から溺愛されている。
しかしその愛情のかけ方は、息子というよりはペットに向けるものに近い。
彼女は息子をいつまでも幼児のように囲い、そして自分が思うがままに動くことを強要する。
それに息子が反抗すれば、手が付けられないほど激昂して支配するのだ。
長男の航は、外交的で気も強い。
きっと母親の思い通りにならなかったのだろう。
一方、弟の櫂は兄とは正反対で内向的且つ従順だった。
更にカイは生まれつきの遺伝子欠陥、アルビノという病を患っている。
そのため、外に出ることを厭う傾向が強い。
それが母親の庇護欲を助長し、また息子を囲うことを正当化させたのだろう。
とはいえ、流石の誉も先程のカイの言葉には驚いた。
母親の異常性は認識していたが、まさかここまでとは思っていなかった。
自分の詰めの甘さに腹が立つ。
カイの15歳という年齢と、趣味の読書量からして基本的な性知識があることを誉は想定していたのだが、どうやら大きく読み違えていたようだ。
よくよく考えると、彼は興味の有無で知識の落差が激しい。
年頃の男子だと言うのに、性に関することには全く関心がなかったということか。
また、カイはこれまで殆ど学校に通っていない。
当然友達は無く、ろくな性教育を受けることもなく育ってしまった彼は、母親の異常性には気付けない。
「ほまれ…?」
カイの声に、誉はハッとする。
見ると泣き出しそうなほど不安げな顔をしたカイがこちらを見上げていた。
「怒ってんの?」
カイは怒りに敏感だ。
そうやって母親からの支配を受け続けてきたからだ。
「あの、オレ、えと、ごめん…オレ、その」
「いや、謝らなくていいよ、カイは悪くないし」
「けど」
「怒ってないよ、大丈夫」
誉はすうと息を吸い、吐く。
そしていつもの優しい声で言うのだ。
「ちょっと驚いちゃっただけで」
「…?」
案の定、カイは不思議そうな顔をした。
誉の介入により、以前に比べて外に出られるようになったとはいえ、カイの世界はまだまだ母親の手の内に収められたままなのだと痛感する。
今のままでは駄目だ。
もっとこちら側に引きずり出さないと、カイは母親の呪縛から逃れられない。
それすなわち、カイは自分のものにならない。
次の手を思案しながら、誉は敢えて困惑したような表情を作り続けた。
「お母さんにしてもらうっていうのは、あまり聞かないから」
「そうなのか?」
「正直、かなり珍しいと思うよ。
それから、きっと君のお母さんは少し勘違いをしているみたいだね。
処理自体は別に医療行為じゃないし、自分で出来るし、するものなんだよ。
だってよく考えて、お兄さんもお母さんにしてもらっている?」
「……」
"待て待て、考え込むのか、そこで。
これは即答してくれ、頼むから"
どうやら母子揃ってどうも常識が通じないようだ。
誉は表情にこそ出さないが、内心ヒヤヒヤしてしまう。
「してもらってないと思う。
そもそも兄さんは、母さんと風呂に入らないし」
良かったと、色んなな意味で誉はほっとした。
万が一"兄さんにも母さんがしてるよ"なんて言われたら、明日から親友を見る目が変わってしまうところだった。
誉は畳み掛けるようにカイに尋ねる。
こういう時のカイには、考える時間を与えずに進めた方が上手くいく。
「そうだよね。
だとするとさ、やっぱり君だけお母さんにしてとらうのはおかしくない?」
「うん……おかしいかもしれない」
「ちなみに、自分でしたことは無いんだね?」
「やっ、それは、えーと」
「うん、無さそうだね」
「………う、無いよ」
露骨に俯いたカイは、背中を丸めた。
自分を抱く誉の腕をにぎにぎと弄りながら、羞恥心を紛らわせている。
更に項まで赤くなっていて、とても可愛らしい。
誉はカイに微笑みかけてその頭を撫でながら、
「じゃあ、俺がやり方を教えてあげるよ」
と、努めて明るく提案をしてみる。
「なっ、な、いいよ、なんか本とかで見るから」
恥ずかしがり屋なカイだ、この反応は勿論想定内だ。誉は続ける。
「カイは不登校だったから知らないと思うけど、普通みんな中学校で実習するんだよね」
「えっ、マジ?」
「うん、こんな風に先輩がついて教えてくれるよ」
「ほ、ほんとに?!」
「ホントに」
勿論嘘だが、世間知らずで素直なカイはあっさり信じてくれたようだ。
「ちゃんとやり方を覚えて、お母さんにはもうしてもらう必要ないって教えてあげようね。
カイがうまくできるようになったとわかれば、お母さんも安心して止めてくれると思うよ」
「……わかった……けど、やっぱり、その」
母親にしてもらうのは恥ずかしくないくせに、自分だと恥ずかしいのか。
モジモジしているカイに内心苛立ちはしたが、やはり表情だけは穏やかな笑顔を貼り付け、なだめるようにその背中を撫でながら続ける。
「大丈夫、男はみんなやってることなんだから、恥ずかしがること無いよ」
カイは不安げに眉を寄せ少し考えた後、意を決したようにコクリと頷いた。
「……わかった」
"よし、落ちた"
カイが思い通りに動いたことで、誉の心はその表情と同じ様にやっと穏やかになる。
「お利口だ。
大丈夫、ちゃんと気持ちいいやり方を教えてあげるからね」
「え、気持ちいいの…?」
「あれ?もしかしてお母さんにしてもらうのは気持ちよくなかった?」
「うーん……出す瞬間は、びくってなるけど、気持ちいいかって言うと…うん、違うと思う」
「……そうなんだ。」
と言うことは、カイに初めての快楽を教えるのは自分だ。
その事実が何よりも誉の心を満たしてくれる。
誉はともかく一つでも多くカイの"初めて"が欲しい。
体だけではなく、心まで真っ白なカイを自分の色に染めて、自分に依存させる。
それが彼の愛し方で、一番の悦びだった。
「それじゃあ、特別にとびきり気持ちよくなる方法を教えてあげる」
誉はご機嫌にそう言いカイに自身を握らせると、その上から自分の手を重ねた。
そして一緒にゆっくり擦るように促してやると、直ぐにカイの内ももがピクピクと反応する、感度は良好だ。
「カイはどこが好きかな、わかる?」
「すき、て、なに?わからな…」
「じゃぁ、探してあげる」
「っ!」
誉はカイのペニスの先っぽを人差し指で軽く押しながら、鬼頭の裏を親指でくるくると撫でる。
そういえば、カイは決して発育が良いとは言えないのに鬼頭がちゃんと顔を出している。
もしかして、これは母親の仕業か。
ちょっと面白くないな…。
俺が剥いてやりたかったのに。
そんなことを思いながら、鬼頭と竿の付け根をくっと押してみる。
「ひゃっ!」
予想通り、カイの腰が跳ねた。
「ここが気持ちいい?」
「は、は、やだ、ほま…」
「気持ちいいみたいだね。
大丈夫だから親指と人差指で輪を作って、そう」
「ん…」
「そうしたらね、ここを指の輪っかでこすりながら、余ってる手で根本の方を握るんだよ」
「え、わかんな…」
「だから、こう」
「アッ、ア、や…っ!」
モダモダしているカイに変わり、お手本に誉が擦ってやる。カイの下腹に力がこもった。
と同時に体をくの字に曲げ、今度は直ぐにピンと背中を伸ばす。そして居心地悪そうにまた尻を動かした。
「どうしたの?」
「や、だって、誉のがなんか凄く固く…」
「ああ、俺も男だからね。
こういうことをしたら固くなるよ」
「しかも、すっげー熱いんだけど」
「うん、そうだよ。
ドクドクしてるのわかる?ほら」
「ひ、やだ、変なとこに当たっ…」
「変なところって、ここ?」
「ん、やだ、そこ、やだ…」
誉がペニスをわざと尻の割れ目を這わせて、後孔に擦り付ける。
すると、カイは面白いくらいによく跳ねた。
「あ、あ…」
とうとうカイは腹に力を入れて刺激に耐えるようになる。
しかしそれでも尻の下で誉の固い根本がドクドクと脈打つ度、接触しているところがズクズクと疼くのは止まらない。
味わったことのない感覚だった。
これが誉の言う"気持ちいい"ということなのだろうか。
カイにはまだよくわからない。
「?、誉、胸、なんで、やだ」
「ここ弄るともっと気持ちいいよ」
「…あ、いたッ」
更に誉は、カイの勃ち上がった乳首をぎゅっと摘んだかと思うと、グリグリと押しつぶし、次に優しく撫でた。
交互に押し寄せる痛みと、甘い痺れと。
いずれにせよ初めての感覚に、カイの脳が混乱し始める。
しかし、誉が乳首に触れるのと、自身の感じるポイントを擦るタイミングが合うと、体の疼きがより強くなる。
「カウパーがたくさん出てる、気持ちいいんだね」
「ふぁ…?」
明らかにわかってなさそうな顔をするので、誉は指先でカイのペニスの先端を撫でる。
そして目前でその人差し指と中指を開いて見せた。
すると、明らかに湯とは異なる粘度の透明な水がとろりと滴り落ちた。
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